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科学で戦う異世界理系JKと、壊れかけの守護者 ~めんどり頼んだら水素爆発しました  作者: 武者小路団丸
第2章 絆

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25話 ポルックスと運命の三枚

 山道をくだると町の賑わいも出てきた。ポツポツと民家も見えて道も舗装され綺麗になってきた。ここまできたら気分的にもだいぶ楽になっていた。町の中心部の噴水でスライムに噛まれた首の部分を写す


「やっぱりちょっと目立つか?腫れも引いてないみたいだし。また、明里たちに心配かけるな」


少し噴水の縁に腰をかけハンカチに水をつけ噛まれたところに当ててみた。

冷たい水が火照った傷に心地いい。

その時、背後から妙に甘い、風のような声が聞こえた。


「おや、そこの坊や。その傷、随分とお熱だね」


ぼくは反射的に振り返った。


噴水の前に、色鮮やかな布を何枚も重ねた長いスカートを履いた女が立っていた。大きな金のフープピアスと、髪を飾る派手なスカーフ。切れ長の目と、獲物を見定めるような笑みは、まるで森の獣のようだ。


「……誰だ?」


「さあね。通りすがりの旅人だよ。それよりも、その傷だ。ただのスライムの噛み傷じゃないだろう? 貴方の血には、まだ雷と恐怖の匂いが混じっている」


女は近づいてくると、ぼくが止める間もなく、首の傷に冷たい指先を触れた。


「熱いね。君は命の淵を覗いたばかりだ。その瞳は、まだ絶望の色を覚えている」


ぼくは思わず飛び退いた。


「余計なお世話だ!」


女はくすりと笑い、腰に下げていた革袋から、古びたタロットカードを取り出した。


「余計なお世話? ふふ。なら、君の運命に、少しだけ触れさせてごらん」


彼女はカードを広げ、ぼくに言った。


「君の今の旅路を占ってあげるよ。一回銀貨一枚、それとも…秘密一つと交換かい?」


ぼくは警戒しつつも、彼女から目を離せなかった。


「秘密……?」


「そう、例えば、君の一番大切な人の名前とか。あるいは、君の力の限界についてとか」


ぼくは、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「……銀貨で頼む」 


女は構わず、カードをシャッフルした。

そして、無造作に三枚のカードを並べた。一枚目、二枚目と表になり、三枚目がめくられた瞬間、ぼくの心臓が大きく跳ねた。


示されたカード

並べられたカードは、以下の三枚だった。


過去:吊るされた男(逆位置)

現在:運命の輪(正位置)

未来:ソードの九(逆位置)


女はカードを指し示し、楽しそうに話し始めた。


「まず、『吊るされた男』の逆位置。これはね、君があの時、無駄な努力に固執し、視野が狭くなっていたことを示している。死ぬ寸前の状況で、君は何か間違ったものに執着していたようだよ」


ぼくの首筋に冷や汗が流れる。 


「っ……」


「だが、二枚目が面白いね。『運命の輪』の正位置だ。これはチャンス到来、状況の好転を示す。つまり、君は極限の状況で、自分では抗えない大きな流れに乗ったんだ。血が流れたことで、君の雷の新しい可能性が開かれた、というわけさ」


彼女は最後に、『ソードの九』の逆位置を指した。


「そして未来だ。本来このカードは精神的な苦痛や後悔を示すが、逆さまに出た。これは、君の苦痛が終わることを意味する。君を縛り付けていた恐怖が解消され、新たな希望が見つかるだろう」


彼女はカードを全て集め、再びぼくをじっと見つめた。


「ただし、運命は一つだけ君に警告を与えているよ」 


「警告?」


女は目を細め、静かに言った。 


「君の運命の好転は、誰かの犠牲の上に成り立っている。運命の輪は常に回っている。君が上にいるということは、誰かが下に落ちているということ。君の大切な誰かが、今、君と同じか、それ以上の試練に晒されているかもしれないね」


ぼくは少し気味が悪くなって2、3歩進んで彼女を見ずにこの場から立ち去った。走り去る姿を、女は満足そうに見送った。


「ふふ。さて、次はにどんなカードが巡ってくるかな?」



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