表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
科学で戦う異世界理系JKと、壊れかけの守護者 ~めんどり頼んだら水素爆発しました  作者: 武者小路団丸
第2章 絆

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/75

24話 透明な死

首に絡みつくスライムを必死に引き剥がそうとした。

指先に伝わる、ぬるりとした感触。

力を込めるたび、首に自分の爪が食い込み、じわりと血が滲む。

痛い――でも、そんなことを気にしている暇はない。

今ここで外さなければ、息が――。


ぼくは、反射的にカミナリのちからを叩きつけた。

青白い閃光がスライムに走る――が、次の瞬間、バチリと音を立てて光が弾けた。

手に伝わる感触は変わらない。

むしろ、スライムはびくりともせず、首に巻きつく力をさらに強めてきた。鼓動の音が自分でも判るくらい激しく高鳴ってる。


その瞬間、明里との会話が脳裏に蘇った。


「いい? ポルックス。魔法で作った水は電気を通さないのよ。この世界ではね。例えば、この世界のスライムや、ゴムとか。電気を流そうとしても、全部弾いてしまうの。」


今更ながらこの言葉を思い出すことに後悔した。なんとかしなくては。爪を立てて引き剥がそうとするが剥がれそうには思えない。

 目の端でスライムを見てるが透明な身体に異質な色が滲んできた。(な、なんだ?これは・・・)

赤いなにかがスライムの透明な身体を染めていく。

 血?

・・・血だ。 スライム?違う、ぼく自身の血だ。

どんどん締め付ける。腕が、ちからなくダランとする。


冷や汗が出て来て、血が回らないのか顔がひんやり冷たい。

指先の感覚が遠のき、爪が食い込んでいるはずの痛みさえ感じなくなる。

視界がじわじわと狭まっていく。黒い斑点がちらつき、頭の奥で鐘が鳴るような音が響いた。






その瞬間、ぼくは森の中に響き渡るほどの笑い声を上げた。

「……あ、は……はははは……っ」

途切れ途切れの声が、喉の奥から勝手に漏れた。

それが笑いなのか、悲鳴なのか、自分でも分からなかった。


それは諦めの笑いか、それとも狂気か。

誰かが見ていたら、間違いなく恐怖しただろう。

自分でも、何を笑っているのか分からなかった。

ただ、何かが壊れたような気がした。


冷や汗が背中を伝う。

目の端で、スライムの透明だった体が、じわじわと赤に侵されていく。まるでぼくの命が、ゆっくり奪われているようだった。


(……血?)


明里の声が頭の奥で響いた。

「塩が溶けることで、水の中に電気を通す電解質ができたの。まるで電線ね。」


ぼくは、震える唇で笑った。

「……そうか……これなら、やれる!」


体中の残りの力をかき集め、右腕に雷を集中させる。

青白い閃光が、ぼくの腕からスライムの中へと一気に駆け抜けた。


稲妻が爆ぜた瞬間、空気が焼ける匂いが鼻をついた。

耳をつんざく轟音。

スライムの中で雷光が暴れ回り、白く泡立つ。

その表面が弾け、飛び散る液体が頬に当たり、じりっと熱い。






ジュッ、と嫌な音がして、スライムの身体が痙攣する。

透明な身体が、稲妻の光に照らされて白く泡立った。


次の瞬間、首から絡みついていた感触がふっと消え、スライムは煙を上げながら地面に崩れ落ちた。


膝が抜けるように地面に座り込み、息を荒げる。

喉が焼けるように痛い。

でも、生きている。



焦げた匂いがまだ鼻につく。

地面に転がったスライムの残骸は、しばらくじゅうじゅうと音を立てていたが、やがて動かなくなった。

ぼくの視界はまだ揺れている。

(……死ぬかと思った……)

そう思った瞬間、頬を伝うものが汗か涙か、自分でも分からなかった。


息をするたび、喉がひりつく。


肺の奥まで冷たい空気を無理やり押し込む。

それだけで胸が痛い。でも、生きている。


自分の血とスライムの焦げた匂いが混ざり合い、吐き気がこみ上げた。

それでも、笑ってしまう。

(……これが、ぼくの雷……これが、命を奪う力……)

胸の奥に、安堵と同時に、言いようのない恐怖が広がっていった。

息を落ち着けてから、ゆっくり立ち上がる。

 スライムの残骸を見下ろす。もう動かないと分かっていても、足で踏みつけずにはいられなかった。

ぐしゃりと音がして、胸の奥で何かが少しだけ軽くなった。

 

 深く息を吐き、山道を下っていった。森の空気が冷たくて、やっと息ができる気がした。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ