第20話 科学と雷の決戦
わたしたちは数時間話し合った。この勝負はわたしの誘導で決まる。もしカストルがこの誘いに乗らなければ、勝負は決したも同じ。
話している間も激しい雨に稲光が続き、カストルにとって最高の状況が整いつつあった。
わたしたちは再度あの場所にやってきた。カストルは完勝したと思っているのか、微笑している。
わたしはカストルに歩みより、言い放った。
明里「あなたの雷なんて大したこと無いわ。わたしだって雷なんて作ることは出来るわ。」
明里はカストルほどの大きさではないが、手のひらで小さい雷を作ってみせた。
カストルはプライドが傷つけられたのか、今にも襲いかかりそうな勢いでこう喋った。
カストル「おまえらは負けも同然。最後に言い残す事は?」
明里「クロウの仇と、わたしたちはあなたに雷勝負をしたい。場所はあの鉄塔で!」
カストル「ふん、面白いことを言う。どこで勝負しようとて、結果は同じ。」
カストルは不敵な笑みを浮かべたまま、明里の指差す先を追った。朽ちかけの遺跡の中に立つ、一本の鉄塔。それは、雷の導体として、絶好の場所になる。カストルは、明里の意図に気づかないまま、その挑発に乗った。
再び、カストルとわたしたちは鉄塔の前で対峙した。カストルは傲慢に笑い、天に手をかざした。
カストル「愚かな女め。場所がどこであろうと、俺様の雷の力に違いはない。見せてやる、真の雷を!」
ゴォォォォォ……!
空が唸り、カストルの体が雷光に包まれる。彼は自慢の強力な雷を、明里たち目掛けて放った。
カストル「サンダーブラスト!」
しかし、雷は明里には当たらなかった。明里がその場から一歩も動いていないにもかかわらず、雷は明里を避けるように、狙い通り鉄塔へと吸い込まれていく! 鉄塔は眩い光を放ち、雷のエネルギーを大地へと流し込んだ。
カストル「なっ……馬鹿な!?なぜ当たらぬ!?」
彼の表情に、初めて焦りの色が浮かぶ。絶対的な自信が揺らぎ始めている。カストルは、さらに大きな雷を召喚しようとする。
カストル「ぐっ…ならばこれならばどうだ!ギガサンダー!」
空が割れんばかりの轟音と共に、先ほどをはるかに上回る巨大な雷が明里たちに迫る。しかし、それもまた、明里の指示通りに、迷うことなく鉄塔へと落ちていく!
鉄塔は雷を吸い込み、大地へと逃がし続ける。何度雷を放っても、明里たちにはかすりもしない。カストルの額には冷や汗が流れ落ち、その顔は恐怖に歪み始めた。
カストル「あり、ありえん……!俺様の雷が……!くそっ、こんな馬鹿なことが!」
彼は自分の絶対的な力が通用しないことに、初めて絶望した。
雷鳴士カストルの敗北と、新たな出会い
カストルは、もはや戦意を喪失していた。負けを悟った彼の顔は蒼白になり、醜態を晒すように逃げ出そうと背を向けた。
煉「逃がすかよ!レックス!」
レックス「おうよ!」
煉が素早くカストルに肉薄し、自慢の短剣を振るう。カストルは雷の魔力を纏おうとするが、精神的な動揺と、明里の作戦に打ちのめされたことで、いつものような力が出ない。
レックスがその隙を逃さず、重い一撃をカストルの体に叩き込んだ。雷の魔力を失った彼は、無様に地面に倒れ伏す。鉄塔は雷を引き寄せて地面に流すための人工物
明里「私達の勝ちよ、カストル。力だけでは、全ては解決しないの。」
煉「おまえいつの間に雷魔法習得したんだよ?」
明里「あ、あれね?氷を空中でぶつけ合って静電気を作ったのよ。カストルみたいに大きい雷は無理だけど小さい静電気くらいなら密かに練習してたの。」
わたしたちは、雷の属性を持つカストルを打ち破った。この戦いは、明里の科学的知識が異世界で通用することを証明し、彼女の救世主としての道のりに確かな一歩を刻んだのだった。
激しい雨はまだ降り続いていた。雷鳴士カストルを倒し、安堵に包まれたわたしたちは、倒れ伏すカストルの傍らに、雨に濡れた小さな人影が横たわっているのを見つけた。それは、まだ幼い少年のようだった。その身にはわずかな魔力が残っているが、ひどく衰弱しており、意識は完全に失われている。そして何より、その子の目には、雷鳴士カストルのような力は感じられず、記憶の欠片すら宿っていないかのように、虚ろな光を湛えていた。
明里「この子……まさか……」
雨音だけが響く中、わたしたちは新たな謎と、運命の出会いを前に立ち尽くした。




