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科学で戦う異世界理系JKと、壊れかけの守護者 ~めんどり頼んだら水素爆発しました  作者: 武者小路団丸
第1章 旅立ち

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第2話 科学と魔法の交差点

森の中に落下した明里(あかり)は、地面に背中を打ちつけながらも、なんとか体勢を整えた。


湿った土の匂いと、葉のざわめきが耳に残る。


「……ここ、どこ?」


身体を動かしてみる。少し背中は痛むが、致命的な怪我はなさそうだ。手を確認する。


スマホはない。代わりに、手のひらにはあの“念動術(ねんどうじゅつ)の石”が握られていた。


「……やっぱり、夢じゃなかったか」


周囲を見渡すと、森の中にぽっかりと開けた空間があり、のどかな景色が広がっている。


そのとき、茂みの奥からガサガサと音が響いた。


地面がわずかに震え、小石が跳ねる。


ズシン……ズシン……と、地鳴(じな)りのような足音が近づいてくる。近づくたび、腹の奥が共鳴(きょうめい)するような錯覚に襲われた。


木々の葉が細かく揺れ、鳥たちが一斉に飛び立つ。


草をかき分けて現れたのは、石と土塊(つちくれ)でできた巨大なゴーレムだった。


まるで岩山が歩いているかのような巨体。動きは鈍重(どんじゅう)だが、圧倒的な質量感がある。一歩踏み出すたびに地面が沈み、周囲の草が押し潰された。


「剣もないし、魔法も使えないし……どうすれば……!」


焦る明里の前に、ひとりの少年が躍り出た。


青い髪に、静かな瞳。マントの裾が風に揺れている。


「下がってろ。俺がやる」


少年は手を前にかざす。周囲の空気が震え、水分が引き寄せられるように集まり始めた。


「アクア・スピア」


形成(けいせい)された水の槍がゴーレムへと放たれる。しかし、石の体に突き刺さることなく、弾かれて砕け散った。


「……やっぱり、物理耐性か」


明里「ちょっと待って、あなた誰!? 魔法使いなの?」


少年「(れん)。火属性の魔法使いだ。君は?」


明里「明里。理系女子高生。今は……たぶん、異世界の救世主候補」


煉は一瞬だけ眉を動かしたが、すぐに冷静な表情に戻る。


「なら、君も戦えるはずだ。何かできることは?」


明里は、手の中の念動術の石を見つめた。


(水はH₂O。分子(ぶんし)の集合体。分解すれば、水素と酸素……)


(本来、分子結合(ぶんしけつごう)なんて人の力で触れられるはずがない。でも――この石は、力を“直接そこ”に通してくれる)


「煉、ゴーレムの顔に水をかけて! できるだけ多く!」


煉「……理由は?」


明里「全部はいらない。ほんの一瞬、燃える分だけでいい」


煉は短く息を吐き、頷いた。


「面白い。やってみよう」


煉が水を操り、ゴーレムの顔面に集中的に水を浴びせる。


その隙に、明里は念動術を発動した。意識を、水の内部へと沈めていく。


(全部は無理。一方向、一瞬だけ……)


(ここ……この結合を切る……!)


水のごく一部が、弾けるように気体へと変化した。


空気中に広がる、水素と酸素。


ゴーレムが腕を振り上げ、地面に叩きつけようとする。


その拳が落ちる寸前――


「煉! 火を!」


「イグナイト」


放たれた炎が水素に触れた瞬間――


「バーーーーン!!!!」


爆発は外へ広がらず、ゴーレムの内部で炸裂(さくれつ)した。


内部から破壊された巨体は、悲鳴のような(きし)み音を上げながら崩れ落ちる。砕けた石の破片が地面に突き刺さり、ズシン……ズシン……と鈍い音を立てて止まった。


巻き上がる土煙の中、二人はしばらく沈黙していた。


煉「……君のやったこと、魔法じゃないな。理屈で組み立てた力だ」


明里「うん。科学。分子の結合を操作して、燃焼反応(ねんしょうはんのう)を起こしただけ」


煉「水はただの液体じゃない。分子の振る舞いが、本質か……」


煉は空を見上げ、思索するように目を細めた。


「君の知識、俺の魔法に応用できるかもしれない。たとえば氷。分子の振動を極限まで抑えれば、構造強度(こうぞうきょうど)は飛躍的に上がるはずだ」


明里「蒸気爆発(じょうきばくはつ)もできるよ。水を一気に加熱すれば、体積が何百倍にもなる」


煉「……面白い。君となら、魔法の新しい体系が作れるかもしれない」


明里は思わず笑った。


「じゃあ、共同研究ってことで!」


「……悪くない」


――――――――――


神界事務室:女神のぼやき


女神「転送完了。念動術石による局所分子干渉きょくしょぶんしかんしょう、記録更新」


神官「また理系か。今度は部分水素爆発?」


女神「この子、発想が効率厨(こうりつちゅう)すぎるのよ。世界法則の想定処理が追いつかない」


神官「科学者タイプは、どの世界でも厄介ですね」


女神「異世界も、神界も……働くって大変」


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