第19話 雷鳴士カストル敗走と科学の閃き
町で雷の属性の人物がいると聞いて遺跡跡に進むわたしたちは、遺跡跡なのか鉄塔や昔神殿だったのか崩れかけの石の跡を進む。
一本の枯れた老木の枝から、突然、黒い塊がフワリと舞い降りてきた。使い魔クロウだった。ギラギラとした、一切の感情を持たない目でわたしたちを見据え、甲高い声で告げた。
クロウ「よく来たな、明里。ここはおまえたちの墓場になる場所だ。あの方が、冥府の地獄に連れて行ってもらえと、そうおっしゃっている。」
そう言うなり、クロウは嘲笑うかのように漆黒の翼をはためかせ、森の奥へと飛び立って行った。
わたしはクロウのあとを着いて行った。進むたびに荒んだ人家が見えたり、かつての栄華を失った崩れた遺跡跡が見える。ここだけ時間が止まってるみたいに見える。空が急に曇り始め、日が沈みかけて周りはほとんど見えなくなった。その薄暗いなか、一層眩く輝く金色の鎧を纏った人物の元で、クロウがピタリと止まる。
わたしがその人物の前に着くと、小雨が降り出し、やがて雷鳴が轟き、大雨になった。雷光が閃くたびに、金色の鎧に包まれた男の、妖しく白い顔が浮かびあがる。
その男こそが、この地を支配する雷鳴士カストルだった。
カストルはわたしを一瞥すると、鼻で笑った。
カストル「よく撒き餌に食いついて来たな。」
クロウ「撒き餌ってどういうことだ?」
クロウが問いかけると、カストルは冷酷な眼差しを向けた。
カストル「お前の仕事は終わった。」
雷鳴が鳴り響き、それが地鳴りとなって伝わってくる。クロウはカストルの意図を察し、間合いを取ろうと後退した。
クロウが雷鳴士に向かって叫ぶ。「俺を利用してたのか、クソ。高周波音波攻撃!」
空気を震わせる見えない音の層が、カストルに向かって放たれる。だが、カストルは眉一つ動かさず、仰々しく腕を上げると――クロウに雷が直撃し丸焦げとなった。
煉が叫ぶ。「おまえの仲間だろうが!」
わたしは声が出ず、呆然としたが次に怒りの炎がメラメラと心の奥底から立ち上がった。
カストル「バカめ、取るに足らぬゴミが消えただけのことだ。お前たちも、すぐにそうなる。雷の属性の人物を探して来たなどと、愚かなことを。俺の力は、お前たちのような半端者には決して渡さない。そして、この領域で俺に逆らう者は、例外なく雷の裁きを受けるのみだ!」
カストルは、次の瞬間、腕を大きく振りさげた。空気がビリビリと震え、雷の魔力が収束していく。
カストル「跪け、愚か者どもが!雷光嵐!」
轟音と共に、無数の雷が空から降り注ぐ。それはまさに嵐のようだった。明里と煉は咄嗟に身構えるが、あまりにも激しい雷の猛攻に、為す術もなく吹き飛ばされる。全身が痺れ激痛が走り、視界が歪む。
レックス「くそっ!」
レックスは二人の前に割って入り、堅牢な鱗で雷を受け止める。しかし、彼の巨体すらも雷に打ちのめされ、大地に膝をついた。
レックス「ぐぅ……!この程度で、やられる俺様じゃねえ……!」
そう言いながら、レックスはわずかに身をひねり、身体を身構えた。わたしは雷がレックスに直撃したように見えた。
レックスは、激痛に耐えながらも、倒れた明里と煉を抱きかかえ、全力でその場から駆け出した。カストルは追っては来なかった。雑魚と判断したのか、あるいは追う必要もないと高を括ったのか。
安全な場所まで逃げ延びた。自分たちは全身が痺れ、焼けるような痛みが走っているのに、レックスは息が荒いものの、致命傷には至らず、鱗の焦げ付きや血が滲む程度だった。レックスのほうが直撃だったのに……
明里「レックス……大丈夫なの?どうして、私たちとこんなに傷の差が……?」
レックス「ああ、なんとか…な。だが、やべえな。あんな雷、まともに食らっちゃたまらねぇ。」
明里は、あの雷撃の直前、レックスがわずかに身をひねり、尻尾を素早く地面に接地したのを思い出していた。その時の衝撃と、レックスの軽傷が、明里の頭の中で繋がっていく。
(まさか……レックスの尻尾が、電気を地面に逃がしてた?まるで接地みたいに……!)
明里の頭の中で、科学の知識が急速に繋がり始める。もしそうなら、レックスの地の属性は、単なる防御力だけでなく、電気を吸収し、大地へと逃がす「導体」としての役割も果たしていることになる。この異世界で、まさか電気の基本的な物理法則が適用されるとは……!
明里「わかった……!勝てる……!レン!レックス!」
身体はボロボロだけど、力はみなぎってきた。
わたしは煉とレックスに作戦を話し出す。
カストルにうまくこちらの戦法に乗せる手立てを。




