第16話 旅路の再開と、契約の仲間
わたしは煉と話し合い、この旅を急ぐことにした。蓄えは少ないけれど、行く先々でギルドの仕事を受ければなんとかなるだろうと、両者の意見は一致した。土地勘も無いけれど、煉がいればなんとかなるだろうという甘い考えでこの地を離れた。
寝ぼけ眼の煉を無理矢理引っ張り、私たちはこの先の入江にある希望の入江港に急いだ。
港町に入ると潮の匂いがして、わたしのテンションは上がり、早く船に乗って見知らぬ土地に行きたいと思った。
目新しいものがたくさんあり、港には漁船やヨットが停泊していた。
明里「これがわたしたちが乗る船ね?」
煉「あぁ、これに乗って翠嵐港まで2時間もあれば着くだろ?」
私たちは目的の船に勇んで乗り込もうとしたが、船員らしき人に呼び止められた。
船員「おまえたち、見ない顔だけどチケットはあるのか?」
明里「チケットはありませんけど、買います。」
船員「チケットが無いだと?チケットが無いなら倍の値段を払ってもらうぞ。」
煉「はぁ?黙って聞いてたら倍だと?弱みをつけ込みやがって!」
船員「いやなら、いいんだよ。こちらからは願い下げだ。」
煉「ぐぐぅぅぅ」
まさかこんなところで足止めとは…
うしろから大きな影が近づいてくる。
声が聞こえ振り向くと、あの砂漠で別れたレックスだった。
彼は船員にこう詰め寄った。
レックス「この方々は王族で、色々な地を巡幸している。俺は見守りとして雇われている。」
船員「はぁ?この人数で巡幸?聞いたことないぞ。」
レックス「バカヤロー。お付きの担当を見てみろ。あれが王族の紋章だろうが!」
確かに煉の自慢の刀の柄には立派な意匠がある
。
船員「だ、だけど、人数が少ない気が…
」
レックスは天を仰ぎ見た。
レックス「はぁ、これだから…。王族の移動が大勢だったら目立って狙われるだろ?少人数で目立たぬように周っているのさ。わかったら、非礼を詫びて船に乗せて差し上げろ。」
そう言うと船員が渋々「数々の無礼、申し訳ありません」と謝ってくれた。
レックス「チケット代を取ろうとする気はないよな?ここまで粗相をしておいて、まだ取るつもりか?」
船員「勿論でございます。一等船室にご案内します。」
レックス「こう申し上げておりますから、許していただけないでしょうか。」
わたしはレックスの申し出に気を取られ、「はい…」としか言えなかった。
私たちが出港するのを見て、改めてレックスに問い質そうと話しかけた時、レックスが口を開いた。
レックス「あんた達、あまちゃんがこの国を旅できるのか?モンスターはウヨウヨいるし、土地勘はゼロだぜ?」
確かに私たちには土地勘もないし、次にどこに行けばいいのかさえ分からない。
レックス「で、俺を雇わないか?旅団で各地を周り、この国の隅々まで知っている。これはビジネスだ。あんたらは旅の目的があって移動してるだろ?俺は案内人だ。」
確かに私たちには土地勘もないし、次の目的地である雷の属性の人間がどこにいるのかも知らない。煉が顔を真っ赤にし、今から切り倒す勢いで「なんだと、金取るのか?」と息巻いている。
レックス「あんたらには船員の件も含めて借り3だぜ?」
さすがの煉も気勢を削がれた。
私たちは船室で食事を取り、昼過ぎ、翠嵐港に着いた。賑やかな港町で雷の属性の場所を聞き、北部の山地帯を目指す。その前には熱帯雨林が横たわっており、この場所を通過しなければならない。鬱蒼とした森に入ると、湿気のせいか汗が噴き出てくる。ずんずん奥へと進んだ。
煉「なんか出そうだぜ。」
明里「出そうってまたアレ?幽霊?」
煉の言葉に呆れながら進んでいると、不意に、草の茂みの奥から「ズズ……ズズズ……」と、土を這うような不気味な音が聞こえた。
次の瞬間、巨体のレックスが、まるで玩具のように放り出された。




