第七話 銀世界で私にできることをします
「助けてくれ・・・・」
「マッチ、マッチを・・・・」
「寒いよう、お母さん・・・・」
私が、ヴェルトに言われて来た街は、一面雪が積もった、銀世界だった。
そこでは、多くの人が壊れた木造の家にいて、洋服もまともに着ることなく、寒さに耐えていた。
ここは、小説に出てきた国、ガルクフェンスじゃない。こんな、雪国じゃなかったはずよ。
それに、こんなに国民が寒さに苦しんでいるなんて・・・・。
『お前を今から、とある地域に転移させる。そこでお前にできることをしてこい』
今朝寝起きのヴェルトに言われたことを思い出す。
私にできることって、なんだろう。
「お母さんっ!ねえ、お母さんっ!返事してっ!」
「どうしたのっ!」
子どもの声が聞こえて、私は気がついたら動いていた。
「・・・・お母さんが、起きてくれないのっ!」
「いつまで起きてたの?」
「さっきまで」
「いつから、こんな寒い格好でいるの?」
「昨日から。急に、寒くなって・・・・」
昨日からこの状態?寒いところに長時間いるのは良くないって、知らないのかしら?
「何か、温かいものとか、ない?」
「な、ない」
一刻も早く、この子のお母さんを温めてあげなきゃ。
でも、温めるものが無いんじゃあ、私には何も・・・・・。
『・・・・・お前に憑いたのは、強力な炎の霊、だな』
ヴェルトの昨日の言葉を思い出す。
・・・・・っ!これだ!
「ねえ、僕。お鍋、ある?」
「あるよ」
「じゃあ、ここまで、運んできてもらえる?」
「う、うん。わかった」
お鍋があるなら、大丈夫。
きっと、みんな、暖を取ることはできるはず。
私は思いつきを信じて、とりあえず動いてみることにした。