第三十四話 今まで僕が向けられた事のない軽蔑の目を向けてきた彼女
「ああっ、もうっ!僕は一体何を・・・・」
「何をって、ずっとそうやって悩んでたんでしょ?」
「そうだよっ!気が付いたら店が開店するんだっ!」
「あら、開店はいつなの?行きたいのよ、教えて?」
「僕に聞かず、ヴェルトにでも聞けよ・・・・。次の祝日だとさ」
僕は楽しそうな母を横目に、今日までを振り返った。
あの日から何度か屋敷を訪れたが、不在が続いていた。今の状態で花を贈るのも違うだろうと思い、結局会えないまま十日ほどが過ぎていた。そんな風に悩んでいる頃、なぜか父に呼び出された。彼女から僕の話が父にまで回って、怒られるのではないかと少し怯えたが、内容は全然違った。
内容は例の犯人についてだった。裁判を行わないという決断に驚いたが、父の悔しそうな表情を見たら不本意であることはよく伝わった。多忙な父に代わってヴェルトに説明に言った時、なぜかその場にはマドカもいた。ヴェルトよりも真剣に話を聞いているように見えたが、普通に会話が出来たので良かった。
少し疲れているのか、顔色が良くなかったことに気が付いてしまって、目をそらしたくなるくらいだった。
「前にも言ったけど、無理に謝る必要もないのよ?謝られる側だって不快に思うだけよ?」
「・・・・」
母はずっとそう言っていた。わかっている、わけも理由もわからず謝られるのは嫌だ。
それでもどうしてか、僕は謝りたかった。
今まで誰も、僕に向けたことがない軽蔑の視線を、僕に向けてきたマドカ。彼女にあの目をされた時、怖いと思った。捨てられるのだと、僕には価値がないのだと言われた気分だった。
「・・・・次の祝日、開けておきなさい。一緒に行きましょ?」
「はい。お願いします、お母様」
もし、今回を逃したら、もう花屋のことは話題にならなくなって、謝れなくなることは安易に想像が出来た。
何を謝らなればならないのか、次の祝日までの時間で考えよう。
母の助けを借りて、僕はオープン当日にお店に行くことに決めた僕だった。




