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第三十二話 着々と花屋開店へ準備を始めます

あれから少し時間が経ち、店舗と社員が決まった。皇太子が毎日のようにルース家を訪ねてくることは無くなったので、本当に私とヴェルトの独断で決めさせてもらった。働く社員は、災害によって生活が苦しいミルくんの住んでいる地域や、物価上昇の波にもがき苦しんでいる首都で暮らす女性達だった。花嫁修行をしているからなのか、この世界の女性達はみんな手際がよく、仕事内容をすぐに覚えてしまった。また、みんな働けるということにものすごく感謝しているようで、とても楽しそうに研修期間を過ごしていたので、私も一緒になって商品を作っていた。


「で、誰が表に立って販売するんだ?」

「え?みんなだけど」

「社員には商品を作る仕事しか教えてないだろ?」

「そこは大丈夫よ。社員のみんなは誰よりも、接客される側の気持ちを知ってるから」

一度、接客の基本を伝えたことがあった。その後、私がお客さん役をした時、みんなはなぜかサラッと接客をやってみせたのだ。接客態度だけでなく、自分たちで作った商品の魅力もきちんと伝えられていた。

接客について私が教えることは何にもなかった。

「じゃあ、十人全員接客なのか?」

「いいえ。三人が接客、二人が商品制作よ」

「担当は決めないのか?」

「ええ。接客して、お客様の声を生で聞いて、それを商品作りに活かしてもらいたいからね」

「でも、花は枯れるだろ?」

「ええ。長い期間はもたないからこそ、このお店の理念は『一瞬を最高に美しく』なのよ」

どんな美しい花も一週間もすれば必ず枯れてしまう。花が美しいのは一瞬だ。でも、その一瞬を美しく楽しんでもらうために、私たちは全力を使う。悲しいときも嬉しい時もすべての時を彩ってくれる花だからこそ、全力で。

「オープンはいつにするんだ?店の運営面でいうなら、いつでも大丈夫だ」

そう私に聞いてきた時のヴェルトの声はさっきまでとは違い、低かった。

「出来るだけ早く」

それに倣い、私もさっきとは違い、真剣な表情でそう告げた。

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