第二十五話 なぜかアバルト様がルース家に来ることになりました
「ごきげんよう、マドカ」
私は後ろから声をかけられた。どこかで聞いたことのある声に、私は嫌な予感がした。
振り返った先に立っていたのは、一国の王子であるアバルト様だった。
「な、なんでアバルト様がここに・・・・?」
「マドカに聞きたいことがあったからだよ」
「・・・・なんでしょう?」
私、なにか失礼をしたかしら?身に覚えはない。
でも、現実、こうしてアバルト様が直々にこんなところまで来ているのだから、なにか気に障ることをしてしまったのだろう。
「アバルト様、こんな所では話も出来ません。場所を移しませんか?」
ヴァルトは何故か冷静に、アバルト様にそう提案していた。
「そうだね、ではせっかくだからルース家にお邪魔しようか」
いやいや、ちょっと待って。なんでそうなるの!?
「ちょっとヴェルト、それはまずいわよ」
私はヴェルトに近寄って耳元でコソッとそう伝えた。
「なんでだ?ここで話すよりはリスクが低いと思うが」
「それはそうだけど、それとは違う問題もあるじゃない!」
「・・・・そうだったか?」
問題があるのは、私が作っていたフラワーアレンジメントが飾ってあるところ。あんなの、お花を贈った人が見られていいものじゃない。それに、この前ヴェルトがこの技術は見たことがないって言っていたし、私にこれ以上疑問を持たれるわけにいかない。
「いいね、君たち、距離が近くて」
「・・・・」
いや、コソコソ話だけど・・・・。
この世界でこうして話すことはしないのか・・・・あ。確か悪役令嬢とかは扇で口元を隠して話していた気がする。こうしてコソコソ話すこと自体がレアなんだ!
ミスしかしてなくて、もう怪しまれてるんじゃないかとすら思えてきた・・・・。
「私達が乗ってきた馬車があります。案内させて頂きます」
「ああ、よろしく頼むよ」
ヤバい、それはヤバい。
とにかく、家に帰ってすぐに、フラワーアレンジメントをどこかに片付けなきゃ。




