第二十三話 どれだけ彼女の環境が変わろうとも
「マドカ、何故許可したんだ?」
「・・・・押しに負けただけよ」
「は?あの少年は、マドカのことなんて押してなんてないでしょ」
「・・・・どうして伝わらないの?」
聖女たるもの、そう簡単に市民について行ってはいけない。みんなに平等でなくてはならない。それにも関わらず、彼女は少年について行っていた。
そのことを不思議に思った俺は、マドカに正直に聞いてみたが、その理由が俺にはわからなかった。マドカは伝わらないことに呆れているかのような表情をみせた。
「可愛かったから。あんなふうにお願いしても断られたら悲しいじゃない」
「そういうものか?」
「・・・・・うん、悲しいよ」
そう言った時のマドカの表情は何故か悲しそうだった。
マドカは時々、こういう表情をする。悲しそうで、痛そうで、苦しそうな表情を。
「・・・・それに、次いつ会えるか、分からないから」
マドカがそういった時俺は少し慌てた。マドカは気づいているのではないか?自分の命が長くは持たない可能性に。
「私がもし、王子の婚約者になったら、こうして会うことも難しくなるかもしれないでしょ?」
「・・・・なりたいのか?」
「分かりません」
その答えは俺の想像とは少し違った。
「私は、復讐だけ出来たらそれでいい。どの道を進んでも悪の道だけど、ベルアみたいには死にたくないの」
「・・・・」
「信じてた人に裏切られて、殺されるなんて、絶対嫌なの」
ああ、そうだった。マドカはずっと怖がってる。信じることを、裏切られることを、殺されることを。
それでも、子供の純粋な気持ちは、信じてる。信じようとしてる。
その事に気がついた時、俺はどれだけ彼女の環境が変わろうとも、ここにマドカを連れてこようと決めた。




