第二十話 王子から届いた花束をアレンジして飾ることにしました
「お、お嬢様、本日も王子殿下から花束が届いておりますが・・・・」
「わかったわ。いつも通り、あの部屋へ運んでくれる?」
「は、はい・・・・」
王子殿下と初めてお会いしてから1週間。あの日から毎日、ルース家には王子殿下からの花束が届くようになっていた。流石に毎日となると普通に飾るのが味気なく感じてしまい、三日目の分から個室に運んでもらっている。
私は身支度を整え、花の集められている部屋へ向かった。
「・・・・きょうの花束はガーベラなのね」
今日の花束はガーベラで、色は赤、黄、オレンジと、明るいものが多かった。
確か、黄色いガーベラには『究極の愛』っていう花言葉があったはずだけど・・・・私の考えすぎかしら?
まあ、この世界で花言葉なんて有名でもなんでもないでしょうし、気にしないことにしよう。
そう切り替えて、私は部屋にあるお花達を眺めた。今日の花に加え、ここには赤とピンクのカーネーションと赤いアネモネがある。
「・・・・赤色多いわね」
赤い花には愛の意味が多い印象。やっぱり気のせいじゃないのかな・・・・なんて考えながら私はリースの枠を準備する。
この個室は、私の趣味のフラワーアレンジメントの作業場になったのだ。元の世界では、花屋で働いていた私。華道も習ったけど、私はフラワーアレンジメントの方が合っていたみたいで、資格も沢山取っていた。せっかくお花がこうして届くのならと、ヴェルトに頼んで色んなお花屋さんからフラワーアレンジメントに必要な道具と、葉類を揃えてもらったのだった。
これだけ赤色が多いのなら、赤いガーベラをメインにして、ピンクの小さめのカーネーションと・・・・カスミソウを合わせたら可愛いものが出来そう!
考えてすぐ、取り掛かる。
この作業時間だけは、私は元居た世界のまどかになれたのだった。
「お前、どういう神経してんだよ」
私が作った作品が屋敷のあちらこちらに並ぶようになってすぐ、ヴェルトにそう言われてしまった。
「失礼ね」
「失礼なのはお前だろ。王子に貰った花をそんなふうにアレンジしやがって」
「アレンジは失礼じゃないわ。こっちの方がお花も生き生きしてるでしょ?」
「そんなこと、男の俺には分からん」
ヴェルトはそんなことをサラッと言った。
「じゃあそんなことはどうでもいいわ。私がこっちが好きなの。あんな花束、毎日貰っても飽きるわよ」
正直、この世界の花束は好きになれなかった。理由は主に二つ。一つ、根ごと花束にするから。二つ、一つの種類でしか花束にしないから。もちろん、元の世界でも薔薇の花束なんかは赤い薔薇だけで作られていた。けれど、それ以外の花束は沢山の種類・色の花で組み合わされて作られていたのに。
「・・・・王子からの貰い物をそんなふうに評価するとはっ」
気がつくと、ヴェルトはお腹を抱えて笑っていた。
「な、何がおかしいのよっ!」
「そりゃあおかしいでしょ。王子が手配してる花束だろ?この国で一番腕のいい職人が作ってますから」
・・・・、今なんて?
「その職人技を、好みじゃないと言い放ち、その上で職人以上の作品を作ってしまうとはっ・・・・」
笑わずにはいられないというように、ヴェルトは笑い続けた。
「ちょ、ちょっと待って。ってことは、私、この国のトップを優に超えるレベルってこと?それをなんとも思わず屋敷に飾ってるってこと?」
「え、そうですよ・・・・・?ま、まさか知らなかったなんて、知らなかったは知らなかったで面白いけどっ・・・・」
「知るわけないでしょっ!貴方に何も教えてもらってないんだからっ!あー、もう、どうしようっ!」
どうしよう、この事がもし王子にバレていたとしたら、不敬罪で国外追放とか・・・・。そんなの嫌よ、まだ私、ベルアの復讐してないし。まだまだ死ねないのにっ・・・・。
そう私が考えてる間も、ずっとヴェルトの笑い声が聞こえていたのだった。




