第十七話 皆様の前で聖女として紹介してもらいました
「な、なあ、あれ、ジーニアス様がに親しげに話されていらっしゃるわっ!」
「な、なんであんな不気味な女がジーニアス様と話せるのっ!」
嫉妬丸出しの発言が、会場に響く。
それ、貴方方の方が無礼と物語っているのだけど、どうしてその事に気が付かないのかしら。
「ご令嬢、お名前をお伺いしても?」
「マドカ・ルースと申します。はじめまして、ジーニアス様」
「はじめまして、マドカ。君の兄はあんなやつだが、優しい奴なんだ。嫌ってあげないでくれ」
「嫌うなんて恐れ多い。とても素敵な兄を持てて幸せ者です」
嫌う?
そんなこと一回も考えたことがなかった。
まあ、生きていてヴェルトに恋に落ちることは無いでしょうけど。
「そうか。それは君が聖女だからかな?」
聖女、という言葉に周りは硬直し、少しして騒ぎ出した。
「せ、聖女!?こんな小娘が?」
「ありえん!聖女はうちの娘だ!」
「そうよ、こんな平民の娘が、聖女なわけないじゃない!」
平民?何を言っているのだろう?私は今、ルース家の養子に入っている。つまり・・・・。
「皆の者、国王陛下のおなりだ。静粛に」
私の隣には、今にも怒鳴りそうなヴェルトがいたが、その声が聞こえたのだろう拳を強く握っていた。
「皆の者、今日は遥々すまないね」
その言葉に誰も何も言わない。
それでは会話が成り立たないではないか、と思うのだが、この世界では無言は反論はない、という意思表示らしい。
「今日はこの国の聖女、マドカ・ルースを皆に紹介したく集まってもらった」
そういうと、さっきよりも大きなざわめきが起こった。
「失礼ですが、国王陛下。私はこの者が聖女などと私は認めない。聖女には我が娘が相応しい!」
その後に続こうと、色んな人が意見を言い出した。
「どれだけ国王陛下が娘を聖女と認めても、私は認めぬ!」
「私もだ!反国派は、一切認めん!」
反国派、ね。センスのない派閥名だこと。
「・・・・静粛になさい」
静かだが、その言葉を遮ることは誰にもできないという重さのある声がした。もちろん、国王陛下のものである。
「君たちは何か勘違いをしているね。私たちは聖女の力を手に入れる訳では無い。聖女は売り物では無い。聖女は、我が国を豊かにしてくれる存在なのだ」
そりゃあそうだ。でも、きっとどの物語でも聖女に普通の人と同じような人権は与えられなかっただろう。住む場所も食べるものも苦労しないけど神のように崇めたてられるか、聖女の力をよく思わない者に虐められるか。
本当に聖女の力に感謝してくれていたのはきっと、いつも市民だったんだな、と私は今、身をもって知っている。
「君たちは今、もし君たちに危害があったとしても、この方の力を借りることは出来ない。神の加護を使えない、ということだが、それで良いのだな?」
急に国王陛下は脅すような口調で話し出した。
「恐れながら、国王陛下といえど人を脅すような発言は如何なものかと」
私も流石に驚いた。まさか一国の国王がそんな脅しのようなことも言うのだと。
「確かにそうだね。だが、君たちも私にそのように言える立場では無いと思うのだが?」
「な、何故でしょうか」
「君たちは聖女様を侮辱した。それはまだ私の発表前だから良いとしよう。だがしかし、君たちならわかっているであろう?聖女様は今、ルース家のご令嬢である」
ああそういうことか、と多くの人が思った。その事に気がつくのがいちばん遅かったのは、さっきまで国王の意見でも認めないと騒いでいた人達だった。
「その御方をあのように侮辱することは、つまり、ルース家を侮辱したということ。これからルース家が君たちを訴えたとしても、君たちはその罪を逃れることはできまい」
そう言われてやっと、自分がしていたことの罪の大きさに気がついたようだった。
・・・・呆れるわ、馬鹿なの?
流石に立場が無くなったのか、それともただヴェルトが怖くなったのか、この後は反対派は会場の中に見えなくなったのだった。




