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【護民教官(ピグマニヨン)】、【寧理兵装(スケアゼノン)】

作者: AMAKA

……横文字名前は、『症状』悪化するで?

「おはようございますわ……!」


「本当に良いお天気ですことよ……!」


 お嬢様学校の優雅な、ひかりさざめくような、朝。


 学び舎のテラスで、授業前のお茶の時間。


 そんな、申し分のない、ひとときに、


「おぉ、甘い匂いがしよんでえ!」


 アホが、団体で、暴れこんできた。


 ぢゃらぢゃらした、ど派手な風体、これ見よがしにひるがえし、


「おっほ! 欲満たすには、やっぱり良家の子女に限んなあ! 身代金、期待できる!」


 言いつつ、常人の『二倍』の速度と跳躍力で、テラスに闖入。


 品の良い悲鳴に囲まれながら、手近の令嬢に手ぇ伸ばし、


「おら、こっち向かんかい!」


 直後。


 片目押さえて、苦悶した。


 おれが指ではじいた、甘納豆のせいや。


 驚く【倍速】どもに、


「あら、ごめんくださいましですわ」


 と、立ち上がったおれを、片目押さえた【倍速】は、健在な方の目細めて、


「背ぇ高い、お嬢さんやな。正直、好みや……!」


 おれは、優雅に、スカートの裾つまんで腰を落として、


「どうぞ、よしなに……!」


 言うて、常人の『四倍』の速度で跳び、その【倍速】どつき倒した。


 倒された【倍速】は、おれの喉元見て、次いで、股間を凝視、


「おのれ、でかい女や思たら、普通に男やんけ……!」


 言い残して、気絶する。


 おれは、転校まもない生徒のふりやめて、笑い、


「若こう見えて、化粧上手いと、こんな任務にも着けますわ」


「気ぃつけえ! こいつ『豚』や!」


 そう色めき立つ【倍速犯罪者】の群れに、飛びこんだ。


 国家権力の『豚』、か……。


 職業名、【ピグマニヨン】。


 二つの単語、『ピグマリオン』と『マニア』を合わせた造語で、海外にならって創設された。


「おい、『豚』! おれらも、おのれも、同じ『特効薬』同士やろが!」


 仲間を次々、おれにしばき倒され、【倍速】どものリーダーがたまらず、わめいた。


「『二倍速』ちゅう特権を、行使してるだけやぞ! おれら『健康』な人間は【準ちゃん】の、倍以上の価値があるんやからな!」


「【準ちゃん】? 『標準語話者』や。差別すな」


 やんわり言うと、


「そんな硬ったい言葉使こたら、『発症』すんど!」


 痛いとこ、突かれた。


 この『病』は、形式・権威・硬直・虚勢・建前・誤魔化し・身分感覚・階級意識等々を餌にする……。


 リーダーは、当たらんパンチ振り回しながら、さらに、


「どうせ、おのれも、パンデミック前の【免疫語】の扱いには、むかついとった部類やろが! 下品で、がめつく、醜い……!」


 今の君らやんけ……。


「綺麗事で、言うてるんやない」


 泰然と、おれは返した。


 こういうとき、訓練の、【護民教官ピグマニヨン】の、真価が発揮される。


「『惻隠の情』や。知ってるか、孟子の言葉」


 何か言おうとした【倍速】リーダーに、のど輪きめて、


「……ついでに言うとくと、『倍以上の価値があるんやから』の『から』は、【グレー表現】やで? 【免疫語】で正しくは、『あるんやさかい』て、言う」


 衝撃が、【倍速】どもの間を走り抜けた。


 発症への恐怖と、『偽毒効果ノーシーボ』で、彼らの速度が急激に落ちる。


 はちみつに胸まで浸かっとるんか、くらいの遅さで、リーダーが上着の下から拳銃抜いたが、撃つ前に、その二の腕に短針が突き立った。


「全員、武器を捨て、その場を動かないでください!」


 おれの相棒、【護民教官代理】の準子(あだ名や。教育実習生として学園潜入中)が、【痒針銃イッチェット】を構えて、悪党どもに両手上げさせた。


「かいぃ! なんやこれ! 助けてくれ!」


 おれの足元で、リーダーが、針からの薬物と微弱電流による強烈なかゆみに、悶絶しとった。






「『準子』、と呼んでください!」


 涙目で言う、研修中のその新人に、


「そんなん、おれ、よう呼ばんわ……」


「いいえ、呼んでください! その悔しさが、私を『速く』します! そしていつか、一人前の【護民教官】になれたその時は、本名で呼んでくださいね、お祝いに……!」


 て、泣き腫らした笑顔で、押し切られたんを思い出す。


 くだんの【倍速】らを、警官隊に引き渡したあと。


 身分を明かしたおれと準子は、今度は正式に【ピグマニヨン】として、学園の記念講堂で特別授業、


「……いわゆる『標準語』は、真っ先に【確定重症化言語】、略称【重症語】として、緊急禁止措置が執られました……」


 準子が演台で、お嬢さん方に講義してる。


「なぜでしょうか? 有力な説として、全体主義下における指揮命令系統に適合するよう造られた戦闘語、という『反人間的言語性』が、免疫力を落としたのではないか、と言われています……」


 おれは、スーツ姿に着替えて、先生らに混じり、講堂の後ろから、生徒の後頭部を眺めてる。


「さらに、【重症語】に近い言語ほど、危険性は増しますから、『じゃね』や『ねーよ』といった言い回しも、ただちに【忌避推奨方言】に指定されました」


 国外でも、同様やった。


 あの言語や、あの言語、それに、あの言語などは、最初の最初に『罹患』した。


 準子が、続ける。


「ただし、いかなる運命のいたずらか、あるいは、ウイルス開発のミスか……? 不思議なことに、【重症語】の丁寧形『です・ます』だけは、たとえ発症しても症状は軽く、リハビリ次第では、みなさんが目にしたあの【倍速】犯罪者たちと、同程度のスピードで動けるのです。【重症語】としての権威性や断定感が、ある意味、弱いからかもしれません」


 それで、奇妙なことになった。


 友人や同僚同士、くだけたフランクな口調で話す【免疫語話者】と、敬語『です・ます』の【丁寧語話者】。


 心を病む者が、続出した。


 こんな『でんがなおまんがな連中』に、どうしてへつらわねばならないのか、と……。


 ほんでも、我慢して『です・ます』使い続ける者が、一定数おるおかげで、ずいぶんマイルドな社会になった気もする。


 現在は、【免疫語】を学ぶ者も、大いに増えた……。


 どこの国でも、地域の母語をしっかり残したエリアの言葉だけが、強力な『特効薬』になる……。


 おれが、目で合図すると。


 準子は、本題に入った。


「ですが、注意してください……。あなたがたのお嬢様言葉は『です・ます調』に似ていますが……、残念ながら、ウイルスにとっては非なるものです。あなたがたの言葉も【忌避推奨方言】、しかも【重症語】の源流に非常に近い言語なのです。権威や身分意識と分かちがたく、しがらみ、旧時代の規範にがんじがらめの狭い社会でだけ使われた、『敗北者の言語』……」


 そこまで、言うか。


 準子は、ひと呼吸、置いて、


「この事実を伏せて、『【倍速】への道を授ける』と、言葉巧みに近づいてくる人間には、くれぐれも注意してください。彼らは全員、皆さんを陥れようとする犯罪者です」


 見つけた。


 一人、かわいそうなくらい震えてる生徒が、おった。


 講義終了後。


 庭園にある温室に同行願い、咲きほこる花に囲まれて、事情聴いた。


「襲撃のこと、知ってたやんな? 校門のセキュリティ切ったんは、自分なん?」


「いいえ、ごめんくださいまセ! そんなこと、わたくし、してはおりませン!」


「嘘はあかんで? すぐ、わかる。君ら【重症者】は、平常心から『離陸』すると、いわば『しゃべりにカタカナが混じる』ねん。ええから、言うて? 未成年やし、詳しい襲撃計画も聞かされてなかったんやろ? 罪には、ならん」


 後悔の念に打ちのめされた表情で、お嬢様は話し始めた。


 あの【倍速犯罪者】どもとの、接点を。


「……紹介されたんですわ。わたくしが、その、たまに行く【標準語カフェ】で」


 おれと準子は、顔見合わせた。






「懐かしいやろ」


「……いえ、べつに」


 準子の返答は、そっけない。


「いまや、ただの『腐敗と堕落の街』、『ジャンキーの都』です」


「自分の故郷やんか。そんな悪しざまに……」


 おれと準子が乗ってるんは、今シーズン最新のオプション着せた【布装甲増設車両カーゴパーカ】。


 おれは、助手席。


 準子は、安全責任者席で、手に非常時用の【ステアリンググラブ】はめてる。


 二人とも、スキニーな革の上下にサングラス、


「着きました」


「ほな行こか。……ご一緒させていただきますわ、先生」


 半透明の防爆フード、はね上げて、おれと準子は車を出た。


 薄汚い路地。


 すえた匂い。


 準子が言うんも、無理はない。


 世も末や、お嬢様が来るようなとこやあらへん……。


 本物のアブサン飲ます安酒場と、ニュース原稿専門の古書店に挟まれ、その店はあった。


 この種の店舗は、通称こそ【標準語カフェ】や【共通語バー】やが……。


 実態に即して、おれらは【標準窟】て呼んでる。


 すっ……と、準子が腕を絡めてきた。


 ただならぬ冒険求める、教師と教え子カップル装うて、入店。


 途端に、うわん! と、音圧が全身へ襲いかかってきた。


 非の打ちどころのない【重症語】による、発話の群れ。


 薄暗い店内の客全員、もれなく、椅子にだらしなく座って、忘我の表情。


 昔の絵本や児童書を開き、朗読する者……。


 往年のヒット曲を、調子はずれに歌う者……。


 天井からいくつも吊られた液晶画面で流れる、数々のモノクロ邦画と会話する者……。


 コーヒーやビールで唇しめしては、夢中で、文字どおりの【死語】をしゃべり倒してる……。


「【教官】」


「わかってる」


 一人のウェイターの動きが、明らかに不自然やった。


 動作のいちいちに、過度の自制がにじんでる。


 間違いない。


 あの男、【倍速】や。


 わざわざ発症のリスク冒して、【重症語】漬けのこんな場所で働く、て……。


「楽しんでルゥ?」


 いきなり話しかけられて、見れば、完全に目に霞がかかった、客の女。


 年は、二十代後半か。


 こちらに抱きつこうとする両手の動きが、焼き網の上のスルメより遅い。


「今の私さ、キラキラしてるンダ……!」


 無残なことに、話す速度だけは、健康時と変わらん。


 どこまでも、言語まわりの神経系にだけ『特権的立場』を与える病、【半減速恍惚言語病】。


「うん……! すッごい、キラキラしてるンダヨ……!」


 そんな、ンダンダダヨダヨ言うとったら、廃人なってまうで?


 すでに『半減速』どころか、『四分の一速』やん……。


 おれは、ウェイターを目のはじで追いつつ、なだめるように女の両手首つかんだ。


 そやから、そのとき、準子が声しぼり出すようにして、女見つめてこう言うとは、まったくの予想外やった。


「……お姉ちゃん……!」


 おれはあわてて、ウェイターに目、戻した。


 目が合った。


 グラスごと盆捨てて、奥へ逃げるウェイターを、


「自分はここにおったれ!」


 準子に言い捨てて、おれは駆け出し……、直後、意図せぬ加速に頸椎いわしそうになった。


 おそらく、常人の『八倍速』、達成。


 骨と腱が、悲鳴あげてる。


 このウイルスが、元はドーピング目的で開発された、ちゅう噂は、たぶん、ほんまかもしれん……。


 まわりの【重症語】の雲に、押される感覚……。


 おれは難なく、そのウェイター捕捉し、無力化した。






「心配しいな。お姉さんは被害者や。手厚い更生治療プログラム、受けれる」


「してませんよ、心配なんて」


 準子が、笑顔で答えた。


 黄金色に輝く、風船みたいな明るさ。


 ここは、【国語治癒院】本庁。


 おれら【ピグマニヨン】の本拠地。


 権限強化された【文化総省】の下部組織にして『国家総力防疫の要』だけあって、設備は充実。


 おれと準子がおるんは、研究開発試験棟・地下五階。


 今は他に人影もない、広大な『実技演習シェルター』。


 けさ襲撃されたお嬢様学校の生徒の保護者には、有力者も多く、結果、投入が急遽、前倒しされることになった『新兵器』が、目の前にあった。


 いや、パイロットは、おれやのうて、準子やが。


 シェルターの一角に設置された専用ハンガーに、その、物々しい『かかし』は、直立待機モードで懸架されとった。


 機体種名、【WWML-4SK】。


 政府機関内コード、【スケアゼノン】。


 言語病防疫先進各国の技術を導入した、『カタサポートAI搭載・音声入力式・五肢延長・装着機械骨』。


 首、両腕、両脚を支持延長する、独立伸縮可動域の広い統合ロボットアームコンポーネントで、全高は、操縦者の等身大から六メートルまで、可変。


 くの字に曲げ開いた機体右脚部に、準子が足をかけて昇り、脊柱部にあるメインハーネスにその身すべりこまして、


「ハンガー解放します……、五肢展開跳躍!」


 声とともに、たわめたバネのように飛び出した。


「ピボット右、左、左です、ジャンプ、タッチ右、ピボット、バック……!」


 自身の肉体のわずかな動きと音声命令で、機械骨を自在に動かし、ひょろ長で大股な巨人と化す。


 脚部の球体ピボットでターンしながら、花弁のように舞い、


「キックです、ピボット、受け身前転、倒立……! 右手ピボットです! 半転、ジャンプ!」


 空中でひねりを加えてのスピン、そして、


「着地伸縮、主器トリガー待て!」


 おれのすぐ前で停止、見栄切るように、両前腕部装着の【対流砲セルウィップ】を掲げてみせて、微笑んだ。


 ピボットとの摩擦で、床のコラーゲン舗装が溶け焦げる、香ばしい匂い……。


「いいかも」


 と、上気した声で、


「【教官】も、気に入ったんじゃないですか?」


 おれは、顔しかめて、


「マニューバが攻めすぎやろ。クラッシュぎりぎりやん……」


 掲げてる砲口も、気持ち、こちらを射界に捉えてる気するし。


 そやから、おれは。


 今の二人の、この緊張を、ひっくり返すことにした。


「大丈夫です、【教官】。まだまだ引き出せますよ、この【スケアゼノン】は」


「横文字名前は、『症状』悪化するで」


「じゃ、【異舌いたん封じ】とか?」


 軽やかに、楽しげに言う準子に、おれは、告げた。


「素直に言うたらどや? ……【免疫語おどし】、て」


 ……沈黙。


 やがて、準子が、乾いた声で、


「いつから、お気づきに?」


「研修配属されたおまはんと、初めて顔合わせた瞬間、予感したわ」


 なぜか、笑えて、


「その後、『準子』て呼んでくれ言われて、ほぼ確信した。こら、がちがちの【寧理主……!」


 いきなりの発砲よけれたんは、準子が音声入力によるAI支援を受けず、自分の手で照準してトリガー引いたから。


 撃ち出されたつむじ風が、床に勾玉じみた模様を荒く彫りつけ、凪ぎ失せた。


 ……【寧理主義者】。


 通称、【デスマシスト】。


「ターゲットに【教官】を設定! 『どこまでも』、『追いつめ』、『制圧』します!」


 入力の、あまりのアバウトさに。


 そこまで仕上げとったか、と、総毛立つ。


「【教官】、今度は私が『二倍』、いいえ『四倍』ですね……! ピボット! トリガー!」


 両腕の砲口から出る気流が、かち合わされ、つむじ風の独楽こまとなって、次々に撃ち出された。


 本来は、極低致傷性の対人兵器やが、対流セルのフレーバー用カートリッジには、『唐辛子エッセンス』や『帯電ワイヤ』など、多彩な添加物が。


 いま、準子がセットしたんは、『生分解性プラスティックまきびし』で、旋風にひゅって撫でられただけで、体表ずたずたに……。


 なんちゅう女や。


「【教官】には、想像力がないんですか? 皆が『です・ます調』で語り合う、優しい社会、おだやかな家族……!」


 ディストピアかな?


「私たちは傷ついてたんです! こちらが敬語を使っているのだから、【免疫語話者】も同じようにするのがマナーじゃないですか……!」


「聞けるかい、そんなポリコレ!」


 追い回されながら、言い返した、が。


 あかん。


 おれは転がるように逃げた。


 普段使われてへん階だけに、助け求める相手もおらん。


 通路に駆け出し、倉庫区画に飛びこむ。


 あった。


 置かれた資材もまばらな、がらんとした奥に、おれ用に用意された、もう一台の【スケアゼノン】。


 ろくに触ってへんから、AIも全然おれ向きに育っとらんが、充電済みなんはありがたい。


「ハンガー解放せえ! 走れ! ……おっそ!」


 遅すぎる。


「パンチ」


 と、準子の、あきれたような声。


 どつかれて、おれは五肢展開した機械骨ごと、空中で錐揉んだ。


 頭頂肢先端のピボット球で天井叩いて着地、直後、


「カートリッジ、三番……!」


 という、準子の声に、ちびりかける。


 対流フレーバーの三番て、『ガソリン』やんけ!


「ファイア!」


 準子機の砲口から二重らせんの炎が噴き出し、おれの前髪なめるに及んで、肚を、据えた。


 なんで、こんな考えに至ったんか?


 自分でもわからん。


 準子同様、おれもどうかしてるんやろう。


 炎の竜巻で出来た鞭振り回してくる準子にらみつけて、おれは、私物のスマホをハーネスのドックに叩き込み、片端から購入して、読み上げた。


 電子書籍版の、官能小説を。






 もし、この場に、誰かおったら。


 巨大な機械製のヒトデが二体、くねりながら、跳ね回りながら、交尾してるように見えたやろう。


 こと性愛に関しても、『おなごなるもの』の方が、数段豊かで勘がええ、いうんは、ほんまやと思う。


 準子がダウンロードした文章の方が、はるかに、淫靡やった。


 半分外れかけたハーネスに吊られながら、おれは、


「……て、言うてみて? その方がもっと……」


「……そんなん、うち、よう言わへん……!」


 発音も、抑揚も、完璧にはほど遠い、準子の【免疫語】……。


 やがて。


 準子が、どろどろに濡れた指伸ばして、二機のコンソールを操作、稼働データを全消去した。


 お互い、AIをスタンドアローンにしてて、助かった……。


 後日。


 二人で、機体の『制御不能事象』の報告あげて、【スケアゼノン】の正式採用は見送りになる。


 逮捕したウェイターの供述と、店で押収した帳簿データから、あの【標準窟】の経営者が、あのお嬢様学校の理事長と同一人物であり、しかも【デスマシスト】やった、ことが明らかになる。


 ほんで、今日。


 おれらは、理事長とその同調者の立てこもる豪邸、包囲してる。


 バックアップしてくれてる、警察の特殊部隊やミリタリーの狙撃班が、『活躍』せんで済むよう、事を収めるんが、おれと準子の役割やった。


 あんな、けったいな『新兵器』なしでも、勝てる。


「行こか」


「行きましょか」


 おれは、日本刀模した【電磁誘導加熱アイエイチブレード】抜き放ち、扉断ち割り、飛びこんで、


「【ピグマニヨン】や! 手ぇ上げて投降せえ!」(『【護民教官ピグマニヨン】、【寧理兵装スケアゼノン】』完)

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