あなたも感染してみますか
「ねぇ、私いつも思ってるんだけど」
「……なんだよ?」
「自分の部屋に彼女が来ているのに、毎度ゲームしかしない男って死ねばいいと思うのよ」
「そうだな。そんなやつは彼女に愛想つかされて捨てられても仕方ないな」
「あんたのことだけどね」
「あぁ、知ってる」
「……捨てられたいの?」
「捨てられるのか?」
「……質問を質問で返すのはずるいわ」
「仕方ないさ。俺はチェシャ猫症候群だからな」
「なによそれ」
「俺みたいなやつのこと」
「あんたみたいなのがたくさん居たら、きっと私みたいなかわいそうな人も同じくらいいるわね」
「大丈夫だ。お前はかわいそうじゃないから」
「彼氏に自分よりゲームを優先されてる女の子はかわいそうじゃないの?」
「いいや、かわいそうだ」
「やっぱりかわいそうなんじゃない」
「でもお前はかわいそうじゃないよ」
「……それはなに、あんた、私よりゲームを優先してないって言いたいの?」
「そうですが?」
「どの口がそんなことを……」
「このチェシャ猫のように横に大きく裂けた口が」
「裂けてないじゃない」
「そうだな。でも俺はチェシャ猫症候群だから。やっぱり外見も重要だろ?」
「私はそうは思わないわ。やっぱり大事なのは中身よ」
「そうか? 俺はお前の見た目好きだぜ」
「…………見た目だけ?」
「中身も」
「それだけ?」
「全部」
「終わり?」
「捨てないでください」
「捨てませんよ」
「ありがとう」
「どういたしまして。…………で、終わりなの?」
「何が?」
「私の好きなところ」
「あぁ」
「うそ。もっとあるでしょ?」
「あって欲しいのか?」
「だから、どうして質問を質問でかえすの?」
「だから言っただろ。チェシャ猫症候群だからだよ」
「そこに戻るのね」
「あぁ、戻る」
「ところで、ずっとゲーム進んでないけど」
「当たり前だろ。お前と話してんだから」
「…………」
「うれしいか?」
「全然」
「顔、にやけてんぞ」
「違うわよ。これは横に裂けてるの。私もチェシャ猫症候群だから」
「なんだ、お前もだったのか?」
「えぇ、今あんたからうつったの」
「まさか感染症だったなんて驚きだな」
「ほんとよね。ノーベルなんとか賞もとれるんじゃない?」
「まさか。せいぜい『俺を驚かせたで賞』くらいだ」
「それでもいいわ」
「良いのかよ。ノーベルなんとか賞と同列に扱われるなんて、俺を驚かせたで賞二冠達成だぜ、お前」
「ふふふ、うれしいわ」
「しかもうれしいのかよ」
「えぇ。だって世界で私だけだもの。あんたからそんなのもらえるのなんて」
「…………」
「照れてる?」
「いいや」
「うそ。顔がちょっと赤いわよ」
「りんご病が今発症したんだよ」
「私たちの周りの人たちにヒト・パルボウイルスB19を持ってる人は居ないと思うけど」
「じゃあお前が持ってるんだろ」
「持ってないわよ」
「うそつけ。お前もりんご病だろうが」
「驚いたわ。私自身ですら知らなかったのにあんたは私の体のこと何でも知ってるのね。でも残念。かかってないわよ」
「大好きだ」
「………………………」
「ほら、お前もりんご病だろ」
「………………………バカ」
「うるせーよ。そんなことより『お前を驚かせたで賞』か……『嬉しかったで賞』くらいよこせよ」
「…………大好き」
「…………それはいつももらってるっての」
「ところで、チェシャ猫症候群ってなに?」
「お前こそ、ヒト・パルボウイルスB19ってなんだよ」
反省してるかって?後悔してるかって?
あなたはこれみて反省と後悔、どちらかをしてますか?
っていう人がチェシャ猫症候群だそうです。うそです実はあまり知りません。
なぜこんなのを書いたのか自分でも分かりません。まぁ適当に「あまぁぁぁぁいっ!」とどっかのツッコミみたいなこといってくれたら嬉しい…わけでもありませんがやっぱり嬉しいです。
あとタイトルには特に意味がありません。