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第6話


 そもそもレイルを巻き込んだのはオリヴィアの方である。レイルが謝ることではない。


 オリヴィアは首をゆっくりと横に振った。


「幻滅なんてするわけないよ」

「オリヴィアさん……」


 レイルは泣きそうな顔で、オリヴィアを見下ろす。


 純粋過ぎるその瞳に、オリヴィアは困ったように笑う。こちらが恥ずかしくなるくらい、まっすぐな瞳だった。


(私、こっちの世界では意外と見る目あるのかも)


 もし、また転生の機会があるのなら、今度こそレイルのような、心から自分を愛してくれる人と結ばれたい。


 オリヴィアはそっとレイルの手を取った。触れた瞬間、レイルの指先がぴくりと跳ねる。 

 

「私のことは気にしなくていい。だから、レイルくんはもうお城に戻って。牢にいる私の様子を見に来たら、魔法で眠らされて逃げられたって言えばいい」

「そんなの嫌だ」


 まるで駄々っ子のようにレイルが首を振る。

 

「私は悪役だからこれでいいの。これからはのんびり気侭に、なんとかして生きていくわ」


 レイルの胸をそっと押し、起き上がる。そのまますっと立ち上がると、歩き出した。


 こうなったら、森の奥へ行こう。誰にも見つからない場所で、しばらくやり過ごすしかない。


 しかし、背後からパッと手首を掴まれ、オリヴィアの足が止まる。

 驚いたように振り向いた瞬間、オリヴィアの身体はレイルに強く抱き寄せられていた。

 

「……オリヴィアさん、僕……やっぱり諦められない」 

「レイ……」

「このままオリヴィアさんのことを攫わせてもらう」


 次の瞬間、ぶわっと突風が吹いた。瞬きのうちに空へ身体が舞い上がる。レイルに抱き上げられ、オリヴィアは身を固くした。


「わっわっ!」

「大丈夫。僕に掴まっていて」

「レイルくん……飛行魔法使えたの?」


 驚いてレイルを見上げる。


 レイルは魔法を使えないはずだ。飛行魔法なんて、学校の上位の学生でも難しいはず。


(レイルくん、何者……?)


「レイルくん……あ、あの」


 レイルの、長い銀髪を括っていたゴムが風に攫われる。その瞬間、眩しいほどの銀髪が揺れた。


 まるで天女のようなその姿に見惚れていると、レイルがパチッとウインクをした。

 頬が熱くなる。

  

「オリヴィアさん」

 

 レイルは息を呑むほど美しい笑みを浮かべて、オリヴィアを見下ろした。


「――眠れ」


 直後、キィンと耳鳴りがして、オリヴィアは意識を手放した。


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