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神威荘のお仕事~地の章・黄の節

「後片付けは済んだか?志郎。」


 朝食の後片付けを終えた後、椎磨さんが俺に声をかけた。


「はい。」

「なら、今すぐ作業着に着替えよ。着替えたら裏の小屋で待っておる。それから帽子に軍手も忘れるな。」

「わかりました。」



 俺は自室に戻って椎磨さんの指示通り、作業着に着替え、帽子を被り、軍手をして、神威荘の裏の小屋に来ると作業着に麦わら帽子を被った椎磨さんがいた。


「よく来たな。今度は畑の草むしりだ。」

「はい。」


 俺は椎磨さんから草むしりと言われてやる事にした。

 これから俺達が草むしりをする畑は神威荘保有にて、収穫した作物は神威荘や神威庵での料理の食材に使用する。

 この畑を椎磨さん達は俺がここに来る前から守ってきたのだろう。

 そんな畑を俺も守るのかと思うとワクワクしてきたが、実際は真逆であった事を思い知る事になるとは……。

 この時の俺はそういう事すら全く想像出来なかった。



 草むしりを始めてから数分後、志郎とは別の箇所を手際よく草むしりをしていたよろいは畑の異変に気付いた。


(……ん!?さっきまであった苗が……。!……なっ……!)


 畑に植えてある筈の苗が無くなっている事に気付いたよろいがその箇所を辿ってみると、例の作業で苗までむしっている志郎がいた。


「志郎!お前は何をやっておる!?」


 椎磨は志郎に問いただした。


「草むしりですよ。」


 俺は何やってるか聞かれたから『草むしり』と答えた。


「そういう事ではない!何故苗までむしるのかって聞いておる!」


 よろいは志郎が草むしりの際に何故苗までむしっているのか気になった。


「『草むしり』っていったら草をむしるんですよね。だから……!!」


 よろいは問答無用で志郎を畑から引きずり出した。

 何でいきなり無体な真似すんだよ!そこまで手荒にする事ないだろ!

 よろいから乱暴に引きずり出された志郎は彼女への反感を抱いた。



 よろいは小屋の裏まで志郎を連行し、激しく言い放った。


「このたわけ!!」

「……。」

「お前は……、今まで草むしりのやり方を教えて貰わなかったのか!?」


 よろいは草むしりのやり方を間違えた志郎に問いただした。


「……貰ってきてません……。」


 ここに来る前までマンション暮らしだった俺は土と触れる機会があまりなかった為、『貰ってきていない』と答えた。


「だったら何故私に聞かなかった!?お前が私にやり方等を聞いていたら、作物となる苗までむしらずに済んだ筈だ!」


 よろいは志郎を叱責した。


「……。」

「志郎、草むしりの事は園芸係のちるだに教えて貰え。それまでお前に草むしり……、いや、農作業はさせぬ!」


 よろいは志郎に草むしりについて教えて貰わない限り農作業はさせないと告げた。


「……はい……、失礼します……。」


 俺は椎磨さんの元を静かに去り、マチルダの部屋に向かった。

 椎磨さん……、結構恐い人だなあ……。それに草むしりも結構……。

 俺は椎磨さんの厳格さと草むしりの難しさを実感したのだった。

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