神威荘のお仕事~地の章・赤の節
『志郎×椎磨』編です。
先日より神威庵の手伝い続きで疲れ切って自室で寝そべっていた俺に朝っぱらからノックの音がした。
「志郎、起きてるか?」
口調からしてみたけさんかと思ったが、声のトーンが違う為、みたけさんではないと踏んだ俺がドアを開けると、椎磨さんが前に立っていた。
「志郎、私と一緒にゴミ出しに行くぞ。」
「はい。」
着替えを済ませた俺は椎磨さんと一緒に神威荘中のゴミをまとめて施設の裏に準備してある一輪車に積んだ。
積まれたゴミの量は一輪車一杯で結構重そうだ。
「志郎、運べるか?」
「はい。」
俺は一輪車を持ち上げようとしたが、見た目通り結構重く持ち上げられなかった。
「どうした、志郎?」
「椎磨さん、こんな重いの俺には無理です。」
俺は柄になく弱音を吐いちまった。
「無理だと!?……もう一度持ってみよ。」
「持てませんよ。」
椎磨さんからもう一度持てと言われたが、俺には無理でしょうがなかった為拒んだ。
「いいから持ってみよ!」
よろいは弱音を吐く志郎に強く言い放った。
椎磨さんにもう一度一輪車を持ち上げるよう催促された俺は仕方なくやってみた。やはり持ち上げられなかった。
「なるほどな……。志郎、お前は腰を使っておらぬな。重い物は腰を使わねば持てぬぞ。」
「はい……。」
「私が見本を見せてやる。貸してみよ。」
椎磨さんがゴミがいっぱい積まれた一輪車を造作もなく持ち上げた瞬間、俺は驚いた。
その重い物を造作もなく持ち上げた者が女性である事も驚きに拍車をかけた。
「さあ、今度は腰を意識して持ってみよ。」
今度は椎磨さんの言う通り腰を意識して一輪車を持ってみると……、何とか持ち上げる事が出来た。
「さて、持ち上げられたところで……、1km離れたゴミ捨て場にゴミを運ぼうか。」
「1kmも?」
俺は片道1km離れた場所にゴミを運ぶと聞いて動揺した。
「どうした?持ち上げる事が出来たのにこの期に及んで尻込みか?」
「いえ、やらせて下さい。」
俺は歯を食いしばって運ぶ事にした。
やっぱり重い……、けど、腰を意識してるお陰で何とか持てる……。
これなら1kmも……、と思いきやもうゴミ捨て場に着いていた。
ゴミを捨てた後の帰りは軽い為楽だった。
「ゴミ捨てご苦労。手を洗ったら朝食だ。朝食の後片付けが済んだら私の元に来るが良い。」
「はい。」
椎磨さんから朝食の後、自分の元に来るよう言われたが、今度は何の用なのか俺は気になった。