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神威庵の一日・青の節

 16:00まで俺は自室で休憩する事にした。

 自室に戻った俺は畳の上に大の字になって寝そべった。

 今日は疲れたけどこういうのも悪くないな……、あっ……、そう言えば16:00にはまだまだすべき事があったんだっけ……。

 俺は疲れのあまり眠りについてしまった。



 突然、自室をノックする音がした。


「志郎!もう16:00過ぎてるよ!」


 みたけの怒鳴り声だった。

 俺はその時間にすべき事があった事に気付いて慌ててドアを開けると、みたけさんが仁王立ちしていた。


「志郎!自室で(くつろ)ぐのは結構だけど、時間くらい守りな!」


 みたけは時間になっても戻ってこなかった志郎を叱責した。


「は、はいっ!」


 俺は慌てて返事した。


「早速だけど、スーパーにお使いに行って貰うよ。」


 みたけさんは俺に大きめの手提げを渡した。


「夕食に必要な11人分の食材を買ってくるんだ。まず、『○○%OFF』や『半額』等のおつとめ品を選び、それからどんな料理が出来るか考え、それに合った食材を仕入れて来る。それから、レシートは必ず貰いな。あと、金は手提げに\4,000入れてるけど必要最小限に仕入れてくるんだよ。」

「はい。」


 みたけは志郎にお使いの詳細な指示を出し、志郎は承諾し、片道一キロ近くのスーパーに向かった。



 スーパーでは多くの子連れの母が買い物をしていた。

 まず、おつとめ品だったよな……。さて、おつとめ品は……?

 俺はおつとめ品を探し回ったがなかなか見つからなかった。

 自分で探し回るも見つからなかった為、俺は店員に聞く事にした。


「あの……、すみません……。おつとめ品はどこですか……?」


 俺は恥ずかしながら店員に尋ねた。


「おつとめ品ならそちらにございます。」


 店員はおつとめ品のある場所を指して答えた。


「有難うございました。」


 俺は頭を下げて、おつとめ品のある方に向かって行った。

 そこには『○○%OFF』や『半額』等のシールが貼られた商品が多く陳列してあった。

 賞味期限が近づいた為に体のいい処分という事なんだろう。

 俺がそこから数点を持って来た手提げに入れると……


「お客様、まだ精算されていない商品をマイバッグに入れるのはご遠慮下さい。」


 店員が俺に声をかけ、俺は一瞬背筋が凍った。

 店員は防犯の為、志郎を制止したのだった。


「まずは、店の入り口近くに置いてあるカゴをお使い下さい。それから、レジで精算を済ませてからマイバッグにお入れ下さい。」


 店員は志郎を店の入り口近くに積まれているカゴの方に案内するついでに、マイバッグに入れて良いタイミングについて伝えた。


「わかりました。」


 お互い頭を下げ、店員は俺の元を離れた。

 そして俺はカゴを一つ手にし、どんな料理が出来るのか考え、そこから料理に合った食材も仕入れていった。



 俺がお使いを済ませて神威荘に戻った頃には日が暮れており、入口に入るとみたけさんがまた仁王立ちしていた。


「志郎!帰りが遅いなら遅いで連絡ぐらいしな!皆待ちくたびれてるよ!」


 みたけは帰りが遅いのはともかく、連絡をしなかった志郎を叱責した。


「はい……。」

「じゃあ、手提げ返して貰うよ。」


 志郎はみたけに手提げを渡した。

 手提げの中にはおつとめ品は勿論、野菜・肉にレシートとお釣りが入っていた。


「じゃあ、今度はあたしと一緒に夕食作るよ。三角巾とエプロンをしてきな。」

「はい。」


 俺はみたけさんと一緒に夕食を作る事になった。

 ここでは俺にも食材を直接扱わせて貰えた。

 神威庵は飲食店で外部の人が相手だった為、専ら食器洗いに回されたが、夕食は内部の人が相手だから料理の質についてそれ程気にしなくても良いからだろう。



 夕食の陳列が済んだのは20:00頃で、寮母に寮生、そして俺も食卓で向かい合った。


「いただきます。」


 皆美味しそうに夕食を摂っていた。


 今日、みたけさんの厳しさ、いや、それ以上に働く事においての真摯さ、それに比べて自分がまだまだ社会的に未熟である事を痛感した俺だった。

『志郎×みたけ』編完結です。

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