神威庵の一日・緑の節
開店時間11:00に入り、いよいよ神威庵が開店し、間もなく複数の客が入ってきて店に入ってすぐにある自動券売機で食券を購入していった。
「いらっしゃいませ!」
みたけは入ってきた客を手際よく席に案内し、コップ一杯の水をそれぞれの客に配った。
客達は食券をみたけに渡し、みたけはミシン目の入った食券を裂いてその半券をそれぞれの客に返して厨房に入り手際よく蕎麦等の料理を作っては客に持って来た。
バックヤードでは志郎が働いていた。暫くして、多くの汚れた食器がみたけによってバックヤードに運ばれてきた。
「志郎、食器洗い頼むよ!」
みたけは志郎に食器洗いを頼んだ。
「はい。」
俺は多く積まれた食器を一つずつ洗って、洗い終えた食器を拭いては種類ごとに集めて一息ついたが……
「志郎、まだ終わりじゃないよ。」
志郎が食器を処理してる間に持って来た汚れた食器群を指さしてみたけは言い放った。
「は……、はいっ!」
俺はそう言って再び食器洗いに入った。
また拭き、整理……の繰り返しだった。
飽きるかと言えば意外とそうでもなく、今すべき事がはっきりしてる事と相まって余計な事を考える余裕などなかった。
それも悪くないと俺は感じた。
そして俺は黙々と食器洗いと整理に閉店まで勤しんだ。
そして、閉店の14:00を迎えたが、閉店は閉店で店の後片付けで大忙しだ。
俺は何とか残った食器を片づけようとしたが……
「志郎、まかないだ。食器洗いありがとさん。」
みたけさんが俺に遅めの昼食としてネギやかまぼこいっぱいの蕎麦を出してくれた。
客に出すにしては具が多すぎるんだが……、もしかしたらフードロス削減も兼ねた体のいい処分のような感じか。
「有難うございます。それでは頂きます。」
蕎麦を食べてみると結構美味しかった。
美味しさのあまり箸が進んだ。
「ご馳走様でした。」
そして俺が蕎麦を平らげると……
「よし、じゃあ食器の片付け頼むよ!」
みたけは志郎に作業の再開を促した。
「はい。」
俺は食器洗いを再開した。
俺が食器の後片付けを終えると……。
「志郎、今度は余った白ご飯をお櫃に移すよ。そして皆の夕食に回すんだ。」
みたけは定食用の余った白ご飯を太い筒に移すよう志郎に伝えた。
「はい。」
俺は快諾した。これもフードロス削減の一環と踏んでの事だ。
そして俺が白ご飯をお櫃に移し終えた後……
「じゃあ、あたしと一緒に厨房の後片付けをするよ。」
みたけは志郎に自分と一緒に厨房の後片付けをしようと促した。
志郎はみたけと共に調理器具を洗い、厨房やバックヤードの床をデッキブラシで磨いた。
後片付けが終わった頃には15:00を切っていた。
「後片付けが終わったね。じゃあ、戸締りをして神威庵の一日は終わりだよ。」
みたけは志郎に神威庵での最後の指示として戸締りを指示した。
「はい。」
俺は店内の窓の戸締りをした。
開いている窓には鍵をかけて、閉まっている窓には鍵がかかってるか確認した。
「それじゃご苦労さん。16:00になったら夕食のお使いがあるから、あたしの元に戻ってきなよ。」
「はい。」
こうして神威庵の一日の流れは終わったが、神威荘の方はまだ終わってない事を思い知った俺だった。