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浪人の俺と現役の彼女・緑の節

 神威荘を飛び出した俺が向かったのは虹南海岸より数キロ離れた灯台だった。

 灯台の立つ(みさき)は子供の頃、親父の実家の神威荘で夏休みに家族ぐるみで宿泊した時よく行ってたな。

 あの頃は祖父も生きてたな。

 よく祖父に抱っこして貰ったんだっけ……。

 灯台の周りを飛び交うカモメや沖で漁をする漁船を眺めながら俺は子供の頃の事を思い起こした。

 ああ……、昔は良かったな……。

 寝そべって青空を眺めながら俺はそう思った。



 一方、神威荘の志郎の個室のドアを寮母に開けて貰ったちるだは書き置きに気付いた。


(『暫く一人になりたい、探さないでくれ』……。まさか……。)


 ちるだは志郎がはやまるのではないかと思った。


(いえ……、やめましょう……、最悪の事態を考えるのは……。)


 ちるだは最悪の事態を考えず、寮母に彼女の孫である志郎が行きそうな場所を聞く事にした。



 話を戻して、灯台の立つ岬で自分の今までの事を振り返っていた俺は一人の女性、ちるだの事が気になった。

 俺……、彼女に何て事言っちまったんだよ……。『浪人の気持ちなど現役のあんたにわかるもんか』だなんて……、何様だよ俺……。

 俺はちるだへの極めて不遜な態度を後悔し始めた。

 彼女は浪人の俺の事を気にかけてたのに……、そんな彼女の想いを(ないがし)ろにした俺って……、最低だな……。

 俺はとことん自分を恨んだ。

 そして、もう一つの考えも浮かんだ。

 暫くしたら彼女に(あやま)りに戻ろうか……。

 ああ……、そう考えていくうちに俺……、眠くなってきたよ……。

 やがて俺は眠り始めた。



 目が覚めると夕陽が西の山に沈みかけていた。

 そうか……、俺は寝てたんだな……。さて……、そろそろ戻って彼女に謝りに……!

 起き上がった俺が神威荘に戻ろうとすると、そこにはちるだ本人がいた。

 彼女は白いハイヒールを履いていた。


「志郎さん……、わたくしと一緒に戻りましょう……。」


 ちるだは俺に一緒に戻るよう促した。

 あまりの突然の出来事に俺は戸惑った。

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