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浪人の俺と現役の彼女・赤の節

『志郎×ちるだ』編です。

 今年の三月、俺が大学受験に失敗した日の事だ。

 俺は両親から祖母が切り盛りしている神威荘に連れられた。

 そして俺は親父の実家である神威荘で寮母である祖母の手伝いをする傍ら浪人として受験勉強に勤しむ事となった。


「……皆さん、初めまして……。俺……、神威志郎……、ここの寮母の孫です……。大学受験に失敗した為……、ここで祖母の仕事の手伝いをしながら……、受験勉強に勤しむ所存です……。宜しく……、お願いします……。」


 俺はあがりながらも神威荘の寮生達に自己紹介をした。

 寮生達もそれぞれ自己紹介をした。中には社会人にハーフに留学生や推薦で行った人等様々で、何より全員女性でそれも九人ときたもんだ。

 しかも、今まで見た事ない美人ばかりでまさに生き女神な感じだった。

 そんな彼女達との生活が始まった。



 そして次の日……。


「志郎さん、お勉強の事で気になる事があったら何なりとお尋ね下さい。」


 俺の部屋で俺の受験勉強の相手をしているのは寮生の一人、『町村ちるだ』だ。

 彼女は寮生の中では最も穏やかで奥ゆかしい感じで、人当たりも悪くない為、祖母から指名されたのだろう。


「一人にさせてくれないか。」


 俺はちるだに言い放った。


「……ごめんなさい……。わたくしはあなたの祖母やご両親から時間があればあなたの受験勉強のサポートをするよう言われております……。」


 ちるだは俺に拒否の返事をした。


「……っ」


 俺は歯ぎしりをした。そんな俺にちるだは言葉を続けた。


「あなたが大学受験に失敗してしまった件……、わたくしもお察し致します……。だから……!」

「現役で合格したあんたなんかに……、浪人の俺の気持ちがわかっかよ!」


 怒り狂った俺はちるだの言葉を遮る形で感情をぶち負けた。

 何となく気に入らなかった。

 別に彼女自体が気に入らないんじゃない。

 以前の自己紹介で彼女の『二十歳の二回生』という言葉から「現役で合格」という事がわかり、そんな彼女に浪人の俺が勉強を教えられる事が我慢出来なかったんだ。


「……。」


 ちるだは志郎の荒々しい言葉と何より(すさ)んだ表情に動揺した。


「……(わり)い……、(しばら)く一人にさせてくれ……。」


 さっきの荒々しさとは対照的に静かな口調で俺はちるだに一人にさせてほしいと言った。


「……わかりました……、失礼致します……。」


 ちるだは俺に一礼した後、静かに俺の部屋を後にした。


 それから約15分後、俺は神威荘を飛び出した。『暫く一人になりたい、探さないでくれ』という書き置きを残して。

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