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2章9話 恩を売る

もう少しで目標の総合評価1000突破!

後、いいねの項目って最初は受け付けない設定になっているんですね……知りませんでした……。

「なるほどな、大体の事は分かった」


 村人の一人という事もあって情報は曖昧だ。

 それでも幸運を利用して精査すれば重要な情報は効率的に手に入れられた。例えば今いる場所は王国の中でも国境線に近い事だろうか。国境線に近いとはいえ、すぐ近場に深い森、それも深部にはSSSランクの魔物が住み着いている影響で他国は攻めてくる事は無いとかな。


 強い魔物とスミレは話したから雑に最高ランクのSSSランクの魔物かを聞いたら幸運は否定しなかった。仮に多少の差異はあったとしても他国ですら攻め込めないほどの魔物がいる事は確かだ。……やっぱり、スミレと出会えたのは本当に幸運だったな。




「あまり……力になれなくてすみません……」

「いいや、世情に関して知らない事が多いから物凄く助かったよ。それこそ、こうやって暮らしやすい空間を作った甲斐があると思えるくらいだ」


 俺が聞いたのは本当に世情というか、常識的な話しか聞いていない。それでもスミレが考えを自分なりにをまとめるために、唸ったりしている姿を見ると多少は思いやりすら湧いてくる。俺のような不浪人相手にも優しく接するような子……まぁ、この子に必要以上の優しさを持つ気は無いけどな。


 きっと、この子に執着心を持てば菜奈を救えなくなってしまう。如何にして早く彼女のもとへと向かうか。今の俺にはそれだけが大事な事なんだ。俺が両手で抱えられる量なんて大した事は無いってよく分かっているからな。


「私は……何もできませんよ。ボイドさんは優しいからそうやって私の事を思えるだけです。普通ならもっと違った事を頼んできて」

「まさか、質問に回答しただけで全ての恩を返したと言いたいのか。悪いが、さっきの感謝は所詮、家を住みやすくした部分に関してだけだぞ」

「えっと……それなら他は何を求めるのですか」

「ああ、君も内心では分かっているだろう」


 スミレの表情が一気に曇った。

 そうだな、話を聞いていて頼みたい事は考え済みだったんだ。スミレは今、一人で暮らしている。話からして親と住んでいる影は無かったからな。そこら辺を上手く扱えれば確実にスミレを起点として色々な事が出来るようになる。だから、言っては悪いが上手く利用させてもらうぞ。


「そうですよね……私を奴隷に……」

「いや、数日間、もしくは数週間だけスミレの家に住ませて欲しいって頼みたかったんだ。もとから宿を探すために話す場所を求めていたからさ。泊まれるなら知りあった場所の方がいいかなって」

「……へ?」


 今は一緒に住ませてもらうだけでいい。

 別に奴隷とかを求めているわけでは無いからな。売れる恩は売れるだけ売る気はあるが、それは見返りを求めてでは無い。返そうと必死になり渡してくれる無償の礼があればいいんだ。というか、スミレを奴隷にしたら菜奈に殺されるのは目に見えているし……。




「最近、屋根の無い場所で寝続けていたんだ。少し先に多くの魔物がいる安心出来ない状況、久し振りに心から休みたいって思ったんだよ。もしかして嫌だったかな」

「い、いえ! でも……私の家には何もありませんよ……?」

「問題無い。こう見えて腕っ節には自信があるからね。それに料理だって多少は出来ると先に言っておくよ」


 そうだな、まずはスミレの胃袋を掴んでやろう。

 スミレの胃袋を簡単に掴んだ俺の手料理が、あまり裕福では無いだろう舌を満足させるのだって難しくは無いはずだ。そのための調味料だって沢山ある訳だしな。


「まぁ、見ていてくれよ。住む空間を借りる分だけの礼はするつもりだ。大人の男を招き入れる事に抵抗はあるだろうけど……多少は許してくれないかな」

「それって……どういう意味ですか」

「うーん、男の子には色々とあるんだよ。例えば味付けの濃さとかね。男は馬鹿舌が多いから繊細な味付けは苦手なんだ」


 当たり前だけど中学生程度の子に手を出す気なんて少しも無い。ってか、何度も言うようだけど手を出した瞬間に菜奈の魔法で消し炭にされてしまうだろう。というか、その時にはウルも噛み付いてくるだろうし。


「他は……無いんですか」

「うーん、今のところは無いかな。もしかして有った方が良かったか」

「いえ……いえ、そうですよね。ボイドさんは優しい人だって……分かっていましたから」


 そう言うとスミレは顔を上げて笑った。

 別に少ししたら切れてしまう関係なんだ。そこに重点を置くつもりも無ければ、恨み言を残す気持ちだって無い。あるのはただひたすらにそんな人がいたな程度の思い出くらいだ。……でも、そうじゃない方が嬉しい気持ちも確かにある。


「一緒に住んでもいいかな、スミレ」

「……ボイドさんが良いのなら」

「じゃあ、交渉成立だね。それならっと」


 倉庫の中から毛布と枕を出す。

 何だったら関係が終わったらそのままスミレにあげてもいいけど、それだと恩を売りすぎてしまうか。ってから俺が使った後の枕なんて嫌だろうし、「加齢臭がして嫌!」みたいなね。ましてや、下手に他の村人から反感を買っても意味が無いだろう。


「これは……魔道具……?」

「こう見えて別の街で稼いでいたからな。この程度の魔道具なら幾らでも出せるよ」

「私って……凄い人に助けて貰ったんですね……」


 それは……間違ってはいないな。

 一応、異世界から来た転移者ですし。一応、女神から直々に話をされた人間ですし。……まぁ、好き好んでそんな状況を手に入れた訳では無いんだけどな。不平不満が無いとは言わないけど、感謝の気持ちが無いわけでも無い。


「一先ず、もうそろそろで陽が落ちるだろう。良かったら一緒にご飯を食べないか。俺の手料理でよければ作らせてもらうよ」

「……いいんですか」

「スミレの舌に合うかは分からないけどね。それでもウルが食べる事に集中するくらいだから不味くは無いと思うよ」

「ガ、ガルゥ……!」


 うん、変に名前を出してごめんね。

 別にウルを馬鹿にするために言った訳では無いんだ。こういう時は自分達を下にして話した方が都合の良い時もあるからさ。個人的にはちょっとガッツいて食事をするウルも好きなんだよなぁ。アレが見れないのは癒しが一つ減るようなものだし。


「って事で、少し外に出ようか。……と、その前に一つだけ」

「これは……生活魔法ですか?」

「そうだよ、誰でも使えるような簡単な魔法だ」


 と言いながら、俺には才能が無かったけど。

 フィラは言っていた。俺に魔法の才能は欠片すらも無いって。それでも俺はこうして魔法を行使出来ている。どうして出来ているのか……言わずもがな、ガチャという異質な存在が影響しているのだろう。


 俺が言うのも何だけど剣術の才能は人並み程度にあると思っている。それはグランが認めてくれたからだ。そして人並み以上の発想力もあるのだろう。というか、無いと新島と互角で戦えはしなかっただろうし……お互いにチートがあったとしてもね。


「……ボイドさんは魔法が使えるんですか」

「風、土、生活……この三つは使えるかな」

「そう、ですか……」


 うんうん、教えて欲しいんですね。

 そういう顔をして本音を口に出来ないのはヤマトナデシコを感じられて良いですが、現代では求められていない遠慮ですよ。……なんて、日本人でもなければ、文化がまるで違うスミレに言うのもおかしな話だ。


「二日に一度、俺達は休みを取るって約束をしているんだ。毎日毎日、戦闘に身を置いていては心身共に疲れてしまうからね。その休みの日に頼み事があるのなら聞かなくは無いかな」

「それ、って……」

「魔法を練習したいんだろ。その歳にもなれば魔物と戦えるようになっておいて困る事は無いだろうからさ。他の事も練習出来るって言うのなら教えてあげるよ」


 スミレの顔が晴れやかになった。

 願いが叶ってよかったね……俺としては教え方とかは分からないんだけどさ。いや、フィラのやり方を真似れば幾らかは教えられるのかもしれないか。本音を言えば書庫の本を幾つか持ってきたいけど、そこら辺は口頭で伝えるしかないよなぁ。


「俺は……そうだね、君に弓と魔法を教えよう。そこに簡単な短剣術でも教えれば今回のような事は起こらなくなるだろうからさ」

「……いいのですか」

「これはね、インプットとアウトプットというものなんだ。簡単に言えば教える事で俺の中にある知識をより定着させていく行為でもある。つまり、俺にもスミレにも利があるんだよ」


 そう、これはフィラの教えを定着させるためにやるのと何ら変わりない。だから……恩を売るとは言えないだろうなぁ。いや、スミレからしたら恩に感じるのかもしれないだろうけど俺はそう思えはしない。


「鍛錬は生易しくないぞ。それでもやるかい」

「……ボイドさんの優しさを無碍にはしません」


 覚悟はある、と……なら、教えますか。

 本音を言えば俺の教えがどこまで通じるのかも知りたいからな。菜奈を救った後でスミレの村でスローライフを送るのも悪くは無いだろう。そこで考えるべき事は他国からの侵略において身を守る力と言ってもいい。


「教える時の俺は優しくないよ。……でも、やる気があるのなら間違いなく乗り越えられるはずだ。その分の褒美も渡すつもりだからね」

「褒美だなんて……貰えませんよ」

「俺の要らない物をあげるだけだ。それに俺の求める基準までスミレが到達出来るとは言い切れないからな」


 それは……間違いなく嘘だと言える。

 目の前の少女は紛れも無く天才だ。俺や新島のような作られた天才ではなく、本当の意味での天才と言ってもいい。俺が見抜いたのではなく幸運がそう言っているんだ。信じない訳にはいかないだろう。


「って、話が逸れたね。夕食の準備でもしようか。最初の訓練は夕食後にでも……明日は休みにするつもりだったから朝食後にでも鍛錬の時間にしよう」

「……が、頑張りまする!」

「うん、頑張ろう」


 噛んだ姿も可愛いな……って、駄目だ駄目だ。

 俺には菜奈という世界一プリティーで優しくて愛らしい彼女がいる。将来を誓い合った絶対に俺を裏切らないと思える存在でもあるんだ。どこぞのYから始まる褐色ツインテールとは違う。いや、スミレも同じくらい可愛らしいんだけど……。


「ど、どうかしましたか?」

「い、いや、なんでもないさ」


 強く頬を叩いて考えを改めておいた。

 俺には菜奈がいる、ウルがいる……他に何かを作る理由は無いだろう。それ以上は本気で二人に殺されるからやめておかないと。本当に殺されてしまう前に……!

スミレの奴隷発言の意図ですが『この世界においては貧困層の子供達は理由を付けて誘拐される事が多くあります。スミレ視点で言えば主人公は人並み以上に裕福な貴族位の者に見えたため』このような発言をしています。後にスミレ視点の閑話を書く予定なので詳しくはそこで書くと思います。


次回辺り、恐らくスミレとのイチャイチャ回が書かれると思います。よければブックマークや評価のほど、よろしくお願いします。もちろん、いいね等も書く励みになりますので続きが気になる方は是非に……。

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