少女との契約
「ん?
朝か……」
私は朝日と共に起きた。
どうやら木にもたれかかったまま寝てしまったらしい。
「昨夜のあれは夢だったか……」
別に悲しくはない。
夢とはいえ、尊敬する王に会えたのだ。
私はそれだけで十分だ。
「さて、 これからどうしようか……」
当分の目的は賢者の石探しだろう。
だが、土地勘もないこの大地で探すのは骨が折れる。
「仕方ない。
どこか街道がないか見て行こう」
人間はいたんだ。
どこかで街を作って暮らしているはずだ。
私は歩く。
まだ魔力は回復しきっていない。
しばらくは光の弓は使えない。
道中食べれそうな魔物を狩っていく。
もちろん私の短剣では毒で肉が腐ってしまうので、絞殺した。
途中私は山賊が何かを・・・
あれは・・・
馬車?
私は見たことは無いが、豪華な馬車を襲っていた。
手練れの山賊なのか、護衛は次々と倒されていった。
ちょうどいい。
あの山賊から助けて、街まで案内してもらおう。
私はヒドラの短剣を取り出す。
そして足に魔力を溜め、一気に吐き出した。
「よし!
中の奴を引っ張り出せ!
殺しっゴフッ!」
「な!
お頭!!」
山賊の頭らしき男の首を斬り落とす。
それは刹那の瞬間。
山賊は何が起きたのか分からなかった。
そして目の前から歩いてくる白髪の男。
綺麗で青い目が黒い服装にとても映えていた。
「貴様が!!
貴様がお頭を殺したのか!!」
「お前たちに恨みはない。
そして、 正義の味方を気取って殺したわけでも無い。」
そう。
ただ自分の目的のために……
それならば、私は鬼にもなる。
「しねぇぇぇぇぇ!!」
相手は10人。
一人は弓。
4人は槍。
5人は剣。
この戦いでこの世界の人間の力量をある程度知れる。
「さぁ。
私についてこれるか?」
私は目で追えないほどのスピードを出す。
まずは遠距離。
「ひっ!
助けっ」
首を斬る。
せめて痛みは感じさせない。
そして次は槍兵。
「おら!」
一人が隙をついて槍を突く。
(私も疲れているな。
こんな輩に隙を見せるなんて……)
私はその槍を受け流し、そいつの後ろへ回る。
そして首の動脈を斬る。
周りの槍兵が近づいてくる。
一人、また一人と切り捨てた。
さすがはヒドラの短剣だ。
刃が欠けてもすぐに再生する。
次は剣を持つ者達。
でたらめに振り回している。
どうやらかなり戦意を削いだらしい。
足に魔力を込める。
そして剣士たちの間を一気に走り抜けた。
首が一気に落ちる。
「はぁ。
体が怠い」
猛烈な倦怠感。
魔力を少し消費しただけで……
この世界の人間はあまり強くない。
私のような凡人でさへ勝つことが容易い。
だが油断はできない。
いつの世界も、特別なものは存在するのだ。
「うがぁああ!」
「は!
すまない」
急所を外していた。
毒が体を腐食させている。
「未熟な私を赦せ」
私は心臓を一突きした。
苦しんでいた者は眠る。
これで山賊退治は終わった。
私は馬車を見た。
護衛は全員殺された。
馬車からは心音が聞こえる。
「誰かいるな」
私は馬車を開けて中を見る。
中にはドレスを着た17くらいの少女だった。
泣いている。
「おい。
もう山賊はいないぞ」
少女は目を開ける。
金髪の髪がきれいなお嬢さんだ。
「お嬢さん。
もう大丈夫だ。
私が君を助けたぞ」
「う、う……」
「ん?」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「なっ!」
大泣きしてしまった。
どうしよう……
「な!
おい、 落ち着いてくれ」
どうにか落ち着かせてこちらの要望を聞いてもらわねば。
「まぁ、 いい。
今は落ち着くまで待つ。
存分に泣き給え」
それからしばらく少女は泣いていた。
しかもこっちを向いてもらえない。
どうしたものか……
かれこれ30分ほどああしているぞ。
私は何とか恐怖心を解いてもらおうと話しかけ続ける。
「おい。
いつまでもそうしている場合ではあるまい。
出来ればこちらの問いに答えてほしいのだが……」
少女は顔を上げてくれた。
「問いって何ですか?
あなたは悪いお方じゃないのですか?」
「いや違う。
というか助けたのだが……」
少女は涙をぬぐう。
その目は綺麗な緑の目だった。
「グスッ……
それで!
なにを私に聞きたかったのですか?」
まだ警戒しているようだが、気にせず話す。
「いや。
ここらへんで街がないものかと思ってね。
恥ずかしながら、 私は今無一文でね。
働いて資金を蓄えたいのさ」
「そうですか。
残念ですが。
近くには街も村もありません。
ですがここからかなり先の海を出て、 街道を歩いて行けば大きな国があります。
わたくしもそこへ行くはずでした」
「では、 その道中で襲われたと?
海には港などはないのかい?」
「はい。 残念ながら……
ですから私は船を雇っていました。
しかし、 馬車がこうなってしまってはもう……」
この世界に来たばかりであまり分からぬことが多いが、どうやらあまり平和ではないらしい。
このお嬢さんの馬車の馬は殺されてしまっている。
もう動くことはあるまい。
つまり待ち合わせの時間には間に合わないということか……
「そうか。
では、 君に一つ提案なのだが?」
「はい何でしょう?」
「私はその街への道は知らない。
君はその街まで行くのに歩きで一人。
道中でまた襲われるかもしれない。
ならば、 私が道中まで君の護衛をしながら、 君を送り届けよう。
どうだ?
悪くない話だろう?」
少女は少し考える。
そして口を開いた。
「そうですね。
あなたはお優しい人のようですし……
いいでしょう。
その話乗ります。
私が道を案内し、 あなたが私を護衛する。
この契約でよろしいですね?」
「ああ。
その通りだ」
私は手を差し出し名乗る。
「レヴェルタスだ」
少女は手を握り、握手する。
「フレイです。
よろしくお願いします」