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異世界転校生〜同級生は6千歳!不老の異世界で永遠の快適学園ライフ!  作者: セロクナ
第一話:異世界転校生と“Z組”の仲間たち
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迷宮探索

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 再び、3人は“迷宮”にやって来ていた。今度は1500年層までの進入許可を貰っている。諸事情を話すと、店主はあっさりと許可をくれた。1400年層の“固有種”と出くわして、無事に帰って来られた事が大きな理由だ、と店主は言った。


「そもそも、“1500年”って何の事?」

「“迷宮”は時間に合わせて段々規模が拡大していくもので、1500年ってのは今から1500年前に作られた辺り、って意味だ」

「そんなに前のお墓なのか……」


 “ニホン”にあるもので例えるなら、古墳に近いものだ。


「当然奥に行けば行くほど魔法生物全体の力量が上がっていく。

たまに崖があるだろ?ああいう所から落下するのは本当に危険なんだ」


 ヴァイはしみじみと言った。


「ああ、そういえばヴァイが“賢者”目指し始めたのはそっからだったっけ」

「……そうだったな」


 1500年層まで進む長い道のりの中で、ヴァイは身の上話をした。


「俺は……その、王子とか言われてるけど、将来政界に入るとか、そういう気は無いんだ。

……“Z組”に鼻につく完璧気取りの女子、いるだろ?」

「“Z組”の女子……?」


 ヒカルはロアを見る。ロアは首を横にぶんぶんと振る。

 ヒカルの知る“Z組”のクラスメイトの女子は、ロアの他にはあと1人だ。


「……あの金髪の姉上さん?」

「そう、そいつ。

あれは“羽化”を迎えてないだけで他はみんな完璧なんだ。

次の王になるって、もう決まってるようなもの。

だから、俺は期待されて無いんだ」


 ヴァイの口調の中には、諦めと悲しみが混ざっていた。


「だったら、魔法使いとして成長するしかない。

その為に、毎日のように“迷宮”に通ったんだ。

魔法を鍛えるのは割と性に合っててさ、それなりに強くなったんだぜ?

だけど……そこで慢心したのがダメだったんだろうな。

ある日、ちょっと遠出して、別の“迷宮”に行ってみたんだ。そしたら、慣れない場所で足を踏み外して、崖下に真っ逆さま。

その時はわからなかったけど、後で話を聞くに3000年層まで落ちたらしい。

当然、魔物に魔法は効かないわ、墓荒らし用のトラップに引っかかるわ、散々だった。おまけに初見の“迷宮”だったから正規ルートもわからなくて。

俺はここで死ぬんだろうな、って本気で思った」


 ヒカルは、自分の常識に擦り合わせて、疑問を持った。


「救援隊とかは期待しなかったの?」

「……姉貴サマなら国総出で探すだろうけど、俺が遭難しても程の良い口減らしになるだけだ」

「そんな……同じ家族なのに」

「王位継承権ってのも良いもんじゃねぇ。野心を持った弟が兄を暗殺なんて、よくある話だ。

見捨てるだけで都合良く処分出来るなら、誰だってそうするさ。

事実、なんとかかんとか帰った時、救援隊が組織されるような話は噂すら聞かなかった。

俺を助けてくれたのは、“賢者”って呼ばれてる人だった。ウィローみたいな名ばかりじゃない。本当の、本物の、“賢者”だった」


 ヴァイの語り口が生き生きとし始めたのを、ヒカルは明確に感じた。


「その“賢者”は俺を守ってくれたし、怪我を治してくれた。“迷宮”での仕事があるはずなのに、入り口近くまで送ってくれて……

俺は、こういう大人になりたいって思ったんだ。それで、あの“賢者”に感謝を返したい。

……“賢者”は俺を助けてくれたのに、名前も顔も教えなかったんだ。だから、どこの誰かもわからない」

「“迷宮”の入り口で、名前を登録するはずじゃ?」

「そこのカウンターで聞いたら、“賢者”の名義で入った奴が1人いた。

“賢者”には、顔も名前もわからない……一般に知られていない人間も多くいる。その中の1人だったんだと思う。

……だから、俺は“賢者”になりたいって思ったんだ」

「そうだったんだ……」


 ヴァイの身の上を聞くと、ヒカルはウィローの様子にヴァイが激昂したのも理解できるような気がした。


「絶対ウィローより先にマリーを見つけよう」

「ああ、そうだな」


 ヒカルは決意を新たにし、歩を進めた。


「ところで……だいぶ道を過ぎたけど、行き先とか帰り道とか大丈夫?」

「平気平気。言ったろ、俺はこの“迷宮”に何度も来てるって。2000年層ぐらいまでだったら、目瞑っても行ける」

「油断して崖から落ちても知らないよ?

流石の私でも助けに行けないからね」

「阿呆じゃないんだ、同じ罠は踏まない」


 角を曲がると、大広間のような空間があった。“迷宮”になる前の墓では、祭壇のような場所だったようだ。

 しかし、その空間は滅茶苦茶に荒らされていた。

 壁はヒビが入る程壊され、あちこちの柱は折れている。また、壁や天井には、無数の焼け焦げがある。どの破壊跡も比較的新しいものだ。


「あのラガルドとかいう“固有種”の仕業か」


 ロアは足元に落ちていた赤い鱗のカケラを拾う。オオトカゲの胴体と同じ色合いだ。


「本当あいつ何なんだろ。“固有種”とはいえ、こんなに暴れるなんて……ヤバい魔物でも喰ったかな」

「損傷とか鱗の劣化具合とかからして、起きたのはここ1ヶ月内って感じかな。また出くわしてもマズいし、早くズラかろう」

「ああ、そうだな」


 ヒカル達は更に奥に進む。道中、魔物が数匹現れたが、苦戦する程ではなかった。


「魔法生物の数は正常って感じだな…おかしくなってるのはあのラガルドだけか」

「こういうこと、頻繁にあるの?」

「滅多に無いけど……原因はなんとなくわかる。ヤマ先生も言ってたろ?ラガルドは食べ物を丸呑みにする事が多い。それも、相手が生きたまま食らう事もある」

「ああ……そんな説明もあったね」


 ヒカルは図鑑の絵やヤマの説明を必死に思い出す。集中しても、短期間で覚えられるものにはどうしても限りがある。


「だから、トドメ刺し損ねた魔物とかも丸呑みにしちゃうんだ。

大概は胃液で存在限界、5センチ以下の大きさまで溶かすから問題ないんだけど、たまに仕留め損なう時があって、そういう時苦しくて暴れ出すんだ」

「寄生虫で胃痛みたいな」

「そうそう、言われてみればそんな感じ」


 ヤマが説明した所によると、オオトカゲは、その巨体と必殺技の光線の為に多大なエネルギーを必要とする魔獣だ。そのエネルギーの補填として、多くの魔法生物を喰らう事が必須なのだという。


「2人とも、こっちが目的のルートだよ」


 談義に夢中だったヒカルとヴァイは、道を間違えそうになっていた。ロアは手元の簡易地図を見て呼び止める。

 いつの間にか、一行は1500年層まで潜ってきていた。


「この“迷宮”は目を瞑っても歩けるんじゃなかったの?」

「そうヴァイを煽らないで。

こっから先は、多分マリーしか知らないルートだから」


 ロアはツタが生い茂った壁を指差した。ツタのあちこちからカラフルなキノコが生え、とても道があるとは思えない。

 ヒカルは引っ張ってみたが、びくともしなかった。これは道には見えない。


「マリーのメモによると、ここの壁は植物型の魔獣なんだって」


 ロアは懐から小瓶を取り出した。


「それは?」

「毒」


 言うが早いか、ロアはその小瓶の中身をツタにぶちまけた。

 ツタはあっという間に脇に逸れて道を作る。


「よし。それじゃ、先行こう!」

「これじゃ、俺でも知らんわけだ……

ロアが先頭を行ってくれ。俺はしんがりをやるから」

「そう警戒しなくても大した魔物は出てこないとは思うけど……」

「でもロアだって知らない区域だろ」

「一理ある」


 細道を一行は列になって進んだ。他の魔法生物に出くわす事もなく、狭い道の先で広い空間に出た。


「うわあ……!」


 思わず、誰ともなく歓声を上げた。

 そこは、自然の湧水が作り出した大きな池がある洞窟だった。溢れた水は端で滝となり、池の底や濡れた床にはヒカリゴケが生え、幻想的な光景と言って相応しい。


「マリーは、ここを目指してたんだ」

「目指してた……というよりは、ここで消えた、って言うのが正しいかな」


 ロアは洞窟の隅を指差す。ボロボロになった布切れの塊と共に、おびただしい血痕が残されていた。骨のような大きな塊は遺っていないが、服だったもののカケラは残されている。


「血痕…じゃあ、マリーは」

「この血の量じゃ助からない。

変色の仕方から見てかなり時間が経過してる。多分去年…行方不明になった時期だと思う」


 ロアは冷静に血の跡を観察する。ヒカルは見ていられなくなって、布切れの塊の方に視線を向けた。

 布切れの塊はどうやらカバンだったようで、中には濡れた紙や壊れたインク壺が入っている。


「これを持って帰れば、帰還条件として満たされると思う。これで、依頼は達成、って感じかな」

「残る問題は、何でマリーは死んだのかと、何故死体がないってことじゃないかな」

「それは……まぁ、問題ではあるけど。私達が調べるべき事じゃないような……」


 ヒカルは周囲を調べた。よく見ると、周囲には瓦礫が散らばっている。それは落石のように見えたが、あちこちにヒカリゴケが生えている所を見ると直近のものではない。

 また、割れた石に付着した血液やヒカリゴケは面によって不自然に途切れている。まるで、血液が乾き切った後に割れたかのようだ。


「落石が致命傷に見えるけれど……」

「獣に喰われた痕は見えないな。もしそうなら、もうちょっと遺品が散るはずだ」


 その時、獣の叫ぶ声が響き渡る。続いて、上の方から大きな足音が近付く。

 3人が振り返ると、3人が入ってきた入り口の上方に別の洞窟への入り口と、見覚えのある、赤いオオトカゲの姿が見えた。

 ずしん、ずしんと足音が洞窟中に響くたび、天井からパラパラと土が落ちる。


「ここ、あいつの巣だったのか!」

「ガァァァァ!!」


 オオトカゲは光線を放ち、壁や天井を焼く。すると、耐えきれなくなった天井の一部が崩れ落ちた。

 ヒカルは理解する。

 マリーは、こうやって洞窟の隅に追い詰められて、命を落としたのだ。


「グォォォオオオ!!!」


 オオトカゲは怒り狂った咆哮を上げる。


「ど、ど、どうしよう!?」

「んなもん決まってんだろ!虫の居所悪い奴まともに相手できっか!逃げるぞ!」


 ヴァイはヒカルの腕を掴み、走り出す。

 そして、池の端から繋がる、滝の中に飛び込んだ。

ラガルド種

ファイヤ国領土サッピロス山脈に多く生息するトカゲの一種。

背中の結晶は魔法使いの杖に使われるものと同じ材質であり、魔法を増幅させる力がある。

増幅された炎魔法は鉄や岩であっても溶かしてしまう。


グランデ・ヴォルガン・ファイヤ・ラガルド

ガネット隧道1400年層〜1500年層に生息する“固有種”。推定年齢300歳。

聴力・脚力・魔力もかなりの驚異だが、何よりタフである事が特徴の個体。心臓を失っても甦ったという記録が残っている。

知能が低く、よく獲物を瓦礫の下に埋めてしまうのが欠点。もっと賢ければガネット隧道の主になるポテンシャルがあった。

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