男爵令息は見た! 放課後の廊下も喧騒は絶えない
放課後になって少しぶらつて帰ろう。
そんな風に適当に過ごしていると大きな話し声が聞こえていた。
マーガレットさんと彼女瓜二つの青年がいた。
確か王子の取り巻きの一人だった気がする。
「姉さんは悔しくないのか!」
やっぱり姉弟だったのか。恐らく双子?だろう。
でもあいつって婚約破棄の時はアホの方についてたよな?
「いやですわ、リーガル様。私は天涯孤独の身になった平民。貴方のような素敵な弟はいないですわ」
「くっ、そんな簡単に割り切れるか!そもそも今回おかしいの王子だろ!なんで姉さんだけこんな仕打ちであいつはお咎め無しなんだよ」
「ロイエル殿下をあいつ呼ばわりは学園といえど不敬になります」
あれ?じゃあなんで弟君はマーガレットさんの援護に回らなかったんだろう。
あの様子なら証拠もあるんだろう。
「………それに密告されると貴方の身が危ないですわ」
「?!」
あ、やば!ばれてた!
弟君は俺を殺さんというほどの殺気を俺に向ける。
俺はしぶしぶ二人のそばへと近寄る。
「………盗み聞きは感心しないな」
「すいません、すぐ帰るつもりだったんですが」
「あら?そうでしたの。昨日から熱い視線を向けて戴いていたのでてっきり」
「?!おい、おまえ。姉さんに手を出すつもりか」
「いやいや!誤解ですよ。マーガレットさんを見て、別の事考えていたんです」
「あぁ?!どういう意味ですか」
「いえ、デイジー嬢、彼女の為にマーガレットさんとの婚約破棄をした」
「………」
「なんで、リーガルさんは援護しなかったのですか」
「それは……」
「僭越ながら、彼女の方が魅力的だったのでしょう」
「姉さん!確かに彼女は魅力的だ。けど婚約破棄することしか聞いてなかったんだ!」
あー、公爵家から勘当は計算外だったか。まぁ、明らかに重い処分だもんな。
「リーガルさんには悪いが、俺はマーガレットさんの方がいい女性だと感じたが」
「?!やっぱり狙っているのか!」
「あー、語弊がありますね。単に僕がデイジーさんが苦手なんです。あの眼が少し」
「ふーん」
こいつ、全然信じてねぇな、おい。
いやほんと、デイジーさん綺麗なんだけどね?こう嫌悪感が先に出てくるんだよ。
「まぁデイジー様の事は置いておきましょう。リーガル様はもう弟ではないのです。これから公爵家の人間として頑張ってくださいね。それとすいません、貴方は男爵様でしたね。申し訳ないのですがお名前をお伺いしてよろしいですか」
「あぁ、すいません。自己紹介がまだでした。ドラセナ・B・ラインシア。しがない男爵三男子です」
「マーガレットです。しがない平民です」
「……リーガル・D・エマールだ」
マーガレットさん気になるなー、どうしてここまで割り切れるのか。
この人があの王子にあそこまで執着してたのも気になる。
よし、聞いてみるか。
「マーガレットさん、不躾ですが明日お茶会などいかがでしょう」
あっ、弟君の殺気がやばい。心なしか黒い靄みたいなのでてる。
つか、おまえめっちゃマーガレットさん好きだな!
「お受けいたしますわ」
「俺もいていく」
「いや、別にリーガルさんが来るほどの事はないですよ」
「姉さんに何をするきだ」
「うーん、王子の事ですかね。俺、取り入るの遅れたので、今からでも情報持った方がいいかと思って」
「ほかの奴に聞けばいい、二人で聞く必要もない」
「まぁ、マーガレットさんしか知らないこともあると思う。今なら王子の邪魔が入らない」
「私はそこまで王子のこと知りませんよ」
「あと、恋愛相談です。彼女なら誰にも漏らさないです」
「私は王子との元婚約者、お役に立てるか怪しいですよ」
「だからです。俺は小心者なので他の人には知れ渡って欲しくない。そして話を何も知らない点から聞ける」
「なるほど、人の恋路には邪魔できないな」
「…………なるほど、やはり二人で話す方が良いでしょう。明日の放課後でよろしいですか」
こうして、俺はマーガレットさんと二人きりで話すことになった。
しかし、弟君のせいで俺の言いたいことが漏れたのは少し痛いな。
まぁ、どっちにしろ明日が楽しみだ。