なんだか様子がおかしいマリーさん
―おかしいな―
「マーガレットさん、今日お茶会しませんか」
「ごめんなさい、今日は本の続きを読むので帰らせてもらませんか」
ここ二三日ほどマリーさんの様子が変だ。
話しかけようとすると距離を取られる。
目が合うと逸らされる。
ふむ、なるほど。
奴に喧嘩を売られたみたいだ。
何があったかは知らないがここまで腹立つのは婚約破棄騒動以来だ。
そして情報を集めることにした。
あの日から一週間でわかったことフリード・V・ロードレットについて。
・一つ下にミリア・E・リナールという伯爵令嬢と婚約している。
・殿下に並ぶほどのルックスである。
・伯爵以上の学友が多いらしい。
・夜に寮に帰ってくることがある。
・二週間後に子爵以下のパーティーを開くそうだ。
以上である。
よろしい。戦争だ。
これからはクズと呼ぶことにした。
ちなみに今、王子とビッチことデイジーさんとサロンにいる。
「どうしたんだ、急にフリードの事を知りたいなんて」
「いえいえ、学友の事を知りたいのは当然じゃないですか。でも、彼は子爵より下の人と話すのを嫌うそうなので仲の良かったロイエル王子とデイジーさんに聞こうと」
「ロイエルでいい。……そうだな女性に優しかったな」
「そうですね。フリード様は女性に対しては優しかったと思いますね。私は特によくしてもらえましたわ」
「婚約者がいるのにですか?」
「あぁ、マーガレットにも話しかけていたと思うぞ」
「………ちなみに、最近はどんな感じですか」
「ふむ、あまり話すことが無くなったと思う。フリードも愛想をつかされぬように頑張ってるのかもしれんな」
―だとよかったんだけどなー。―
話を聞いてやっぱり手を打つべきなのだと改めて判断する。
「………ところで、ロイエル。フリードが子爵以下の者でパーティをするのは知っていますか」
「あぁ、人月に一回は開いているな。最初に呼ばれたよ。そこでデイジーと出会ったから。なんでも言いたいことを言える場を作ろうとか何とか言ってた気がする」
「デイジーさんは今回誘われましたか」
「えぇ、誘われていますね。ただ、……………ロイエル様には来てもらいたくなさそうでしたが」
「うむ、今回はパーティに参加するのはやめた方がいいかもと言われたな」
「………理由は聞きましたか」
「いや?前回もそうだったからあまり気にしていなかったな」
「ならば今回無理にでも参加してほしい。あと、もう一人の令嬢のエスコートもお願いしたい」
「お安い御用だ。しかし、いったい誰を?」
「名前は明かせませんが、ロイエルには害がない人だと断言します」
「ドラセナは来ないのか?」
「誘われていますせんので。そしておそらく………」
「まぁ、詮索はしないでおこう。デイジーもいいか?」
「………なるほど、わかりました。謹んで受けましょう」
さて、これでまずは一手を打った。
令嬢への手紙ももう出してある。
もう打てる手打った。
そして、パーティの前日になっていた。
部屋で明日の準備をしよう。
あれから、マリーさんとは一切話をできていない。
悔しいが仕方ない。
明日に備えて………
コンコンコンッ。
ノックの音がする。
ぼくは不用心にもあけてしまった。
「はい、だれで…………ぅぐ!」
「おっと、騒がないでくれよ?こっちも手荒な真似はしたくないんだ」
やはり、自分は物語の主人公なんかじゃないんだなと痛感した。
ここで意識が途切れしてしまったのだから。
次は王子視点で話がすすみます。