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唐揚げにレモンをかけたらパーティーを追放された  作者: 黒茶色のねこ
唐揚げとレモン
9/9

プロローグB

「いいですかーみなさん!

 たい焼きはー!しっぽから食べる方がおいしーのです!」


 冒険者たちで賑わう酒場の喧騒の中。

 その場に似つかわしくない幼女が酒の入ったグラスを掲げて宣言する。

 同じテーブルについている女性4人も、身なりからいずれも冒険者だと分かる。


「まーた始まった、そんなのどちらから食べても変わるわけないじゃない」


 セクシーな鎧からバストが溢れそうな女剣士が、やれやれといった様子で相手をする。


「『頭から食べたら可愛そうですぅ~』とか抜かしたら張っ倒すぞ」


 うっすらと割れた腹筋が健康的な女武闘家が、幼女の声真似をしてからかう。

 酔いが回って目が座った幼女は、眉をひそめて反論する。


「頭の方にたくさん餡が詰まってるから…。

 最後までおいしく食べれるのです!」


「でもそれって、美味しいところを最初に食べたいか、最後に残したいかで変わってきませんか?」


 深いスリットから覗く太腿が眩しい女僧侶が指摘しながら、ろれつの回らなくなっている幼女を介抱している。


 そんな彼女たちの様子を端から見ていた冒険者の大男が声をかけてきた。


「おい嬢ちゃんたち、子供にそんなに沢山酒を飲ませちゃ駄目だろ」


「あー、お構い無く。

 この子ハーフドワーフなんで。

 こう見えて15歳の立派な成人です」


 ドワーフは穴蔵のような隠れ里から滅多に出て来ない珍しい種族だ。

 男女ともに低身長なのが特徴で、男は髭を蓄えた小人のように見える。

 対して女はというと、外見に際立った変化が現れにくく成人しても子供のように見えるのだ。

 ドワーフとエルフのハーフであるこの幼女にもその特徴は色濃く出ている。


「たい焼きの向きとかそんな細かい事ばかり気にしてると行き遅れるわよ」


「そんなこと無いです!いつかわたしの前に……。

 背が高くてたいやきを尻尾から食べる王子様があらわれてくれます!」


「アンタに寄ってくる男はただでさえロリコンしかいないのに、選り好みしてられる立場かよ」


「はいはい二人共ストップストップ。

 これ以上虐めたらまた泣いちゃいますから。

 それに、確かに少し飲ませすぎですよ」


「飲ませすぎと言われても、まだコップ半分だぞ」


「ちびっ子だからすぐ酒が回るんだろ」


「わたくしはチビじゃないれす!」


 意地になった幼女は両手でグラスを呷る。

 小さな口でごくごくと、一気飲みと言うには焦れったいが、見事にグラスを空にして見せた。

 しかしその目は虚ろで焦点は合っておらず、ゆらゆらと体を揺らしてから派手な音を立てて机に突っ伏した。


「ドワーフはお酒好きの種族ってイメージでしたけど、個人差があるのかしら?」


「きっとわたくしの内面を……。

 大人なわたくしを……。

 好きになってくれるひとが……」


 気持ちよさそうに寝息を立てる幼女を、やれやれといった様子の冒険者3人に見守るのであった。




 翌日の宿場町にある広場、仲間を前に平謝りをする幼女がいた。

 背負った鞄の中身がひっくり返るほど深々と頭を下げて謝罪する。


「あうぅ…、昨日はとんだご迷惑をおかけしました!」


「いやいや、別に構わないよ。

 飲ませたのはこっちだしね」


「宿まで担いだのはアタシなんだから、感謝しろよちびっ子」


「でも暫くはお酒禁止ですからね?」


「ううぅ〜〜」


 体が小さい事を誂われたので普段なら食って掛かる所なのだ。

 しかし失態を演じた身分なので幼女は何も言い返せず唸るしかない。


 彼女たちは渡りの冒険者だ。

 これから次の町に向かう予定だが、道中でこなせる依頼を探しにギルドに立ち寄るところだった。

 幼女は三人の後ろについて歩きながら悩んでいた。

 冒険に出たいと言い出したのは自分だが、人並みに恋への憧れも持っている。

 三人の仲間はいく先々で異性と親密な関係を築いているのに、いつも自分だけ宿で留守番だ。


 ふと派手な金髪の青年が目に留まった。

 大通りのオープンテラスに座る長身の青年は、東の国の刀剣を二本も腰に差している。

 手に持っているのはギルドの発行する紙。どうやらパーティー募集中らしい青年だ。


 じっと見つめるのは失礼だとも思ったが、目が離せずに居た。

 時間も音も止まって、吹き抜ける風だけが動いているような感覚。

 案の定気怠そうな青年の瞳と目が合ってしまうが、そんなこと今はどうでも良かった。


 青年は、たい焼きを尻尾から食べていた。



創作活動を進めるにあたり、避けては通れないお話を作る能力。

苦手意識のある分野なのですが、克服したい。

そう思って作り始めたお話です。

そのため稚拙で読みにくい文章だったかもしれません。

ここまで読んで頂きました皆様にはひたすら感謝です。


この話まででエピソードは一区切りとなりますが、

「二人のこれからの冒険を見てみたい」

そう感じてもらえるようにお話を考えてみたつもりです。

実際そう感じてくださる方が一人でもいると嬉しいです。


そしてわたしも、書いていくうちに

続きも書いてみたいと思うようになりました。


書き溜めているストックを使い切ってしまいましたので

しばらく間が開くかと思いますが、

また続きを投稿する事があれば読んで頂けると幸いです。


ご感想なども頂けますと、とても嬉しく思います。

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