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いつも通りが異常な件  作者: 遊佐環ライン
5/5

我(探索者)、不審者発見ス!

遅くなってすみませんでした

次回は11月中にかけたらいいなー(白目)

ある日の帝国ーーーー。

「皇帝陛下、本当になさるおつもりですか!?」

ある者が椅子に深々と座り、威厳を示したような風貌をした男性に声をかける。

皇帝陛下と呼ばれた者は目を見開くと先程のものに対して言い返す。

「無論だ。これをせずしてあの者たちに勝てるはずもない」

現皇帝陛下であるグランツ・クロイナー・エルメロイは威厳のある声で臣下に向けて言い放つ。

グランツの言うあの者達とはフリーデン王国のシェーン達を指していた。

それは誰しも言わずとも分かっていることであった。

「ですがグランツ皇帝陛下、儀式をするにはあまりにも危険でございます」

臣下のひとりが怯えながら異を唱える。

そう、グランツがやろうとしているのはシェーンのやった召喚魔術に類似するものだった。

「くどい!我自らせずして何が王か。召喚魔術に長けた者たちもいるのだ失敗は有り得ない」

グランツは鋭い目を向けながら魔術の決行を告げる。

だが、この世に#必ず__・__#はありえない事をグランツはまだこの時点では知りえなかった。

「それでは、今宵に召喚魔術を行うとして問題は他にないか」

グランツは問い質すように臣下に聞いた。

するとある者が臣下の前に出る。

「畏れ多く、皇帝陛下・・・調査団に調査をさせている所ではございますがシェーン率いるフリーデン王国の他にも召喚魔術を行おうとしている国があるためそちらにも目を向けるべきかと」

「誰かと思えば貴様か・・・メリルよ。そうか、であれば魔術が成功した暁にはその国から取り込もうぞ!」

「はっ!それでは、そのように準備を進めておきます」

メリルと呼ばれた臣下は顔色を変えることなくローブを被ったままその場を後にする。

「他になにかある者はいるか?」

グランツは見渡しながら聴くが誰ひとりとして動くことは愚か声を挙げるものはいなかった。

その様子にグランツはため息をひとつ吐くと目を瞑る。

「異を唱える者は居ないとみて、此度はこれで終わりとする」

そう宣言すると臣下達は退室をしていく。

たった一人の臣下を除いて。

「陛下」

「なんだ、シェリルよ」

シェリルと呼ばれた臣下は退室していった臣下を後目に決意を持って進言した。

「本日に儀式をするにはあまりにも速すぎるかと」

「何故にだ」

グランツはシェリルの言葉を聞くためにきつ目の発言であったが問う。

「陛下、今の魔術体系では召喚魔術にかかる人数は二十を超えます。ですが今の魔術師は亜人を含めても二十人がやっとです。その状態で儀式を行っても失敗する可能性が大きいです」

「では、なにか・・・貴様はこの私に儀式をするなと言っておるのか?」

「そういう訳ではありません。せめて、今いる者たちの熟練させてですね」

「もう良い・・・そなたの言い分はわかった。下がれ」

「ははっ!」

シェリルは苦虫を噛み潰したような顔をしながらも平常どおりの仕草で退室をする。

「熟練か・・・・・・。シェリルよ、時は待ってくれないのだよ」

グランツはひとりボソッとつぶやくとあさっての方向を見る。

そして、椅子から立ち上がると一人椅子の横で立ち止まる。

「良いか、シェーンの動向を見逃すのではないぞ」

「御意に・・・」

ひとりでに言った言葉は誰かが気配を出して応えるとすぐに気配を消してグランツひとりになる。


 ☆


華鈴は地下に降り続けていた。

(にしても長い階段だな・・・)

そんなことを思いながら石造りの階段を降り続けて行く。

壁には等間隔で灯りがあったがそれでも階段は薄暗い。

華鈴が自分のペースで降り続けてからしばらくすると終わりが見えてきた。

(これでこの長い階段も終わりかな・・・)

華鈴はそんなことを思っていると人影が見えた。

(おっと・・・いわゆる、番人ってやつかな)

華鈴は息を潜めながらそう思うと牢番に見つからないように樽の近くに身を隠す。

「何が悲しくてこんな場所で惨めに居なくちゃいけねえんだよ!」

牢番は疲れたように言う。

「そう言うなよ。それがアンタの仕事やろ?」

牢獄に囚われている者は気休め程度の労いの言葉を言う。

「それは、そうだがよー・・・早く変わりたいぜ」

牢番は嘆くように言った。

「そう言うなよ、俺だって居たくて居てるわけじゃ無いんだからよ」

「そりゃ、そんな格好の奴は初めて見るからな・・・」

牢番はそう言うと物珍し気に見つめる。

牢番と会話をしている人物は遠い異国から来たのか、服装はわからなかったが華鈴は相当奇抜な衣装だろうと勝手に思い込んでいた。

「おい、お前そこで何をしている」

「やべ!?」

華鈴は己の置かれる立場を理解すると即座に頭を働かせる。

(どうする……どうやって黙らせる?)

そんなことを考えていると牢番は声を出した。

「なんだ、そこに誰か居るのか?」

「あぁ、この樽の辺りに何者かが居る」

「それならお前が見てくれないか?」

「はなからそのつもりだ」

牢番と男はそう会話すると男は華鈴に近づいた。

(そうか……こいつにはまだうちの姿を見たわけではないんだな……)

華鈴はそう考えると頭の中で今現在で最も親しみのある人材を思い浮かべる。

「確か、変身は……幻想に身を包め、#変身__メイコーバ__#!」

華鈴は思い出しながらそう口にするとみるみるうちに華鈴の姿はシェーンになっていく。

「これは!?シェーン陛下!!こんな所でなにを?」

シェーンに変装した華鈴は男の言葉に内心、安堵しながら口を開く。

「何、ちょっと不審人物のことが気になって見に来ただけよ」

「シェーン陛下……また、勝手に政務を放り投げて来ましたら俺……私共が怒られます」

華鈴の存在にいち早く気がついた男が口調を気にしながら言った。

そう、今目の前にいるのはシェーンに化けた華鈴とも知らずにだ。

「いつもの事よ……何より、すぐに迎えも来るでしょうから居させて?」

華鈴はシェーンの言葉のようにシェーンだったら言わないような言葉を言った。

(これでなんとかなるだろ……)

そう、華鈴が思っていると男は納得したように頷いた。

「それもそうですね、それでは……交代の時間なのでこれで」

男はそういうと牢番の者と少し会話をすると変わっていく。

「これはシェーン陛下……いらしてたんですね」

牢番もシェーンに変装した華鈴に一礼をするとそのまま通り過ぎる。

(こんなんで大丈夫なのかこの国は……?)

華鈴は今いる自分の国が大丈夫なのか心配になったらしく少し呆れ、そう思っていた。

そして笑顔でやり過ごしていると男は何やら椅子に座っていた。

華鈴はそんな男に近づく。

「そういえば、捕まっているのはこやつか?」

「はい、その通りです」

男は緊張気味に答える。

華鈴はその様子を気にもせず牢獄に近付き、その者を見る。

「奏・・・・・・?」

「ん?誰だ、あんた?」

華鈴は捕まっている者を見て、唖然したような声を出すと男はそのまんまな返答をする。

「貴様、このお方向かってその口はなんだ!!」

男は怒るように奏らしき男に言った。

「そんな事言われても俺は捕まっている身だしな・・・・・・」

「そんなことは関係ない」

二人が喧嘩腰になりそうな感じだったが華鈴が素っ気なく言い放つ。

「ですが!?」

「私のことは別に構わん。だが、お前のことはしっかりと教えてもらおうか」

華鈴はそういうと口角をあげる。

「それはそうと君、席を外してくれたまえ」

(こいつがいると奏と話が出来ないからな・・・)

華鈴はそう思っていると男に向けて言った。

「しかし、自分には牢番の仕事がありますので・・・・・・」

「今はこやつと私だけで話をしたいだけだ・・・それとも私の言うことが聞けないのか?」

華鈴は睨むように交代した牢番の男を冷たい目線が見貫く。

一言言葉を間違えれば殺すと言わんばかりの気迫だった。

「うっ・・・・・・」

男は汗を額から流しつつ後ろに一歩だけ避ける。

少しの静寂があったが男は諦めたのかため息を吐く。

むしろ、余計な力を抜いたというのが妥当だろう。

「かしこまりました。ですが階段上がってすぐのところにいますので、何かあればすぐお呼びください」

男は華鈴を見つつ言った。

「その時は頼りにしています」

華鈴も嬉しそうに男に笑顔を向ける。

そうならないと思っている華鈴と用心深い男が笑顔になる。

そして、男は華鈴に・・・・・・正確にはシェーンに変装した華鈴に一礼すると階段の方へ歩いて行く。

「さっきも聞いたけどお前は誰なんや?」

奏らしき男は華鈴に向かって言った。

「今は黙ってろ犯罪者、誰に口をきいている」

華鈴は男がまだ見えている状態だったので奏らしき男に冷たく言い放つ。

奏はそれを視線で悟ったのか諦めるように言って寝転がった。

「それはすみませんでしたね」

「さてっと、お前の問だが、私はこの国の主であるシェーンという者だ」

「主ってことはこの国のトップか」

「さよう」

「そんな、御国の王様がなんで牢屋に来てんだ?」

「わからぬか?お主に会いに来たんだよ・・・」

「なんじゃそりゃ、この国じゃ何もしていない無実の人間だぜ!俺は」

「だったら、なぜそんな格好で捕まっている奏さんよ」

華鈴は奏らしき男に不吉な笑みを浮かべながら言った。

「どうして、俺の名前を知っているんだよ」

「そりゃ、知り合いだからだよ」

「俺は王様の事はよく知らないんだが、シェーン様よ」

奏らしき・・・・・・いや、奏はシェーンに偽装している華鈴を見ながら言った。

華鈴は完全に牢番の男がいなくなったのを確認すると奏の方を見る。

「それで、もう一度聞こうか?お前は誰だよ」

奏は真剣な顔をしながら華鈴に問うた。

「見てわからない?知ってる人物だよ」

「わかるかよ!そんな姿でわかったら怖いわ!?」

奏ははっきりとそう言うと華鈴は少し大きい声で笑う。

「お前でも今のうちのことはわからんか・・・・・・あはははは」

それはもう大爆笑だった。

華鈴はお腹を片手で押さえるともう片方の手で牢屋を掴んだ。

「それで、誰なんだよ!お前は」

「だからうちだって言ってるだろ?」

「あのなー、それでわかったら・・・・・・苦労はしないって・・・・・・・・・うち?」

奏は華鈴の言葉にやっと気がついた。

華鈴が素の表情になっていることに。

そして、体も服装も徐々に変わっていった。

「お前、華鈴か?」

奏は恐る恐る指をさして聞いてきた。

「さっきからそうだって言ってるじゃん」

華鈴はさも当然かのように言い切る。

ちなみに華鈴が華鈴であることは華鈴自身しか知らないことで初見の人間には分かるはずもなかった。

「わかるかよ!そんなこと!!」

奏は盛大にツッコミを入れた。

「あははははははは・・・・・・!いひ・・・お腹痛い」

華鈴は再び笑いお腹を抱える。

華鈴が落ち着く間奏は静かに膝を抱えていた。

それは冷たいめで可哀想な子を見るかのように。


しばらく時間が経ち華鈴は笑い終わった。

「それはそうと・・・・・・」

華鈴は笑い終わったのか冷たい眼差しで見つめてきている奏に向かって声を出す。

「取り敢えず、そんなとこから出ろよ」

華鈴は当然かのようにそう言うと格子に触る。

それは材質を確認するかのようにゆっくりとだ。

「出れたら早々に出てるから」

「それならさっさと出な」

「だから出れたらとっくに出てるから!?」

奏は華鈴の言葉に突っ込みを入れる。

「しょうが無いな……それじゃ、ウチが開けてあげる」

「ソレってヤバくないか?」

「大丈夫だろう……多分」

華鈴はそう言うと格子の鍵の部分に触れる。

「やめておいた方が良いって」

奏はあくまでも華鈴のことを止めようと声を掛ける。

だが、華鈴はそれで止める事無く鍵をまじまじと見つめる。

「用はバレなきゃ大丈夫って事だろ……」

「その顔でそんな怖ろしい事言うなよ……」

奏は華鈴の顔をまじまじと見つめながら呆れた顔をする。

「っていうか……この鍵、アンタの技術で開けれるんじゃない?」

華鈴はそう言うと奏の方を向く。

一方、奏は満更でもなさそうにポリポリと人差し指で頬を掻いていた。

「それはそうだろ、南京錠だろ……俺に掛かれば一昔前の鍵なんて……鍵、なんて…………」

奏は頭に何かあるのかごそごそと漁っているが段々と顔を青くしていく。

「俺の合鍵がない!?」

そう言うとポケットというポケットの中を探す。

そして、更に顔を青くしていく。

「その様子だといつものクリップが何処かに逝ったな……」

「クリップじゃない!!」

奏は怒りながらジャンプしながら言う。

「だけど、無いんだろ?」

「有る……筈なんだ…………」

「しょうが無い、魔法で開けるか……」

見かねた華鈴はそう言うと手の指先を南京錠に当てる。

「理に於いて我が前の鍵を開けたまえ――解錠アンロック


ガチャ――――。


南京錠は音虚しく解錠の音を響かせると無作為に地面に落ちていく。

奏はその姿を見て眸を丸くする処か「あーあ……やっちまったよ」とひとり呟いた。

だが、そう言うが鍵のない扉を開きながら開けた。

「それで……此処は何処なんだ?」

「それはウチの範疇じゃないかな分からん」

「オイ!」

奏は華鈴の言葉に突っ込むがその言葉には他意は無いのか華鈴はそのまま真顔で見ていた。

「本気なのかよ……」

奏はそう呟くと華鈴は不思議そうに首を傾げる。

「そんな事より、奏……何であんな所に居たんだ?」

華鈴はもっともな疑問を口にする。

それもその筈、奏がさっきまで居たのは牢屋の中だからだ。

「さあな、俺にも分からん」

「分からん事は無いだろう……何もしてなかったら牢屋に入ってないやろう」

「そりゃそうだろうが、本当に知らん……なんと言っても歩いていたら此処に入れられたのだからな」

「どこをだよ?」

「どっかだな……良く分からん通路を歩いていたら何故か此処に入れられた」

奏はそう言うと手を横に持っていき肩を上げる。

華鈴はその様子を見て、手を額に当て溜め息を一つ吐く。

「そんなんだから、犯罪者予備軍って言われるんだ」

「それとコレとは関係ないだろう」

「歩くだけで犯罪臭がするんだろ?」

「どこぞの犯罪者だよ!?」

「犯罪者だとウチは思ってるで」

華鈴はクスクスと笑いながら奏に言い放つ。

「だから、俺は犯罪者じゃないっつうの」

「まあ、いいや」

「いや、良く無いだろ」

「いつもの事だろう?」

華鈴はそう言うと、奏は諦めたのか溜め息を一つ吐いた。

(確かにいつもの事だから良いけどよ……)

そう思っていた奏は口にすること無く華鈴の姿をまじまじ見る。

「そういえば、お前はその格好で何をしているんだ?」

奏はそう言うと華鈴の格好を見て思った事を口にした。

今の華鈴は元々の世界に居たときに着ていた服……高校の制服を着ていた。

「んー、勉強かな・・・・・・この世界のこととか、魔法の事とか色々・・・・・・」

返答にしれっと答える華鈴に奏は顔を引き攣らせる。

「それで、分かったことは?」

奏は華鈴の答に真剣な顔をしながら更に問う。

華鈴の顔もそれに答えるかのように同じく真剣な表情をする。

「正直に言って、元の世界に戻れるかは五分五分って所だけど……今の現状だとそれすら難しいって所かな」

「そうか……」

「因みにこの世界では魔法だけで無く武技という物もあるらしい」

「何だ、そのブギってのは」

「歌う箱の事では無くて武術の技と書いて武技な」

「そっか……俺でも出来るかな?」

「無理じゃね?」

華鈴は奏の言葉を即答すると肩を落とす奏。

「そんな言い方は無いんじゃない?」

「事実、無理だろ……だって、剣とか扱えないといけないからな」

「だよな……」

そう、この世界には魔法だけで無く独特の特技……武技という物が存在している。

魔法は素質によって扱える者が限られてくる。

その点、武技は誰でも努力次第では体得することの出来るモノだ。

そのため、武技を扱える者は其処まで珍しくはない。

時に、武技は魔法を超える時も稀に存在すると言われている。

「っていうか、お前が此処に居ると言う事は他の皆もいてる可能性が在るな?」

「どうだろうな……居る可能性は高いと思うけど」

華鈴が突然言い出した事に奏も頷いた。

華鈴は心配しているのは未だにこの世界に存在しているのか分からぬ者……杉原 透、相川 輝の両名だけだった。

両名だけは未だに勉強を抜け出しては探すように散策をしているが見当たる事は無かった。

「そんじゃあ、行こうか……奏」

「行くって……、何処へ?」

「適当に歩いてあいつらを探す」

「それじゃあ流石に駄目だろ……」

「それじゃあ何か……お前に何か手があるのか?」

「無いけどよ……」

二人は真剣な表情で見つめ合っていると、二人の間から声が横から入る。

「カリン様、そろそろお戻り頂きたいのですが?」

「げぇ……マジか」

「ん……?何の事だ??」

華鈴は聞き覚えのある声にげんなりした声を上げると奏は何の事ッと首を傾げていた。

華鈴はゆっくりと声の有った方を見ると其処にはマリアンヌことマリアが当然とばかりに立っていた。

「どうして、アンタが此処に居るんだ」

「どうしても何も私が此処に居ることはおかしいことでしょうか?」

「おかしいも何も見つからない様に行動していたウチは何だ!?」

華鈴は自分で逃げ道を壊すような事実を言った。

「おいおい、どういうことだよ、華鈴」

奏は追求する様に問う。

「どういうことも何も、ウチは分身を出してこの人たちを騙して探検しようと考えていたんだ!!その為だけに地味に筋力が在ることを良いことに壁を伝って天井に潜んでいたんだから。それに廊下には何もないから隠れるのが大変だったわよ………………」

華鈴は包み隠す事無く言葉を告げると顔を青くしていく。

「図星を掘ったな……お前…………」

奏が華鈴に肩に手を置くとそう呟いた。

「お前のせいだ……!!」

華鈴はそう言うと手を手刀のように構えると奏の脇に勢いよく刺突した。

「おま…………!!??」

奏は手刀で刺された脇を押さえながらその場に蹲る。

余程の痛みだったのか目には涙を浮かべていた。

そして、呻き声を上げてのたうち回っていた。

「それではカリン様、この者は?牢獄から出したのですか??」

マリアは華鈴にそう聞くと呻き声を上げながら蹲っている奏を脇に抱える。

普通の女子には出来無くはないが普通は出来ない芸当を華鈴の目の前でやっていた。

そう奏を脇に抱えているのは両手では無く片腕の腕力にて行っていたのだ。

「それは……そうやけど」

「それでは、もう一度牢屋に入れておきますね」

さも当然かのようにつぶやくマリア。

「それだけは待ってくれ、こいつはうちと同じなんや!こいつの安全性はうちが保証する」

華鈴は奏の足をつかんでマリアに抗議した。

「ですが、この者は犯罪者です。ですからいくらカリン様が大丈夫と言われましても私には危険人物にしか見えません」

「それなら、どうしてうちは見逃されている?その考えで行けばうちはあんたらが勝手に呼び出した異邦者だよ」

「カリン様はシェーン陛下の呼び出された方だから信用しているようなものです。もしこの者と同じであれば迷わず入れていたでしょう」

マリアはそういうと華鈴を見る。

その目はまるでゴミを見るような冷たい視線であると華鈴は感じとった。

「それならこいつをあいつに見せて直々に説明する。それなら文句あるまい?」

「それでしたら私は目をつぶりましょう。ですが、シェーン陛下が貴女に信用をするかどうかは別問題です」

「わかった」

「あの・・・・・・俺の意思は?」

奏は何の話かわからず抱えられている状態で一人つぶやく。

だが、その言葉は華鈴とマリアの耳に入ることはなかった。

この内容はアルファポリスにでも乗せています

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