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王立魔法研究所 ~魂の在処~  作者:


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悠久のファンファーレ

******


 それからはとにかく忙しかった。


 お城で火事があったとか、他国に襲われたんだとか、変な噂はいっぱい立ったし……大臣が王を討とうとしたんだーなんて酷い話もあって。


 フリューゲルや大臣は、どうやらその火消しに追われているみたいだった。

 魔法大国がジェスタニア王国を狙って意図的に行動したのかわからないなかで、嫌悪感だけが膨らむのは危ないもんね。


 勿論、タルークさんの集めた機密情報も使われて、水面下では魔法大国との話し合いもなされるはずだってルークスは言っていた。


 私は自分の両親――うん、いまも私は、彼らをそう思ってる――を、探しに行きたい気持ちがあったけど、まずは街道に残った八面体の魔物を片付けるところから始めた。


 もちろん、皆は私に行ってもいいって言ってくれたんだけど。


 それでも、こんな状態のまま、王立魔法研究所を離れることはできなかった。


 お父さんとお母さんは大丈夫だって信じてるしね!


 私は基本的にランスやメッシュと行動し、各地を翼竜で飛び回って、八面体の魔物を討伐し続けた。


 ルークスも、アストとウイングも……それぞれ別の場所へ赴いて討伐に当たっていたんだ。


 少しでも早く討伐するための采配である。


 ……だからその間、私はルークスとは全然会えなかった。


 王都に戻った際はタルークさんの診察を受けないとならなかったし、私自身、ばたばたと日々を過ごすことで両親のことを考えずにいたかったんだと思う。


******


 そうして……あっというまに一カ月が経った。


「ふう……」


 私は王立魔法研究所の自室で、ベッドに腰掛けた。


 割り当てられた討伐が終わって、少し前に帰ってきたところだ。


 街道の魔物はもうほとんど討伐を終えていて、予定ではこのあと二日間、私はお休みになっていた。


 一緒に行動していたランスは、フリューゲルと大臣に状況の確認をする役目もありすぐに飛び立っていったので、研究所には私だけのはず。


 短い時間だけどお風呂も済ませ、ようやくほっと息を吐き出して、私はそのままぱたりとベッドに寝転ぶ。


 ……ルークス、どうしてるかな。


 本当は会いたい。

 一緒に討伐に出られたらと思ったりもする。


 この采配を考えているのはルークスだから、少しくらい……なんてわがままを、頭の片隅からどうしても振り払えなくて。


 私はため息まじりに唸ってしまった。 


 わかってる。

 戦力を考えれば、ルークスはひとりでこと足りるもの。


 それに、私が器だったことがわかって心配してくれてるからこそ、王立魔法研究所以外では絶対にひとりにはさせず、タルークさんの診察を受ける時間も組み込まれているのだ。


 でも。


「会いたいよ……ルークス」


 思わずこぼす。


 ……ルークスはどうかな。

 そう思ってくれてるかな……。


 ルークスの熱を思い出して、私は自分の唇に触れ……。


 ……。


「駄目だ、寝よう!」


 ごろんと寝返りをうって、目を閉じる。


 考えたら寂しくなってしまうから。


 ふかふかの布団はお日様の匂いがして、私の意識は一瞬で夢のなかへと溶けてしまうのだった。


****** 


 ……まいったな。


 鍵もかけず、不用心というかなんというか。


 デューの部屋、ノックをしたものの返事がなかったんで、心配になってしまい思わず扉を開けた俺は……ベッドで眠っている彼女を見つけてしまった。


 ここ一カ月、早く落ち着きたくて討伐を優先させてしまった結果全然会えなくて……ようやく休みを合わせることができたんだけど。


 起こすわけにはいかないし……かといってここにいるのも失礼だよなぁ。


 俺はそれでも、彼女がそこに……目の前にいるのが本当に嬉しくて、駄目だとわかってるんだけど……ちょっとだけ、寝顔を覗いてしまった。


「……」


 規則的な寝息。

 よっぽど疲れさせていたんだと思う。


 それでも、彼女の頬にかかる蜂蜜色の髪や柔らかそうな唇、影を落とす睫毛……全部がたまらなく愛おしくて。


 これが、好きって気持ちなんだと再認識させられる。


 どうしても触れたい。

 その気持ちには抗えず、俺は身を屈めた。


「……デュー、おやすみ」


 そっと囁いて、彼女の額に唇を触れさせる。


 眠っているところを、勝手に唇にってのは……その、あれかなーって気がして。


 だから……もう少ししたらまた会いにこよう。


 それから、鍵をかけるよう言っておかないとな!


 俺は名残惜しいとは思いつつ、音を立てないように踵を返す。

 

 休みは二日あるから、一緒にデューの両親を探しに行くこともできるだろう。


 魔法大国がデューの両親を捕らえられていないってことは、大臣が手配してくれた諜報員のおかげでわかっていた。

 その情報も、彼女に早く教えてあげたい。


 それから、騎士団とのお茶会もしないとな。

 王都にある美味しいケーキの店で、大きなケーキでも用意してしまおうか。


 討伐を進めているうちに、俺たち王立魔法研究所の話が各地で上がっているのも確認できている。


 対魔法戦術にも力を入れていく――そのために騎士団と王立魔法研究所で協力するように、王が宣言してくれたことも伝えないとな。


 きっと、広報として大きく動いてもらうことになるはずだ。


 まだまだやることはたくさんある。

 差別だってなくなったわけじゃないし、大臣の態度も変わらずだし。



 だけど、いまは少しだけ……俺とゆっくりしてもらおう。



 そっと扉を閉め、俺はデューが起きたあとのことを考え、思わず笑みを浮かべていた。



~魂の在処~ Fin

 

ここまでお付き合いくださった皆様、ありがとうございました!


王立魔法研究所ルークス編はここでひと区切りとなります。


逆鱗のハルトよりも恋愛寄りのハイファンタジーと思って書きました。


ほかの皆にもいろいろエピソードがあるので、機会があれば!


感想などいただけるととても励みになります。

ちょっとでも楽しんでいただけたなら幸いです✨

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