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王立魔法研究所 ~魂の在処~  作者: 奏


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道化に送るシンフォニー⑦

 皆が結界を張り終えて、塔の中には少しだけ落ち着いた雰囲気が満ちた。


 破壊された扉はそのままだけど、結界のお陰か、塔内は暖かい。


 騎士団長フリューゲル曰く、城内の騎士には警戒を強めるよう伝えてあり、王様も事態を把握しているとのこと。


 それなら、私たちは現状の確認が先決だよね。


 私はようやく動けるようになってきて、ほっとため息を零す。

 でも、気持ちは重い。


 私の見た過去のことが……きっと、説明には必要なんだ。


 私がいったいなんなのか。それを、タルークさんは説明できるのだろう。


「デュー! 心配しましたのよ!」


 そこで、ウイングが飛び付いてくる。

 私はぎゅーっとされて、自分はここにいるんだと……なんだか安心した。


「ウイング……ごめんね、来てくれて嬉しい」

「あなたが謝る理由なんてなにひとつありませんわ! ……説明はこれからしてもらわねばなりません。そうでしょう、タルークおじ様?」


 彼女は、ルークスの父親であるタルークさんへと視線を向ける。


 それを受けたタルークさんが、降参とばかりに両手を挙げ、肩を竦めた。


 ――やっぱりウイングも、タルークさんのこと知っていたんだ。

 ここに入ってきたときの彼女と騎士団長の挙動は、確かにそれを裏付けていたもんね。


「すまないな、ウイング。……しかし、彼女の協力のお陰でだいたい固まった。もう一押しだ」


 タルークさんはそう言って、私に微笑む。

 ……その雰囲気は、ルークスと似ていた。


「それだけじゃねぇよ。――大臣。あんた、魔法が使えるってのは本当みてぇだな! いままで散々、魔法が使える俺たちを蔑んで……どういうつもりだよ」


 そこに、ランスが敵意剥き出しの言葉を投げ付ける。


 大臣は腕組みをして、ふんと鼻を鳴らした。


「魔法が使えるからではなく、お前たちが無能だからだ。事実、毎日なにをしていたのだ? 脅威の国内侵入を易々と許しおって!」


「……あんだと! 俺たち王立魔法研究所がやりにくい環境を作ってんのはあんたらじゃねぇか!」


 さらに食ってかかるランスの肩を、アストが掴んだ。

「落ち着け。この状況下でなにを言っても意味がない」


 メッシュがその横でうん、と頷き、ランスに向けて言った。

「ランス、いまはやめよう。状況確認が先だよ」


「……くそっ」


 ランスは右手で頭をガシガシすると、その場にどんと座り、胡坐を掻く。

 彼は、そのまま無言で、むすっとしたまま目を閉じた。


「……タルークおじ様。僕たち騎士団も、対応に苦戦しています。あなたはすでになにか掴んだのですか?」


 騎士団長がそう言って、タルークさんの前に立つ。

 その横には、まだ少しだけ戸惑いを滲ませたルークス。


「そうだな。説明するのは構わない――ただ、デュー。君はそれを望むかい?」


「……!」


 突然話を振られて、私はびくっと肩を跳ねさせた。


 ルークスが一瞬だけこっちを見て、眉をひそめるとすぐにタルークさんを振り返る。

「親父――デューになんの記憶を見せた……!」


「そう怒るなルークス。彼女は、自分から協力してくれたんだから」


「でも! 現にデューにあんな顔させて……!」


 ……私、意地悪だなぁ。

 久しぶりに会うはずの親子なのに、ルークスが私のために怒ってくれて――嬉しいと感じてしまう。


 同時に、すごく恐かった。


 自分がなんなのか。もし……それをルークスが知って、表情を変えたら。

 皆が、私を……腫れ物みたいに扱ったら。


 そう思ってしまって。


 だけど。


「私は大丈夫。ありがとうルークス」


 顔を上げて、しっかり頷いてみせる。


 私は――私がなんなのか、あの八面体や黒い靄がなんなのか、それを知る必要があるんだ。


「デュー……」

 ルークスが私の代わりに、辛そうな顔をしてくれる。

 それで十分だった。


「わかった。じゃあ、話そう……剣の国ジェスタニア王国に起きている問題についてを」


 タルークさんは、片目だけの優しい翠の眼を私に向けて、微笑んだ。


******


 王立魔法研究所が襲われ、雷使いのティルファの命が奪われた。


 研究はことごとく灰にされたが、そもそも剣の国の魔法研究が、魔法大国にとっていかほどの価値があっただろうか。


 ジェスタニア王国の研究内容は、魔法大国にとってわかりきったことだったのではないだろうか。


 そう考えた私は、仮説を立てた。

 恐れたのは、それが完成してしまうことだったのでは? と。


 その仮説が正しかったとして、導き出されたのはふたつ。


 ひとつは、魔法大国がすでにその研究を完成させており、他国の追随を許さなかった場合。


 そしてもうひとつが、研究は続けているのに、立ち往生している場合だ。


 可能性が高いのは後者だと思った。


 研究所が襲われるよりもかなり前に、ある魔法大国の研究員が失踪したという話を聞いていたのだ。


 それを王とグリモアの前で話した結果、私は生かされ、まずは失踪した元騎士団長を調べることになる。


 彼はティルファから聞き及び、私の研究内容を知っていたのだから。


 ……けれど調べるうちに、彼も命を落としていたことがわかった。


 消されたのだろう。


 ――彼が見つかった場所は、研究員が失踪したという国だ。

 誰かわからないよう、隠蔽されていたが。


 私は、徹底的にその国を調べることに決めたんだ。

 

長らくお待たせしました、核心へと向かいます!


引き続きよろしくお願いします!

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