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混沌のワルツ⑥

******


 ずいぶんと細く作られた……というよりは、道の左右が白と黒の鋭い岩の刃でびっしりと囲まれてしまい、仕方なく細くなってしまったような道になってくると、ランドワールがもうすぐだと教えてくれた。


 ただでさえふたり並ぶとすれすれの道幅なのに、時折、岩が頭の高さで斜めに交差するように張り出している。歩くのにもかなり注意が必要だ


 同じような場所に魔物がいるんだとしたら、攻撃方法はかなり限定されるだろう。


「大きく剣を振るうってのも危ないな」

「あぁ。こちらは刺突だけで戦うことを余儀なくされるが、魔物は触手で手当たり次第に岩も叩く。破片が飛び散り、楔のようになって降りかかる」

 口にすると、ランドワールが応えて立ち止まった。


「……この向こう、曲がった先に魔物がいる。道は同じくらいの広さだ」


 細い道を右にぐるっと折り返した先に魔物がいるらしい。

 しかし、びっしりと生える岩の刃が、その姿を完全に隠している。


 曲がってすぐに遭遇ってのは、あまりいい状況じゃない。


 しかもこの狭さだ、騎士たちが大人数で向かったところでろくに動けなかっただろう。


「状況はわかった。ランス」

「お、出番がきたな!」


「あぁ。風で俺たちを守ってくれ。触手で岩が砕けて飛んでくる。お前ならいけるだろ?」

「へっ、相変わらず俺の使い方がよくわかってんな! 任せろ!」


「ウイング、魔物の向こう側に水で壁が作れないか?」

「壁……? なるほどですわ。お任せくださいまし」


「水の壁! そんなものまで作れるというのですね」


 すっかりウイングを気に入ったらしいシルガが嬉しそうに笑うけど……うーん、差別しないってのはともかくとして、シルガは変わり者の部類じゃないだろうか。


 俺は考えながら、次の指示を出した。

「よし、俺が魔物までの道を作る。……ランドワール隊長、バヴェル。ふたりで魔物を突き刺せ、絶対に力を抜くな。一気に突き破ってくれ」


「承知した」

「なっ、お、俺も!? いや、わ、私が隊長となど……失礼があっては……」


 おっ、やっと喋ったな。

 俺が笑うと、ランドワールがその肩を叩いた。


「バヴェル。鍛錬の様子もしかと見ている。君は騎士を背負うもの。経験を積むのに、資格はいらないのだ」


「ははっ、おっさんいいこと言うな!」


 ランスが茶化すと、ハームが太い肩を振るわせ、後ろからうなり声を上げた。


「だから、それは止めろ! 隊長におっさんなどと失礼な口を利きおって! やはり、お前のことは好かん!」


「あれ、俺はあんたも気に入ったぜ? ここまで噛み付いてくれると気分がいい」

「やめろ、気持ちが悪い」

 あっちもあっちで仲良くなったようだ。


 俺はそう解釈して、その当人であるハームに声をかけた。


「で、ハーム。申し訳ないけど、そこまで鍛え上げられた体躯じゃ三人一緒に攻撃ってわけにいかないから……後ろで、ランスとウイングの魔法がどんなものか、しっかり見ておいてくれるか」

「……さぼっていないか、監視するということか。いいだろう」


 おお、そういう解釈になるのか。まぁいいけど。


「して、私は?」

 一連の指示を聞いていたシルガが、そこでうきうきと話しかけてくる。

 最初の威勢はかけらも残っていなかった。


 たぶん、たぶんだけど……ウイングにいいところを見せたいんだろうなぁ。


「あぁ、シルガには――」

「あんたはこの先の状況を偵察。足音もほどんど立てねぇし、斥候なんだろ?」

 するっとランスが俺の言葉に被せてくる。


 これには、シルガだけでなく騎士たちも驚いた顔をした。


「そんなところまでわかるものなのか?」

 ハームが思わずといった様子で感心した声を上げ、慌てて渋い顔を作る。

 ……ランスも似たようなもんだからな、見ていて当然なわけだけど……まあ教えないでおこうかな。


「ふふん、見直しただろ? 仲間なら心強いだろ?」

「ふん、どうだかな!」


 ハームがランスから盛大に顔を背けるのを見て、俺は少しだけ笑った。


 ……仲間なら心強い。そうだよな。

 でもそれは、ともにあるとわかっているからで。


 いまも暗い牢屋の中、俺たちを信じて待っていてくれるデューのことを思う。


 ……そうだ、騎士団にお茶を振る舞うときは、デューも一緒に連れてこよう。

 広報として、騎士団との交流を広めてもらって……そうしたら、もっと理解が得られるかもしれない。


 いい土産話ができた……よな。


 デュー……。


「……ルークス? どうしましたの?」

「え?」

 思わず、だったんだ。

 ウイングに言われて、自分が顔をこわばらせていたのに気付いた。


「いや。早く倒して戻ろう」


 俺が首を振ると、ウイングが細い指先でとんと俺の肩に触れた。


「仲間が待っていますものね」


******



本日分です!

よろしくお願いします!

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