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死亡まほスピンオフ集  作者: 竹内緋色
赤い空、月の影
8/60

8輪 トリフィドの日が来ても二人は



「とうとう8輪なわけだけど、実は、当初のシナリオの半分も消費できていないというか、重要なところはこの話以降なわけなのね。そして、すっごくハーレムなソラちゃんにやられて一人であらすじを担当することになった元ヒロインのツキです。とっても寂しいので、おじさま、私の相手をしてくれたら嬉しいな……」




「なにを成りすましてるのよ。魔女」




「ちっ。バレたか」




「そういうこと何度もしてると飽きられちゃうんだから」




「ふん。ボッチが偉そうなこと言うな」




「びっちにいわれたくないわね」




「誰がびっちだ!」




「さて。ここから三角関係が勃発なわけだけど、ほとほとに縁がなくなっちゃった8輪始まるよ!」





 #######





「ああ。どうして愚かな民どもは我の美貌を理解せんのじゃ。のう?」





 鏡をうっとり他目つきで眺める少女。




 その少女に声をかけられた魔女は声をかけられたことに驚きを隠せない。





「そ、そうだな。我もそう思うぞ。うん」





 魔女は心にもないことを少女に言ってしまっていた。




 それほどまでに少女から強引な風が吹き込んでいた。





「そうよね。ひと見た時から、あなたは見る目があると思っていたわ」




「そ、それは光栄だね」





 少女は美しくなかった。




 醜いとさえいえた。




 少女はその醜さゆえに度々いじめられていたが、少女は自信の美しさを信じてやまなかった。




 それが故に、世界に不満を持っていた。





「本当、どうして私の美しさが分からないのかしら。この世界は間違っているわ」





 もしもこの少女が少しでも自身に自信がなく、平穏な生活を望んでいたとあらば、きっと世界に不満はなかったろうし、いじめられることもなかったのだと魔女は思った。





「その怒りを世界に向けてみないか?」




「まあ!そんなひどいことを!」





 でも、世界中に私の美貌を見せつけるのも悪くはない、と少女が思った瞬間である。





 ばーーーーーーんっ。





 陸上競技のスターターのような号砲が鳴る。




 少女の未来は一瞬にして刈り取られた。





 ######





 ヒカリは医者に呼び出された。




 よくない理由であることはよく分かっていた。




 ヒカリの母親の通う病院は終身病院。




 つまり、もう長くはない病人を長生きさせるための病院だった。





「よく来てくれたね。ヒカリちゃん」





 医者はヒカリに愛想よく挨拶する。




 だが、ヒカリは医者の顔から疲労の色を見て取る。





(そんなに明るく接したら、後から辛くなるんだろうに……)





 ヒカリはただ漠然とそう思っただけだった。





「今日はお母さんのことでお話があるんだ」




「早く言えよ」





 ヒカリは必死で堪えて呟いた。





「ヒカリちゃんのお母さんは、もう長くない。今、とても病状が悪化している。あと一か月時間があるかどうか……」





 ヒカリは診察室の丸椅子から立ち上がる。





「もっと早くから先はねえって知ってたんだろ!じゃあ、なんでもっと早く言ってくれなかったんだ!」





 ヒカリは怒鳴った。




 憎しみのこもった顔で医者を見る。




 医者は両手で顔を覆っていた。





「ごめんよ……ヒカリちゃん……」





 大の大人が泣いているのを目の当たりにして、ヒカリの怒りはすーっと星の海に流れていく。





 その代り、こみ上げてきたのは世界を追い尽くすほどの悲しみの波と、医者に対する申し訳のなさだった。





「こっちこそ……すまねえ。このことを話すために、ずっと……寝れなかったんだろ?」




「強いね。ヒカリちゃんは……」





 強くなんかない。




 そう思った瞬間、ヒカリの目から悲しみが流れおちた。




 流れ落ちる悲しみをどう受け入れればいいのか分からずに、ヒカリは流れゆくままに悲しみを流した。








(泣いてたままじゃいけねえよな)





 ヒカリは鼻水と涙を服の袖で拭いて、病室をノックする。




 服の袖にはナメクジが這ったような、銀色の線ができる。





「はい。どうぞー」





 ヒカリが扉を開けた先には、いつも通りの母親の姿があった。





「ママ……」





 ヒカリは自分が泣いていたことを悟られないように急いで母親の胸に飛び込んだ。




 母親の胸は物心ついたときから萎んでいて、心臓の鼓動も微かにしか聞こえなかった。





「どうしたの?ヒカリちゃん。男の子に泣かされちゃったの?」




「そんなわけ、ないよ」





 ママはやっぱりすごいと驚きながら、ヒカリはもう悲しい顔は見せまいと誓う。





「ちょっと、フランダースの犬を見てただけだから」




「まあ!アニメの方?実写版も結構泣いちゃうよー」





 元気なふりをして、母親はヒカリの頭を撫でる。




 優しく、蕩けてしまいそうな心地だった。





「ねえ、ヒカリちゃん。八光はどう?」




「元気だよ?もう、元気すぎて家が壊れちゃいそう」




「うふふ。それは楽しそうだね」





 全然、とヒカリは母親に弟がいかにいうことを聞かないかということを話す。





「ねえ、ママ。髪の毛、梳いて?」




「いいよー」





 ヒカリは母親に会う時だけは普段結っている髪を解いている。




 母親譲りの黒くて艶のある髪。




 ヒカリは母親の前だけは正真正銘、一人の女の子だった。





「はい。じゃあ、そこに座ってー」





 ヒカリは櫛で母親に毛を梳いてもらう。





「まるでトトロね」




「トトロって、恵子ちゃんが子どもの時からあったのよ?恵子ちゃんのママ、おばあちゃんも若い頃に見たって」





 優しいひと時が過ぎていく。





「ねえ、ヒカリ。髪の毛が邪魔だったら、切っていいのよ?」




「なんで?」





 そう聞いて、ヒカリは自分がいつも髪を短く結っていることに母親が気がついているのを知る。





「ヒカリちゃんも一人で髪の毛を結っていかないといけないから。だから――」





 ヒカリの背後から嗚咽が漏れる。





「ママ……」





 ママも知っていたんだ、とヒカリは気付く。




 涙を流す前にすることがあった。





「ママ!わたし、魔法少女になったの!魔法少女は魔法で夢をかなえることができるの!だから、ママも元気になるわ!」





 ヒカリは母親の表情を見ないようにしながら、コンパクトを取り出す。





「蒸着!」





 ヒカリの体は赤い光に包まれる。




 あらわになるシルエットに向けてコンパクトからリボンが飛び出した。




 リボンはヒカリの体に巻き付いていく。





「ツインエンジェルブレイクの変身、えろかったよな」





 ヒカリはくるりと後ろを振り向く。





「あれ?ヒカリちゃん?ねえ?どこ?」





 ヒカリの母親はヒカリのことが見えないようだった。





 かつて、ヒカリは花火ファーアアーツと言う名前だった。




 今でも母親にそう可愛がられていた時のことが懐かしい。




 それを捨ててでもヒカリは魔法少女になった。全ては夢を叶えるため。





「ママを元気にするためなら――」





 他の全てを犠牲にしてもいい。





「お願い!ママを元気にして!病気を治して!」





 ヒカリのバトンから魔法が放たれた。









 ヒカリは車いすを使って病院から母親を連れ出す。





「どうしたの?そんなにはしゃいで?」




「ううん?なんでもない!」





 母親の病気が治った。




 それだけでヒカリは嬉しくなる。




 まだ、診察を受けていないので安心はできないものの、母親の顔は血色がよくなり、笑顔も自然であった。





「恵子ちゃんもなんだか元気よ。うん。とっても気持ちがいい日ね」





 車いすで林道を歩いていると、ふと、見知った二つの後ろ姿が目に映った。





「ソラとナミ……なんであいつらが一緒に……」





 ソラは魔法少女を辞め、他の仲間と関わるのを辞めたはずである。




 なのに、ヒカリが見た後ろ姿は、非常に仲睦まじいものだった。





「どうしたの?ヒカリ?」




「……ううん。なんでもない」





 ヒカリは車いすを再び押す。




 今は母親とのひと時を楽しもうと思ったのだ。




 病院の近くには噴水のある公園があり、そこには休日ということで多くの家族連れが来ていた。





「ママとこんなところに来るのは初めてね」




「そうね。八光も連れて来たかったなー」





 ヒカリは幸せだった。




 もう、悲しいことなどこの世には存在しない。




 魔法少女になって本当に良かった――





「本当にそうかな?」





 刃物を首筋に当てられたような、ひやりとした言葉がヒカリに突き刺さる。





「魔法はそんなに便利なものだと本当に思っているのかい?」





 ヒカリは急いで辺りを見渡す。




 悲し気な口笛の音が聞こえてくる。




 ヒカリは噴水の先を見た。そこには一人の少女が宙に浮いている。





「魔女!」





 ヒカリは魔法少女に変身する。





「こんぷりーと!」





 ヒカリはバトンを魔女に向ける。




 だが、魔女は手を前に出し、ヒカリを制止させる。





「待ってくれ。今日は戦いに来たんじゃない。それに、こんなところで戦えば、被害が出てしまうよ?」





 ヒカリは思わず動きを止める。




 すると魔女は近くの少年の首を魔法を使い、はねた。





「お前――」




「よく見てごらん?魔法少女!」





 パチン、と魔女は指を鳴らす。




 すると、魔女に首をはねられたはずの少年は何事もなかったように歩いている。





「どういうことだ!幻覚でも使ったのか!」





 ヒカリはバトンから魔砲を放つ。




 魔女は優雅に魔砲を避ける。




 避けられた魔砲は噴水を粉々に砕いた――




 はずだった。





「どういうことだ?」





 噴水は壊れたはずだった。しかし、次の瞬間には魔法でも使ったかのように元に戻っている。





「我は何もしていない。幻術さえ使っていない。何故なら、使う必要もないからだ。魔法少女。お前は戦闘が終わった後、壊れたはずの建物が何故か治っていることを不審に思ったことはないか?」





 そう言われてヒカリは壊れた建物が治っていたことに気がつく。





「それがなんだってんだ!」




「もし――もし、建物が初めから壊れていなかったとしたら?」




「は?」





 ヒカリは何をバカなことを、と魔女の言葉を鵜呑みにしないようにしていたが、どうしても心の奥底では魔法に対する不信感が募っている。





「魔法というのはね、少女たちの夢の中にしか存在しないんだ。だから、それは現実に影響する能力じゃない」





 なにを言ってるんだ――





「ほら。君の大切なママを見てごらんよ」




「ママ?」





 ヒカリは母親のいる車いすを見る。




 母親は苦しそうに胸を押さえている。




 そこには魔法で元気に戻ったはずの母親の姿はどこにもなかった。





「夢は寝てみろと言うよね。つまりはそう言うことなんだ。魔法は現実には存在しない。魔法では何も救えない」




「嘘……だろ……?」





 今まで俺が頑張ってきたのは何のためだったんだ。




 何のために俺は自分が消えてしまう危険を冒してまで戦ってきた。




 何のために俺は魔法少女になんかなったんだ!





「うおぉおぉおぉおぉおぉおぉあぁあぁあぁあぁあぁ!」





 少女の叫びが響く。




 けれども、その叫びを聞く者などどこにもいない。





「魔法少女は現実と夢の曖昧な世界に存在する。だから、夢と現実との区別がつかない子どもだけが魔法少女を見ることができる」





 くすくすくす、と魔女は面白くてたまらないのを我慢するように笑う。





「最後にいいものを見せてやろう」





 ヒカリの目の前に映像が現れた。




 そこにはソラとナミがいる。





「ソラ……」





 そうだ、俺にはソラがいる。俺のことを分かってくれる、親友が――





「ナミちゃん。ひどいの。ヒカリちゃんがわたしことをいじめる――」




「大丈夫なのですわ。ヒカリなんてもうお友達ではありませんもの。ソラちゃんのお友達はわたくしだけですわ」




「おい、ソラ……なに、言ってんだよ……」




「彼女は嘘を吐いた、のかな?それとも、君が気がついていないだけで、彼女は君のことが嫌いだったのかもしれない」





 うそだぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!!




 ヒカリは自分の目から涙が出ていることにさえ気がつかなかった。




 それだけ、目の前に迫った現実はヒカリにとっての絶望だった。





「魔法少女は愛も絆も失った。そして、現実に絶望した」





 魔女は得意そうに鼻を鳴らす。





「さあ、どうだい?この世界が憎いだろう?醜いだろう?壊してしまいたいだろう?さあ、君の望みはなんだい?」




「……」





 ヒカリはうつむいたまま答えなかった。




 魔女はそれを答えであると受け取る。





「じゃあ、仕上げと行こうか。エボルワーム!食事の時間だ!」





 魔女の肩からひょっこりと虫のような存在が顔を出す。




 虫は少し顔を延ばしたかと思うと、拡大鏡を覗き込んだように、突如として巨大な存在へと変わる。




 ああ、ここで俺も死ぬのか。




 心残りはただ一つ。




 弟の八光のことだった。




 ヒカリがいなくなった後、八光はどうなってしまうのか。





「うぅ――うゎあぁあぁあぁあああああああああああ!」





 叫び声が上がることにヒカリは気付く。




 噴水で遊んでいた子どもの中に、一人、ワームが見える子どもがいたようだった。




 ワームは子どもに気がつき、子どもに向けて口を延ばす。




 そして、むしゃむしゃと子どもの花を頬張った。





「え……?」





 少年は目の前の光景を疑った。




 少年の目の前には一人の少女が大きく手を広げている。




 その少女の胸を虫は一心不乱に貪っていた。





「魔法少女……?」





 少年が始めて見る魔法少女だった。





「大丈夫なの?」




「いいや」





 少女はニヤリと少年に笑顔を向ける。





「すっげぇいてえぜ。体中いてえけど、心を食われてんだから、一番心が痛い。もう、自分が誰だったのかさえ思い出せねえ」





 どうして少女は自分に笑顔を向けていられるのか、少年には理解できなかった。





「テメェ、どこかで見た顔だと思ったら、虻川の弟じゃねえか」





 少女がかつてよく遊んでいた少年の弟のようだった。





「今すぐ逃げろ!お前もこんな風になりてえのか!」





 だが、少年はその場を動けない。





「お姉さんは――」




「俺のことなんか、どうだっていいだろうが!」





 欲しいものは周りを犠牲にしてでも手に入れねえとな。





「最後に一つ、俺の願いを聞いてくれや」





 少女は想像を絶する痛みに意識を失いそうになる。




 そんな中、最後の残った心残りを口にした。





「俺にはまだ小さい弟がいるんだ。もしよければ、友だちになってくれねえか?」





 少年は走り出した。




 少女の犠牲を無駄にしてはいけないと分かっていたのだ。




 少年は少女の弟の名前さえ分からない。




 けれども、命を懸けてその弟を守りぬいてみせると、少女の魂に誓ったのだった。






「くふふふ。くふははははは! さいっこうだねぇ! 最後まで魔法少女に徹したということか。非常につまらない。けれども、君のこれからはさらに素晴らしくなるよ。そうだね」





 新しい君の名は――








 次回予告




「君の名は――」




「何やってるの?ツキちゃん?」




「うっせえ!ハーレム王になった野郎に用はねえ!」




「うぅ……そのセリフは……」




「うおぉ!マジで最高だぜ。三ノ輪銀のライン着せ替え!」




「作者がとうとう購入したのね」




「金ないのにね」




「でも、やっぱりゆゆゆは最高ですわ。勇者の章についてはノーコメントで」




「作者的には銀ちゃんも好きだけど、千景ちゃんも好きなのね。乃木若葉の方だけど」




「はっ」




「はっ」




「そうだよ!作者の愛があるから、その2キャラに似た二人がピックアップされるんだよ!でも、主人公は月影夜空なんだから!」




「大丈夫なのですわ。ツキ」




「ナミ……」




「きっとわたくしたちは作者にとってストーリーガチャの星5鯖なのですわ」




「それって、狙って当てるほどでもないって言う……」




「でも、イベントでは大活躍ですわ……?」




「最後は疑問形にしないでよ!」








『次回、水ネロ、キャスカ、不夜キャス……あれ?イリヤたんは?どこ?』





 何故だかキャスターばっかり……(小説を書いてるから?底辺だけど!)



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