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死亡まほスピンオフ集  作者: 竹内緋色
でんせつのまほうしょうじょのでんせつ
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23. おしえて! 立花しすたぁ!

23. おしえて! 立花しすたぁ!



 今にも風に吹かれれば倒れそうでありながら長い間なんだかんだで状態を保っている小屋がある。

 そこはとある少女とその従者との愛の巣であり、勝手に棲みついた鬼は土の中にいるわけであるが、今はどうだっていい。

 そんな小さな小屋には今日も悩める子羊たちが訪れるのだ。

「しすたぁ、しすたぁ!」

「どうしましたか? 緑子さん」

「というか、しすたぁなんて時代錯誤な「どうしましたか? 緑子さん」」

「い、いえ」

 緑子はしすたぁを前に、祈りを込めてひざまづく。

「どうもこの作品のわたしの扱いがひどいのです。最初は謎の方言を連発していたのに、作者が面倒になってそれを辞めてからというもの、毎回のように口調が変わってしまって。この前の話なんて、内容も組み立ても無茶苦茶で、作者自身がダメだなというくらいで。しすたぁ。わたし、どうしたらいいですか?」

「うーん。そうですね」

 しすたぁは甘いため息をつく。

「緑子さんは焼き鳥は塩派ですか? タレ派ですか?」

「それが一体なんの役に?」

「つまり、焼き鳥のタレにはタレの良いところが、塩には塩の良いところが「皮です。塩で」」

「焼き鳥の話なんて、戦国時代にしてはおかしいですよ」

「お前が言ったんだろうが!」

「と、まあ、このように、その場その場の雰囲気で乗り切っちゃいましょう。どうせお前の出番はない。何故なら次回から『美姫と立花のラブラブ生活』という題でこの小説は再スタートするからだ!」

「無茶苦茶か! もう回収できんぞ! 作者も!」

「ただ、マジレスしますと、そういうブレにブレまくっているところもまた、緑子さんらしいのではないでしょうか。(姫様に触れたら指をへし折る)」

「ありがとう! しすたぁ! 悩みが解決したよ! (二度と来るか。それと美姫はわたしのものだ)」

「姫様のご加護を(表で出ろや、オラ)」


「ねえねえ! 聞いて! しすたぁ! でごじゃる」

「はい。なんですか? ツキカゲさん」

「しぇっしゃ、姿を現せないのではなくてただ単に恥ずかしがり屋で姿を現せないという話でごじゃりましゅのに、話が不完全燃焼で説明不足なのでごじゃりゅ。あれでごじゃりょう? もうすぐクライマックスなのでごじゃりょう?」

「もう時代錯誤については論じませんね。それは大変なことですね」

 しすたぁは甘いため息をつく。

「では、こういうのはどうでしょうか。語尾を毎回変えると存在感が増して、姿を現さなくてもあ、今いるんだ、ということになりますよ」

「ならないでごじゃりゅ。なぜなら、それは昔作者がやってエタったという例があるでごじゃりゅ」

「それは大変ですね」

「適当に相槌を打ってないでごじゃりゅか?」

「ならもういっそ、全員姿を現さず、声だけで出演する回にすればいいんじゃないでしょうか?」

「それは小説として――というか、小説ならば、姿がないでごじゃりゅ! そういうのはアニメ化してから考えるでごじゃりゅ!」

「それは夢のまた夢ですね。でも、しすたぁはツキカゲさんが全然影が薄いとは感じませんよ。むしろ、好みだったら犯したいくらいです」

「影が薄いかどうかの問題ではないでごじゃりゅ! それと、怖い!」

「むしろ姿を現さない方がそこはかとなく不思議な超絶美少女感がでるのではないでしょうかというかむしろそそる」

「このしすたぁ、こわいでごじゃりゅ……」

「あら。ツキカゲさん、どこに行かれたのでしょう? 逃しませんよ。ふはははははは!」


「しすたぁ。悩みがあるのです。どうして作者はまだ童貞なのでしょう」

「水羊羹さん。それは生まれながらの童貞だからです」

「ま、そんなことはどうでもいいわ。産業廃棄物なのだもの。それより、ツキカゲって横文字にするとなんかイマイチじゃない?」

「戦国時代にカタカナが使われていたかというと謎ですが」

「平安時代からあったことにはあったんじゃない? それより、わたしの悩みなんだけど。実は悩みがなんにもなくって。困っちゃっているの」

「なるほど。年増と言われるのが悩みなんですね。ちなみに、歳はいくつなのですか?」

「ちょっと! 女性に齢を聞かないで!」

「なるほど。16と。この時代だともう婚期ギリギリですね。人生50年の時代です」

「というか、今回なんなの? 外伝回なの?」

「時おりこうやってメタを入れないと作者がパンクするので。ジュブナイルメタフィクションなので」

「ジュブナイルの意味分かってる?」

「アマゾンズですよね。わかります」

「絶対に違う! これだから、読者置いてきぼりなんて言われるのよ」

「そんなもん、今に始まったことじゃないわい! 死亡まほ外伝とかいう、本編ですら色々大変な感じなのに次いで外伝とか、そして、本編500年前の話とか無茶苦茶だろうが! もう誰もついて行けてないわ!」

「落ち着きなさいよ。節操がないわ」

「ほほう。お前だけには言われたくないな」

「へぇ。わたしにたてつこうというのかしら。虫けらの分際で。駆除するわよ」

「悩みがないのなら、悩みを作りましょう。齢をとってもずっと童貞とか処女だったらいつの間にか悩みになってます。金を払わないと捨てられないなんて産業廃棄物です」

「アンタは何歳なのよ」

「14です」

「それでも年増「ブーメランって知ってますか?」」


「しすたぁ! お願い! 聞いて!」

「お願いダーリン。見て聞いて」

「どうしたの? しすたぁ」

「なんでもございません。姫様。で、愛しの姫様。一体どのようなお悩みが? 我が即座に解決してみせましょうぞ!」

「それがね――」


 大きな月が出て、それが何回続いただろうか。

 この時代、この世界。何一ついいことなどないはずなのに、何一つとして悪いことなんてなかった。

 夏の終わりを告げるように、涼しい風が修道服を冷やしてゆく。

「で? しすたぁごっこはどうだった?」

 俺はずっと月を見ていた立花に尋ねる。

 体の方も完全に回復して、もう暴れても問題はなさそうだった。

「何でもない。ただ、姫様の質問が気になってな」

「じゃあ、俺の悩みも聞いてくれよ」

「この流れ、我の悩みを聞く感じではなかったのか?」

「俺は他人の悩みを聞けるほど自分自身に余裕なんてねえよ」

「童貞が捨てられないのは知らん。ペドフィリアの汚名を被る勇気だけだ。以上」

「嫌だわ! 死ぬより嫌だわ!」

 俺は要らん言葉ばかり教えてしまったか。教えた覚えはないけれど、つい口走ってしまった言葉を、なんとなく意味を推しはかって使っているに違いない。

 言葉ってのはこうやって翻訳されていくのだな。

 ジョン万次郎万歳。

「お前には悩みがねえのかよ。誰かの悩みばかり聞きやがって。誰かに悩みを聞いてもらわねえのかよ」

 立花はくすり、と笑う。

「お前がそれを拒絶したのだろう。支離滅裂な奴だ」

「別に俺は聞きたくなんてねえよ。でも、人間誰かの顔色ばかり窺って悩みすら言えなかったら大変だろうが。自分勝手に相手に迷惑をかけりゃいいんだよ。どうせ向こうは遠慮なく迷惑をかけてくるんだから」

「お前なりの優しさだと思っておこう。しかし、姫さまと同じ悩みを打ち明けられるとは思わなかった」

「それこそ嘘だな」

 流石に、このくらいの嘘は俺だって見破れる。

「美姫はお前にこう言ったんだろ。従者がすっごくしつこくて貞操に危機を感じると」

 おやぁ。図星だったようだ。

 立花はこの世の終わりとでも言いたげに肩を落としている。

「自業自得だ。諦めろ」

「貴様」

 欠けた月は満ちる。けれども、満ちた月は欠ける。

「なあ、鬼。この生活はいつまで続くんだろうか」

「もうすぐ終わっちまうよ」

「知っていたのか」

「ま、優秀な忍者がいることだしな」

「そのことを姫様は」

「知ってる」

「何故知らせた」

「何故知らせない」

 少しの間、沈黙。それを破るのは俺の役割らしい。面倒臭い。

「お前は美姫をいつまで温室で育てるつもりだ。あいつはそれほど弱くないし、あいつ自身の問題でもある。俺たちも美姫も、もう逃げられはしないんだ」

 何かを守るには戦うしかない。

 戦うためには傷付くしかない。

 俺たちはまだまだ子どもだ。

 傷付くことから逃げてきた。

 でも、大人になる時が来たんだと思う。

 何が大人で何が子どもなのかなんて本当はなにもわかっちゃいない。

 でも、でも。このままじゃいられないことだけは確かなんだ。

「そして――新章へ」


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