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死亡まほスピンオフ集  作者: 竹内緋色
赤い空、月の影
4/60

4輪 うれた かじつ


 前回の『赤い空、月の影』は――





「なんとヒカリが髪を染めて不良に!」




「ひどい悪ノリだね!」




「関東の暴走族をまとめ上げたヒカリを更生させたのはかつての家庭教師であり恋人でも会ったソラちゃん」




「ドアップにしないでよ。あと、変な効果音いらない!」




「ゆりぃ。ゆりぃ」




「すんごくホモォに似た生命体がいるぞ」




「そして、三人を見つめる青い二つの瞳の正体は――」




「大方バレてると思だろ」




「それよりも、前回の内容に少しもかすりもしてないよ!」




「その名はルパンエッ――」




「せめてパトレンの方にしろよな。キャラ的にす――」




「だから、そういうのは本気で卍されちゃうから」




「釘宮さんもいるからね」




「からの――ダサT、どーん!」




「ヒカリちゃんも悪ノリしないで!」




「では、『赤い空、月の影』4輪はじまるよ!」





 ##





 そこは暗室と呼ばれる場所だった。




 フィルムカメラで撮った写真を現像する場所だ。





「うふふふふふふ」





 少女の艶やかな笑い声が響く。





「とうとう見つけましたのですわ。魔法少女――」





 少女はトレイの液体から写真サイズの紙を取り出す。




 するとみるみる写真が色づいてくる。





「ぶるーれっと、奥田家♪」





 それはトイレの液体――





 #######





 わたしは一昨日から起こり続けている出来事について考えていた。




 ソラちゃんが魔法少女ツキになって、光ちゃんが魔法少女ヒカリになって。




 そして、なんだかよく分からない化け物と二人は戦うことになってしまうだなんて。





「こっちの方がきちんとしたあらすじじゃない」





 するとチャイムが鳴ります。





「よっしゃ、放課後だぜ!」




「はやっ」





 でも、始業式が始まったばかりなので、確かにすぐに放課後にはなるのだ。




 わたしは魔法少女について深く知ろうとツキちゃんたちに話そうしたが――





「今日は八光にカレーを作る約束をしてたんだ」





 そう言ってヒカリは走って帰っていった。





「あれ?じゃあ、昨日昼休みなかったんじゃ――」





 とんでもない矛盾を見つけた時、





「ツキちゃん、待って――」





 私は教室を出て行こうとするツキちゃんに話しかける。





「ごめんね。今日、魔法少女の仕事があるから」




「魔法少女の仕事って?」





 また危ないことをするんじゃないかとわたしは不安になる。





「大きいお友達の慰み物になるんだって」





 別の意味でとても危ないです!





「待って!ツキちゃん!」





 でも、わたしとツキちゃんを隔てるように、数人の黒服の男たちが道を塞ぐ。




(なんなの、この人たち。なんでヤクザがこんなところに――)





「まさか、この人たちがロリコン――」




 男たちは不気味ににやりと笑うと、わたしの背後に回り、口を塞ぎ、手足を不自由にする。




 これって、誘拐というのではないのだろうか。




 そう思っているうちにわたしは黒い車に乗せられ、学校からどこかに連れ去られてしまった。





###





「一体どうするの?わたしを」





 わたしは後部座席に放り込まれていた。




 手足は自由になっている。




 でも動いている車の中でわたしはどうすることもできない。





「乱暴するんだよ。エロ同人みたいに」





 そう聞いてわたしは急いでスカートを押さえる。




 この先どうなってしまうのだろうか。




 まだ初潮を迎えていないわたしは無茶苦茶なことをされて路地に捨てられるのだろうか。




 それとも、ずっと奴隷のように暮らして――




 しばらくして車は動きを止める。




 どこかについたようだ。




 車窓から見える外の景色は木々が生い茂っている。




 まさか、野外プレイなのか。




 だったら、そういう撮影なのか――





「さあ、いらっしゃい」





 ヤクザは外から車の扉を開ける。




 わたしはどうやって逃げようかと考えながら、ヤクザの言葉に従う。




 と、ヤクザの隙をみてわたしは逃げ出した。




 でも、すぐにお腹から抱き上げられてすっと地面から足が離れる。




 そして、荷物のように肩に背負われた。




 肩に背負われたとき、ポンポンとおしりを叩かれるおまけつきだった。





「いやぁ」





 わたしは泣き入りそうな声でそう言った。




###





 ヤクザが連れてきたのは大きな屋敷だった。




 お金持ちの屋敷は横に広いと聞くけれど本当に広いようだった。





「お嬢。連れて帰りましたぜ」





 わたしは乱暴に床に放り投げられる。





「もう。大事なおもちゃだというのに、そんなに乱暴してはいけないのですわ」





 ものすごく聞き覚えのある声がして、わたしはその方を見る。





「波野さん!?」




「司って呼んでって言ってるのですわ――だぜ」





 司ちゃんはわたしの唇に細くて綺麗な人差し指を添える。




 ひんやりと冷たくて気持ちがいい。





「って、なにを!? もしかして司ちゃんも乱暴されちゃうの!?」




 今思えば非常におかしな質問に違いなかった。




 どう見ても司ちゃんは誘拐された風には見えなかった。





「むしろ、乱暴する方なのかしら――ですわなのだぜ!」




「どういうこと――」





 司ちゃんはうっとりとした顔でわたしを見つめる。




 その顔がだんだんとわたしの方へと近づいてきて――





「魔法少女について詳しく聞きたいのですわ――きゃっ」





 ぶちっ。ぶちぶちぶちぶち。




 わたしの頭の中で何かがブちぎれる音が響いた。




 わたしは怒りに任せて、司ちゃんの膨れ上がり過ぎているおっぱいを揉みしだく。





「いやぁ。だめっ。そんなところはぁ」




「わたし、本当に怖かったんだよ?本当に乱暴されると思って――」




「ああっ。さきっぽはぁ。びんかんなのぉ。まだ大きくなったばかりだから痛いっ」




「貧乳の恨みを知れぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇ!」




###





「おっぱいの形が変わってしまいましたわ」





 力尽きた様子で司ちゃんは言う。





「本当にもっとマシな冗談にして」





 わたしも司ちゃんのおっぱいを揉みしだいているうちに変な気分になってしまって、体が火照ってしまっている。





「で、なんなの?」




「わたくしはソラちゃんをわたくしのお家に呼びたかったのですわ――だぜ。でも、ソラちゃんはいつも断ってしまうから――」




「ごめん」




「別にいいのですわ。わたくしも自分からお家に人を呼ぶのが初めてでしたから――なのだぜ」




「そうなの?」




「ええ。ヒカリとツキは勝手に上がり込んできましたもの」




「ツキ……?」





 わたしは違和感を覚える。





「ソラ、じゃなくて?わたしのこともアカちゃんじゃなくて?」




「え?」





 訳が分からないと言ったような、不思議そうな顔を司ちゃんはしていた。




 つい先日まで、司ちゃんもヒカリちゃんもわたしのことをアカちゃんと呼んでいたし、ツキちゃんのことをソラちゃんと――




 そもそもどうして、わたしはソラちゃんのことをツキちゃんと――





「それよりも、ソラちゃんに見てもらいたいものがあるのですわ――だぜ」





 ずっと不思議に思っていたが、どうして司ちゃんは最後にだぜ、ととってつけるのだろうか。




 まるで忘れてしまっていたのを慌てて引っ付けたような物言いである。




 そんなことを考えていると、先ほどまで考えていた疑問がどこかに流れて行って消えてしまった。





「ここなのですの――だぜ」




「ねえ、司ちゃん。ずっと思ってたんだけど――どひゃぁ!」





 司ちゃんが扉を開けた先から大量の本が飛び出してくる。





「薄い本――」





 そのどれもが女の子同士のものばかり――





「男の人同士のもありますの」





 とても生き生きと司ちゃんは言った。





「いや、そういうことじゃなくて――」





 これは俺妹のオマージュなのだろうか。そうでなければパクリだ。





「化物語かもしれませんわよ?」




「詳しいのね」





 前からお嬢様だとは知っていたけれど、司ちゃんがこんな趣味を持っているとは驚きだった。





「これを見せるのはソラちゃんだけですわ」





 わたしは貞操の危機を覚える。





「大丈夫。わたくしは鑑賞する側ですし」





 それはそれでどうなのだろうかとも思う。





「軽蔑なさりましたか?」




「正直、ね」





 わたしは素直に答える。





「そうですか……」





 司ちゃんは泣き出しそうに俯く。





「でも、わたしは司ちゃんのことをもっと知りたいから、そういうのも詳しく知りたいかなって」





 ぶっちゃけ、興味はかなりありました!





「流石わたくしがハニーと仰ぐ方ですわ」




「初耳だけど」




「むしろダーリンですわね!」




「話聞こうよ……」





 普段はとても大人しそうなのに、時々手が付けられなくなるのが司ちゃんだった。




 でも、わたしはそんな司ちゃんが大好きだ。





「わたくしもソラちゃんのことが大好きなのですわ」





 わたしと司ちゃんは見つめ合う。




 その唇がだんだんと近づいて行って――





「ってそうじゃない」




 またもお互い妙な雰囲気に取り込まれそうになってしまっていた。




 異国の血が入っている司ちゃんの青い瞳は、女の子であるわたしにとってもとても魅力的だった。




 そのくせ、東洋人特有のコシのある艶やかな黒髪をしているのだから、見た目から敵うはずがない。





「それよりも、魔法少女がどうって言ってなかった?」




「ソラちゃん、確か絵が上手でしたわね。今年の夏コミに――」




「おーい。聞いてる?」




「Σ(゜□゜;)」





 司ちゃんは正気を取り戻したようだった。





「なんのお話でしたっけ?夏コミでどんなカップリングをするかでしたわね」




「魔法少女の話だけど」




「そうでしたわ!魔法少女!」





 司ちゃんは手を合わせて嬉しそうに笑みを浮かべる。





「わたくし、魔法少女というものにとても憧れていましたの。だから、魔法少女とお友達であるソラちゃんに魔法少女さんたちをご紹介いただければと――」





 もしかしたら、ここ数日の二人の活躍をどこかで見たのかもしれない。





「でも、その魔法少女、ツキちゃんとヒカリちゃんだよ?」




「正体をばらしてもいいのですの!?」





 ベルばら的白眼になりながら司ちゃんは言った。





「別に秘密にしてほしいとか言われてないし、ほら」





 わたしは司ちゃんの秘密の部屋にあるテレビをつける。




 テレビの上には二つのパペット人形があった。




 手作りっぽい。




 映ったテレビにはツキちゃんが出ている。




 魔法少女ということでテレビ番組に出演しているのだ。





「魔法少女って、秘密にするものじゃなかったのですの!?」




「違うみたいだね」





 確かにアニメとかではバレたらカエルになったりとかするけれど、現実の魔法少女はそうでもないらしい。




 むしろ世界を守るヒーローとしてメディアに引っ張りだこなのだ。




 どっちかというと戦うアイドルみたいな扱いなのかもしれない。





「そんな……そんなことって……」





 司ちゃんは相当にショックなようだった。





「そんなにショックを受けなくても……」





 わたしとしては、あのグロテスクな虫と友達が戦っているという事実の方がショックだった。





「ねえ、司ちゃんは魔法少女になりたいの?」




「いいえ。でも、きっぱりとなりたくはないと言えないのが本当のところですわ――なのだぜ」




「どういうこと?」





 少し考えた後、司ちゃんは言った。





「心からなりたいというわけではないのですの。でも、誰かの役に立てるというのはとても素晴らしいことだと思いますの――だぜ」




 魔法少女を見たということは、司ちゃんはあの気持ちの悪い虫と魔法少女が戦っているところを見たということだろう。




 なのに、どうしてそんなことが言えるのだろう。わたしは怖くて仕方がないのに。





「ところで、どうして司ちゃんは語尾に無理矢理『だぜ』をつけてるの?」




「それは一万と二千年前の話になりますわ――」





 #####





 戸愚呂は木陰から一人の少年を見ていた。




 それは一目惚れというやつだった。




 去年、戸愚呂の住んでいた小学校に一人の少年が転校してきた。




 凛々しい立ち姿。都会ぶった長い髪。そして、時折見せる初心な笑顔。




 今まで女の子に興味を持ったことがなかった戸愚呂はこの時、その少年に恋した。




 そして、今も戸愚呂は木陰からその少年を見ている。




 少年は複数人でサッカーをしているようだった。




 少年の傍に一人の少女が近づく。




 そして、ゴールを決めたことによる喜びのハイタッチをする。




 戸愚呂は自分もその場所にいることができればいいと思う。




 けれど、それはできないのだった。




 男である自分が少年を好きになっていることは異常である。




 そのことを戸愚呂は誰にも知られたくなくって、自分でも認めたくなくって、そして、つい、その少年をいじめてしまっている。




 そんな不良ぶった戸愚呂が今さら少年とともに抱き合い、抱擁し合い、互いをきつく抱きしめ合うなどできようもない。





「つくづく、ブギーポップのパクリだね」





 戸愚呂のすぐ後ろで口笛の音が聞こえた。




 戸愚呂の父は音楽家で、朝から仰々しい音楽をかける。




 だから、その旋律には聞き覚えがあった。




(『ニュルンベルグのマイスタージンガー』への前奏曲?)




 それは1800年代の巨匠、ワーグナーが作曲した中でもさらに派手派手しい音楽だった。




(でも、口笛のせいなのかとても悲しく思える)





「君はあの少年のことが好きなんだろう?」




「そ、そんなこと――」





 戸愚呂は背後の少女を睨む。




 けれども、その白い髪に白い肌、そして、人の心を根こそぎ奪い去ってしまうような琥珀色の瞳に、戸愚呂は二の句が続かなくなる。





「君はこう思っているはずだ。あの少年と仲良くしている少女が憎い。女のくせして少年と同性のように遊んでいるあいつが羨ましい」




「そんなことは――」





 ある。





「だから、我がその願いを叶えて進ぜよう」





 カタリ。




 戸愚呂のこめかみに拳銃が付きつけられる。





「しかし、男でもワームとなるとはね。我の声を聴き、我を見ている時点でそうなるかな。乙女心を有しているから、我が見える、ということか」





 白い少女は引き金を引き絞る。





「あの女に復讐するのはいい。だがな、あれは魔法少女だ。それ故に、別の可能性の萌芽を摘み取ってもらおう」





 キシャシャシャシャ。





 白い少女の笑い声が響き渡った。





 #####





「ほもぉの波動を感じる」




「パパスさぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあん!」





 ドラクエ5をしていたわたしは、突然立ち上がった司ちゃんを見る。





「どうしたの?司ちゃん?」





 それよりもパパスさんが死んじゃったよ!




 わたしのヒーローだったのに……





「ほもぉの波動を感じるのですわ!」





 部屋から飛び出して行った司ちゃんをわたしは追いかける。




 嫌な予感がした。




 昨日のツキちゃんが急に出て行った時と司ちゃんの姿が重なる。





「待って!」





 わたしは急いで司ちゃんの後を急ぐ。







 しばらくすると、目の前に気持ちの悪い化け物が見えてきた。





「人を襲ってる……?」





 むしゃむしゃと虫は女の子の胸にかぶりついていた。





「あれは一体なんですの?」




「ワーム、ドリル」





 突如として妖精が現れたことに驚いたけれど、わたしたちは目の前で起こっていることから目が離せない。





「あの子は死んじゃうの?」




「死なないドリル。でも、もうあの子ではなくなるドリル」




「どういうこと?」





 わたしは体の芯から冷えていくのを感じた。




 もうそれは恐ろしさを超えた何かだった。




 意識がどんどんと遠退いていきそうで――





「ワームは心の花を食べるドリル。特に、ワームや魔法少女が見える子を中心に襲うドリル。そして、心の花を食べられた子は――」





 わたしは耳を塞ぎたかった。




 今ワームに襲われている子が未来の自分の姿と重なって――





「心を失うドリル。自分が誰なのかも忘れて、何も考えられなくなって。そして、周りのみんなもその子のことを忘れてしまって。そして、いつの間にか消えてしまうドリル」




「そんなことって……」





 司ちゃんは大きな目をさらに大きく広げて言った。





「だから、君たちに魔法少女になってもらうドリル」




「君――」




「―――たち?」





 わたしたちは互いに見つめ合った。





「わたしは――無理っ!」





 だって、あの虫と戦うということは、自分もあの襲われている女の子と同じようになるということじゃない!




 そんなの、怖くてできるわけがない!




「別に無理にとは言わないドリル。でも、覚えておいて欲しいドリル。次の標的はお前たちだ。誰かが魔法少女として戦わないと、どちらも心を食われることになる」





 月のない世界に神はいない、と脅すように妖精は暗い声で言った。





「わたくし、魔法少女になるのですわ!」





 司ちゃんがわたしの一歩前に出て言った。





「分かってるの? 司ちゃん! 司ちゃんもあの子みたいに――」





 きゃあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!




 ワームに蝕まれている女の子から悲鳴が上がる。




 目から涙を流し、絶望に満ち満ち湿った目でわたしたちを見る。




 その瞳にはもう光はない。




 鼻から水っぽい鼻水を長し、口からは涎を垂らす。




 それはもう、生きているとは言い難い――





「わたくしには夢がありますの」





 司ちゃんは妖精からコンパクトを受け取る。





「わたくしはあの人の背中を追い求めたい。あの人と同じ場所にいつか立ちたいのですわ!」





 だから、と司ちゃんは続ける。





「わたくしは魔法少女になったあの人と同じように、魔法少女になりますわ!夢を叶えて見せますのですわ!」





 司ちゃんはコンパクトを掲げて叫ぶ。





「ドリーム・コンパクト! チェンジ・ザ・オウン!」





 司ちゃんは緑色の光に包まれて、体中が緑のシルエットになる。




 そこにコンパクトからリボンが飛び出し、体中に巻きつく。




 そして、光が弾け、魔法少女の衣装が完成する。





「魔法少女ナミ!ヒャッハーだぜ!」




「すごく胸が強調されてましたね!」





 変身中の母音は擬音がつくくらいにすごかった。




 一文字ごとにボインボイン言っていた。





「さあ。覚悟はよろしくてだぜ!」





 ごく自然とだぜ、が出ているけれど、お嬢様口調とあわさっているのはやはりナミちゃんだとわたしは思う。





「あれ? なんで――」





 なんでわたしは司ちゃんのことをナミちゃんだなんて――





「ドリームバトン!」





 ナミちゃんが叫ぶと胸が弾んで、コンパクトからバトンが飛び出す。





「バトン……何やってるの?」





 バトンは意思があるように、ナミちゃんの谷間に入ってトランポリンを楽しむように弾んでいる。




 ナミちゃんはそのバトンを鷲掴みにした。





「あとでお仕置きですわだぜ!」





 バトンがメシメシと悲鳴を上げる。





「ナミちゃん! 前!」




「え?」





 ナミちゃんに向かってワームが突進してくる。




 ナミちゃんは咄嗟にバトンを振るった。




 すると、ワームの体を黒い拘束具が覆う。





「まるでボンレスハムみたいなのですわだぜ!」





 なんだかワームの蠢く姿が、その、とても官能的に感じるのはどうしてだろうか。





「今だ!早くワームを倒すドリル!」




「え?どうやって!?」





 どうもさっきのはまぐれで魔法を使ったらしい。





 ナミちゃんが慌てていると、突然拘束具が弾けた。





「あれは――」





 桃色をしていたワームがだんだんと黒くなってくる。





「ヤバいドリル。ハザード化が始まったドリル」




「どういうこと?」




「早く倒さないとナミだけでは倒せなくなる――」




「えいっ!」





 ナミちゃんはまたもバトンでワームを拘束する。




 けれど今度は簡単に弾かれ、そして――





「きゃぁ!」





 ナミちゃんに向かってワームが突進してきた。





「え?」





 ナミちゃんは誰かに抱かれて空を舞っていた。




 その女の子は赤い髪の魔法少女――





「ヒカリちゃん!?」




「いやぁ、ずっと思ってるんだけど、なんだか私、主人公なのにすごく影が薄いっていうかさ……」




「ツキちゃん!」





 ツキちゃんはワームの突進を押しとどめていた。





「なんだか私がゴリラみたいだけど、すっごく辛いからさ、早く倒しちゃって!」




「おうよ!」





 ヒカリちゃんはバトンをワームに向ける。





「行くぜ!滅びのバーストストリームなのですわだぜ!」





「俺のセリフとるなよ!というか、その口調なんだか変だぞいつも以上に!」





 そして、ヒカリちゃんのバトンから魔砲が飛び出した。







「ふっふっふ。これも全て計画通り」




「なにをパパビルドみたいに言ってるんだよ」




「ヒカリちゃん、普通に魔女にツッコミ入れてるよ」





 またもわたしたちの前に魔女が現れた。





「ゴスロリとか、マジで趣味悪いよな」




「我は好きでこんな服装をしているわけではないが」




「こんな服装を強いられているんだ! なのですわだぜ!」




「逆に我、そこのおっぱいによく噛まないなと言いたいくらいだ」




「まあ、文字だし?」





 ツキちゃんは肩をすくめる。





「で?あんたが毎回大事そうに拾い集めてるそれはなに? ありったけの夢?」




「ひとつなぎの財宝ではない」





 クックック、と魔女は気味悪く笑う。





「まあ、それは2輪後くらいに明らかになるだろう!」




「もう、世界観ぶち壊しだな」





 ケシャシャシャシャ、という笑い声をあげて魔女は霞のように消えていった。





 ###########





「ねぇ、ナミちゃん。ナミちゃんが並び立ちたい人って――」





 わたしはヒカリちゃんの背中を見つめる。





「秘密、だよ?」




###





 そう。




 この世の中には秘密があふれている。




 それはいかようにして生まれたのか。




 それは簡単だ。




 不都合な真実を隠すため。




 知られたくない真実を隠すため。




 ただ、それだけ。





 でも、わたしは分かってなかったのだ。




 隠されていたことに憤っていた子どもは、その事実に反抗するものの、秘密を知った途端、絶望の淵に引きずり込まれる。




 サンタクロースの事実を知った子どものように。




 現実は夢見る子どもにとっては毒でしかなく。




 現実を知った子どもは時として、現実と言う毒に侵され命を落とす。





 そんな単純明快なことにこの時わたしは気付いていなかった。




 知らなかったのではなく、知っていないふりをして、気付かないように自分を偽っていたのだ。





 そして――




 わたしに真実の災禍が降りかかる――







 次回予告




「いやあ、実はナミちゃんはこんなキャラになる予定はなかったんだよね、と作者が言っています」




「対象年齢を無理矢理引き上げたから、その全てをわたくしが引き受けることになってしまって――だぜ」




「D.C.Ⅱが思ったより萌え萌えしててキュンキュンするぜ息子がよぉ、と作者が言っています」




「ただの作者語りになっているのですわ――のこと」




「突然外伝のキャラが!」






『次回、二次元キャラのおっぱいってどうしてああも横に広がってるんだろうか?』





 次はわたしの個別ルートなんですから、そんな題名やめてくださいね?(殺意)

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