一難去ってまた一難…?な薬剤師 村娘
大学受験は頭がおかしくなりそうですね…
はい!言い訳すいませーん!!
ラベリードさんの馬車に揺られて3時間ほどだった時。
「見えてきました!」
「本当か? おぉ、本当に村って感じだ。」
「薬芽さんは村に来るのは初めてなのですか?」
「あぁ、見たこともないな。」
元いた世界でも見たことはテレビの中くらいであり、生は初めてだ。村といえば独特の食べ物を食べていたり。(虫とか)異世界でも虫は食べるのだろうか?
考えたくないと思ってしまう時点で考えてしまっているのだけれども。少しだけ体が重くなったのを感じる。気持ちっていうのは大切なんだな。
俺の不安を他所にラベリードさんは村へと急ぐ。門番らしい青年が木でできている槍を地面に突き刺しこちらにお辞儀をする。
「ラベリードさん、こんにちわ…」
青年は挨拶をしてくるが、とても元気がない。ふむ、人間である俺が嫌なのだろうか。まぁ、そうだよなぁ。自分たちを奴隷のようにしているって話だもんな。が、どうやら違うようだ。ラベリードさんが何やら話している。何を話しているのか。多分、俺を連れている理由だろう。
「な!? ほ、本当ですか!?」
「えぇ、早く行きましょう!」
ラベリードさんは急ぐ。青年は俺を見るなり手を組みお辞儀をする。となると、毒の話だろうか。上手く解毒薬が作れたらいいのだけれども。そう思ってしまうほどに、青年の目は真っ直ぐにそして、希望に満ちた、英雄でも見るかのような目と合ってしまったのだ。
「これは、応えたいよな…」
「?…何か言いましたか?」
「いーや、なんでもないよ」
俺は話をはぐらかす。バックの中の回復薬を再び見る。緑色に輝く、エメラルド色をしたその液体は。正直効くのかわからない。本当は怖いのだろう。自分が作った薬がもし、全く効かずに無駄な希望を持たせてしまったとしたらと…
「着きました! こちらです!」
「わかった。」
冷静に見えるかもしれない。内心はいますぐにでも逃げたいほどに心が折れそうだ。効かなかったらどうしよう。それが原因で村から追い出されまた、一人になってしまったらどうしよう。不安が限界に達しそうな時。俺は、見てしまった。俺と同い年ほどの女の子が半身ほど紫色に変色しているという状態を。
なんて
なんて情けないんだろうか。効くか効かないか、とても大切なことだろう。だが、今この女の子には俺の作った薬が必要なんだ。効かなくても俺は薬剤師だ。治る薬を作らなければ、薬剤師とは言わない。ましてや万能型なんて付いてるんだ。俺に[直せない薬]などない!
そう思い込むことで不安が自信に変わった。いや、不安が消え、自信が俺の中を駆け巡る。
バックの中から回復薬を取り出す。それを女の子に飲ませる。ラベリードさんが不安そうに見ている。が、もう俺は不安と思わない。俺が作った回復薬を信じる。
全て飲み込んだ女の子の体から、半身のうちの2分の1ほどが紫から肌色に変わった。けれどもまだ治りきれてない。いや、毒が治っていないのだ。例えば、毒だけを取り出せても、元々食らっていた毒によるダメージが残る。今回はその逆だ。ラベリードさんが口を開く
「毒が…残ってしまったのですね…」
「…くっ……」
クソッ! 回復薬で治っていれば…
ピコンッ
「ーーーッ!?」
「おわっ!? どうしました?」
不意に俺のステータス画面から音がなる。
その画面には解毒薬という文字が見える。解毒薬…!? でも、ラベリードさんは解毒草でも治らないと言って…いた…
けどこれは解毒「薬」
草より薬の方が効くはず。いや、効く薬を作るんだ! 俺はすぐさま解毒薬と書かれている文字を押す。瞬間、持っている回復薬の蓋が開き緑色の液体が宙を舞う。それだけじゃない、後ろから何やら紫色の草が飛んでくる。まさか、これが解毒草だというのか? 試しに鑑定で見てみると、そこには確かに解毒草と書かれていた。まさか、解毒薬を作るために必要なのが回復薬と解毒草だとは…
液体の中に草が10本ほど入り込んだ時、全体的に光り出した。これは、うまくいったのだろうか? この一連の光景を見ていたラベリードさんはというと
「お、おぉお!!?」
と最初こそ驚いていたが混ざり始めるところを見た瞬間
「…………」
口をあんぐりと開けて停止していた。確かにこんな現象を前に戸惑わないなんてできないよなぁ。俺は宙に停止したままの液体を見ていた。…この後どうやって瓶に入れればいいのだろう…
どうしようと悩んでいると元々回復薬が入っていた瓶に解毒薬が入っていく。なんとも便利な…
「あ、早く飲ませないと」
「ハッ!? そ、そうでした! さぁ、これを…」
呟くと、ラベリードさんの意識が戻ってきたようだ。村娘の口に解毒薬を流し込む。こくっ こくっと飲む音が静寂の中ただ一つ響いていた。
全て飲み切ると紫色がみるみるうちに無くなっていく。最後には元々毒などなかったかのように綺麗な肌へと戻っていた。
「治った…のか?」
「…治り…ました…」
ラベリードさんは静かにそう言った後。今度は強く、村全体に届くだろうとも思うほど大きな声で
「毒が!!! 治ったぞぉぉおおおお!!!!」
「「「「「「おおおぉぉ!!!!」」」」」」
「!!??」
と、声を上げそれに続くかのように、いつのまにか家の周りにいた獣人達が雄叫びをあげまくる。てかうるさっ! 思わず両耳に手を当て咄嗟に音を遮断する。それでも皆の喜びの声が聞こえてくる。
最初こそうるさいと思えていた声が、今では俺も一緒になって喜んでいる。ある者は両手を挙げ雄叫びをあげ、ある者は神に祈りを捧げるかのような姿勢で泣きだす獣人すらいる。そんな中俺は「次はうちに来てくれ!」や「うちの夫も救っとくれ!」と引っ張りだこになった。そりゃそうか、村全体を苦しめてた毒が治ったのだ。直して欲しい者は多いいだろう。けれど俺の体は一つしかない。先に重傷の者からということで約二十人の毒を治した。途中回復薬がなくなったが、村の人から大量の薬草と水、そして解毒草を貰い調合で人数分を作った。
この村に着いた頃はまだ太陽が傾き始めていたぐらいだったのが、今や夕焼けが見えるほどの時間が経っていた。そして現在、村ではお祭り騒ぎで中心には俺が座っていた。皆が家から出て広場的な場所に集まり、様々な料理が各家庭から出てきた。その料理を俺は食べさせてもらっていたのだが、失礼な話味が薄かった。何というか塩が入ってない。素材だけを使ってます。という感じなのだ。そこそこ残念な気持ちを抑えてラベリードさんと話をする。が、だいぶ酔っているのか何度も俺に対してお礼の言葉を述べてくる。
「この度は村の危機を救ってくださり、本当にありがとうございます。」
「いや、何度目ですか。それに何度も言ってる通り、ただの偽善でやったことです。後々報酬ももらうつもりですからね。」
「えぇ、えぇ、それはもちろんです。ドーンと貰っちゃってください!」
「それ、村の獣人の言葉ですよね…」
俺がツッコミを入れると、一番最初に直した村娘が俺の前まで来た。
ていうか、村の同意も無しに報酬を増やすって言っちゃったよ。大丈夫かな? このまま偽善者のように何もありませんのでって言って隣の国に行った方がいいよな…
「あ、あの、毒を治してくださったのって…」
「隣のラベリードさんです」
「え!? そうだったんですか!?」
「いえぇ!!? 薬芽さんでしょう!?」
いやまぁ、そうだけども。
「えぇ!? 何で騙したんですかぁ!」
「照れ臭かったのでー」
「何を仰います! 薬芽さんは村を苦しめていた毒をーーーー」
「あ、とりあえず無視しときましてー 何かご用で?」
「はい! 助けていただいたお礼にと思い、何か要望を聞きに」
周りを見るとほかの獣人たちも見ている。となるとこの娘は村の代表としてお礼を聞いているのか。
「お礼かぁ」
「わ、私は体は清いままでございます!」
「ん? へー そうなんだ」
適当に流しておく。別に助けたから体で払えとは言ってないだろう。全く何を思って…
「あれ? おい情報と違うぞ?」
「あぁ、おかしいな人族は大体の奴らが体で払えと言うのに」
「薬芽さんはそこらの人とは違うのですよ! いわば変人ですな!」
「なるほどな、それなら納得できるな!」
「あぁ! 獣人に優しい時点で人とは思えないしな!」
はっはっはっ と笑っている声がする。てか、ラベリードさんから変人呼ばわりか。割と落ち込むもんだな。あと会話してる一人が「あぁ」としか言えなくなってきてんじゃねぇか! 飲みすぎだ!
さて要望か、本当に思いつかないな。これから獣の国と呼ばれる場所に行こうと思うし……そうか! 俺は一つものを要求した。
「そうだな、隣の国への道案内を付けてくれ」
「へ? そんなことでよろしいのですか?」
「あぁ、冒険者になりたいんだ」
「冒険者…ですか…」
村娘はここで顔が俯く。どうしたのだろうか、何か変なことでも言ったか? 冒険者ってまずかったのかな。
少しの時間が経った後に、村娘はバッ! っと顔を上げた。
「案内役を、私にやらせてください! それから、私も冒険者になりたいんです!!」
「え? じゃあお願いしますね。……え!?」
「「「「「「えぇぇえぇ!?!!?」」」」」」
「お願いします!」
その場にいた者達はもちろんのこと、少し遠いいと思うところにいる者までも驚いた。
俺は病み上がりだけど平気なの?って言う、え?、のつもりだったのだが。それでもこの異常なほどの村の動揺は、女の子が(冒険者になるのはやめておけ)と言うように聞こえた。
でも、美人さんなんだよなぁ。
またこれからも書きますよー