気の良い兵士と仲良くなる薬剤師は気分良く国を出て行く 兵士
三日に一話ぐらいしかかけないのがつらみ
城から追放された俺は、投げ出された小袋を持ってとあるお店には入っていた。お店の名前は{道具屋 リエーテ}置いてあるものをみているが、道具屋よりも雑貨屋のイメージが強いお店だ。そのお店で俺は干し肉を5枚ほどと、水筒の役割だという皮質の袋を買った。総額で銀貨1枚だ。
店主から通貨を教えてもらいお店を出る。この世界は金貨が一万円、銀貨五千円、大銅貨千円、銅貨百円、小銅貨十円と表されているそうだ。つまり、俺がさっき買ったものは干し肉が1枚銅貨五枚、皮水筒袋が大銅貨二枚に銅貨五枚かかった。干し肉が1枚銅貨五枚というのは少しばかり高かったような気がしたが、これから[国の外]に行くのだ。別に気にしない。
王様からもらった袋には銀貨が5枚入っており、日本円で二万五千ほど持たせてくれたというわけである。もらった当初はこのぎんかにどれほどの価値があるかなど、わかるわけもないので少々不安があった。が、道具屋で通過を知ることができ、不安も消え去っていく。
そんなことを考えている間に門が見えてきた。その横に腕を組んでいるのだろうか、仁王立ちでたっている兵士らしい格好をした人がいる。
「ん? そこの、止まれ」
否、兵士らしいではなく兵士だ。
俺は止まり顔を合わせる。さて、なんと言われるのやら。
「まさか、この国から出るつもりか?」
「ええ、その通りですが」
一応敬語で答える。その後兵士は驚いた顔をして少しの時間固まっていた。が、すぐに顔が戻り返答し返す。
「そうか、なら気をつけると良い。 国の外は魔物が多く、盗賊も多い」
「忠告ありがたく受け取らせていただきます」
忠告をしてくれた兵士にお辞儀をし、先を急ごうとする。そんな俺に兵士はまたもや驚いた顔をした。今度は顔は戻らなかった。
「....おまえは本当に召喚された奴らの仲間なのか?」
「え?」
思わず足が止まる。なぜここでクラスメイトのことが出てくるんだ? 俺がはてなマークを浮かべ止まっていると兵士は少し慌てたように言葉を出す。
「あ....い、いや、実はつい最近王様が異世界から勇者を召喚したと聞いてな。そこで働く同僚に話を聞いたんだが、どうにも礼儀がないというか。好き勝手にしすぎているとな」
「なるほど、それは失礼いたしました」
「君が謝ることはないんだ。が、君の格好がその召喚された奴らと特徴が似ていてな。それに君はとても丁寧で礼儀正しい。同じとは思えなくてな。こちらこそすまなかった」
兵士も頭を下げる。直感ではあるが、この人はとても親切で優しいのだろう。でもなければ初対面で忠告などしてくれない。さらに自分の先入観が間違っていたことに対して、きちんと謝れるほどに冷静だ。これは並の人ができることじゃない。
ていうかなんで俺が謝る必要があるんだ。少しばかり怒りが芽生える程度には、恨みがある。ま、今恨んでも仕方が無い。
「いえ、悪いのはそもそもあいつらですから」
「ふっ....そうか、そうだな。私たちではないな」
二人して笑い合う。気さくな人でもあるのだと感じられる。
「そうだ、これから旅をするつもりなのだろう? ならいいもんがあるぞ」
「ああ、旅みたいなもんだな。ん? いいもん?」
「おう、確か....この辺に......お、あった」
兵士が取り出したのは、一枚のローブだ。そのローブを俺に投げつける。
「うお! いきなり何すんだよ」
「なに、ここであったのも何かの縁ってな。それに、そんな布みたいの一枚じゃ私が心配だ。遠慮なんてせず着てくれよ」
「そんなに言うなら頂くよ。ありがとな、兵士の兄ちゃん」
「あ、それと私の名前はクロムだ。クロム=イリナムだ」
「俺は薬芽 実。なんで今更?」
兵士もといクロムが投げたローブを、俺は地面につかないようつかみ取る。クロムがくれたローブは、俺が着るとぶかぶかになるくらい大きい。足下についてしまうか不安になるほどだ。そして、ローブを着た俺に対して名前を教えてくれた。名乗るならもっと前で良いのでは。もしくは名乗らなくても良いのではと思っていた。が、クロムは名乗った。なぜ?
普通に気になるので聞いてみた。クロムはやれやれと言ったように言葉を発する。
「そりゃ薬芽、おまえは名乗っておかなきゃ第一印象で呼び名を決めるだろ? それじゃちと悲しいぜ」
「む、そうか、そういえば名前でなんて呼んだことないな」
「そうだろうと思ったよ。じゃ、後は気をつけてけよ! 薬芽!!」
「ああ、元気でな。クロム」
互いは手を振り、名を呼んで背を向ける。が、別についさっき知った中だ。悲しいという感情は無い。それどころかいい人と会えて逆に気分が良い。スキップしたい気持ちを抑え込み、歩いて行く。ただ一本続いている道を通って......
次回で主人公、薬芽 実の容姿を書きます。