機械と私は鬼のいない世界へと向かう。6
「――でして……皆様!」
チャールズが両手を叩き皆の注意を惹いた。研究者というのはどうにも話が迂遠になるようでいけない。どうやらここからが本題のようだ。
「そこにおいでになられているのはヴィンセント博士です。博士、自己紹介を」
「あっ、ああ、私がか。みなも聞き疲れているだろうから手短に話すが。私は時間の不可逆性について、研究というか論をまとめている者だ。簡単に言うとタイムワープが可能か否か、そんな事をね。今回はなぜ私が呼ばれたのか知らないが、役に立てるように知恵を絞る役割を担っていると感じている。どうぞよろしく」
「後は地質学者のケビン博士、考古学者のハインリヒ博士を迎えています。ここまでで何かご質問は」
「いいから早く何を俺たちにやらせたいのかはっきりさせてくれ。こんな変てこな集まりはないぜ」
あまりに話題が先に進まないので、呆れた兵隊風の男がチャーチルを急かす。チャーチルは相変わらずにやけ顔で返事をする。
「はいはい、皆様も大変興味がおありになる事は分かりました。では、本題へと――」
チャーチルがせせこましくプロジェクタを操作し次々と図を早送りにする。
まだまだ説明する気であったのか。
そして、あの巨大な輪の機械の画像が表示された。
「――これですこれです。皆様も見ましたあの機械こそが。これが我が研究スタッフが完成させた超エネルギー加速器クロノス‐1です。詳しい説明は出来ませんが、反重力制御により局所的なワープゲートを作る事に成功したのです!」
「そんな馬鹿な。幾らエネルギーがあって亜空間への入口が出来たとしても出口はどうするのだ。仮に同じ装置を作ったとしても場の影響が全く違うではないか。入ったら最後、出口はないぞ」
「博士のおっしゃることはその通りですが、同じ条件の場が存在するのです。この世には。そこへと繋いで行き来できるようになりますのです。はい」
「同じ条件が何時まで続くのだ。一時間か?一分か?一秒も同じになったとしても奇跡だ」
「はい。ですから、博士をお呼びしたのです。博士、ご質問が。もしこのワープゲートが繋がるのが現在ではなく過去だとしたら」
「タイムワープのための装置なのか。それなら。いや、だがやはり無理だ。パラドックスはどうする?過去からの影響が現在に加われば何を行っても無に帰すだろう」
「そこは安心してください。パラドックスは我々の実験によっては確認されませんでした。もしかしたら既に影響が合っても我々が気付かないだけかもしれませんがね」
「もう過去へ行っているのか……。なぜ早く私たち学者に知らせてくれなかったのだ」
「それについては弁解の仕様もありません。主任が私的に独断で実験をしていましたので――」
あまりに突拍子もない話に思考が止まっていたが、ただの研究員が独断で動いて、未だに研究所にいられるものなのであろうか。
「――しかし、興味深い事が判明しました。時間の不可逆性はやはり覆せませんでした」
「いやそれはおかしい。タイムワープが出来たのではないのか?」
「ええ、ワープは出来ます。過去の様な場所へ。ですがあくまで過去の様な、過去でない場所なのです。所謂パラレルワールドであると我々は考えています」
「その確証はどこに」
「ええ、一度過去と思われる世界へ行き、ちょっとした物を盗んできたのです。そして、その過去の未来の様な世界。少し分かり辛いですね。そこへ行ってきましたのです。そしたら何と――」
チャーチルはそこでより一層嬉しそうに笑った。




