機械と私は鬼のいない世界へと向かう。5
私たちは研究所のかなり深くまで行かされるようだ。
ガラス越しに何やら怪しげな研究がなされている風景を何度も通り過ぎた。
先頭を歩くチャーチルの足取りは軽い。
ただの若者だと思っていたがこの若者も意外と大物であるのかもしれない。
様々な研究に目移りすることなくただ前を向いて目的地まで歩んでいる。
「さあ、もう少し先が我が研究所です!皆様、最後に人間によるチェックが入りますので手荷物を係員に渡してください」
何人もの人間に監視されたゲートが見えた。どの人間も全身に強化スーツを纏い武装している。
係員というには少々物騒だが、ここの研究がそれだけ重要なのだろう。
それにしても最後に原始的な方法でチェックするなどあまりに意味がないと思われるが、係員の一人でも買収すれば何かを中に入れる事など容易いだろう。
それにしてもどの係員も同じような背丈である。
何か背丈に関する採用規定などでもあるのだろうか?
私たちはその不自然な監視の中をパスし、研究所の中へと招かれる。
中も不思議な空間であった。
中央に巨大な輪があり、それから扇状に幾つものチューブが各機器へと繋がれている。
何かの研究をしている様子はない。
ここで私たちは何をさせられるのだろうか。不安が一瞥をくれる中、中央の輪の機械を弄繰り回す老人と目が合った。
笑っていた。とても楽しそうに。
「おやおや、皆様到着がお早いですな。私がこの研究の主任研究員です。紹介は……要りませんな。これから皆様にはそこのチャーチルが説明いたしますので、皆様よく聞いて飲み込んでください。皆様の命にも関わる事ですので」
老人はまたにやつきながら機械弄りに没頭するように頭を機械に突っ込んだ。
「彼はあれを調整するのが好きですから放っておきましょう。皆様はどうぞこちらへ。装備一式などもありますので」
チャーチルに通された部屋には文字通り武器庫であった。複数の入口があり、壁一面に過去の実弾の物から現在のプラズマ銃までが取り揃えられている。
こんな所に武器を置いてどうするのか。ただの趣味の部屋のようにも見える。趣味にしては大げさすぎるが。
「皆様はどうぞお座りになってください。立体プロジェクタで図を用いて説明しながらなのでどうぞお寛ぎになってください」
私たちが席に座るのを確認するとチャーチルは満足げに笑った。何がおかしいのか。
「ではまず今現在の世界の資源事情について――」
私は集まった面子を順に眺めた。知っている者も何人かいた。部屋には総勢四十人ほどがいる。
若い者は三割にも満たない。
中でもロン毛に無精髭の無頼漢カルロス・ロドリゲスがいるのが私は気に入らない。
あの男は麻薬カルテルとの癒着の噂もあった男だ。軍属というより犯罪者の私兵に近い働きの数々が知られている。
軍隊にいた際も上官殺しの嫌疑、部下への虐待の疑い、上げ出したらキリがないほどの悪人である。
「――です。これが現在の世界情勢ですね。それでは今回の任務の説明の前に装備について――」
私の視線に気付いた奴がこちらを睨んでくる。
普段から睨んでいるように皺の入った顔だが、直視すると凄味がある。
今にもこちらに食ってかかりそうな表情だ。
奴から目を背ける。
やはりこいつはまともではない。イカれている。
私の知り合いもこいつと同じ部隊の時に死んだ。
数年前に除隊したと聞いたがなぜこの施設にこいつが呼ばれたのか。軍属以外の者もいるということか。
「――で、こちらのサイバースーツは環境調査の機能もありますので人間に害がないと判明するまでヘルメットは脱がないようにしていただきます。それからこの銃はマルチウェポンになっておりまして実弾、プラズマ弾と他にも信号弾、煙幕弾など各種取り揃えておりまして――」
そう言われてみればおかしな連中もいた。兵隊にしては華奢な者は何かの研究者か。チャーチルの話を聞く限りでは私たちは何処かへ向かわされるらしい。ならばこんな研究所にわざわざ来ることもなかったのだが。




