機械と私は鬼のいない世界へと向かう。4 集まる人々
とても嫌な予感がしていた。
長年この国の兵士として尽くしてきた私の突然の研究所への人事異動。
私だけではない。
何人もの兵士が国家の域を越えてこの研究所へとその所属を変えていた。
衛兵の新規採用にしては若い兵士の数があまりに少ない。さながら、特殊部隊でも設立するかのように歴戦の強者たちが選ばれている。そんな様子であった。
私はデビット、デビット・レインだ。
西暦二千二百十四年。
私たちのひい爺さんのそのまたひい爺さんたちが子供の頃に夢見ていた、宇宙開発などの発展は芳しくなく、当然宇宙人などとも人間は出会っていない。
この太陽系から未だに人類は出ていない。
人工コロニーでの宇宙での生活なんてのもまだ夢の話だ。
その理由は科学の発展に地球が耐えられないのだ。
資源が足りない。
人間のインプットとアウトプットがどんなに優れていても肝心な資源のリソースが足りないのだ。
構想はできても実験出来ない。
試験が出来ないのだから実現も出来ない。
これにより自ずと技術革新のスピードも低迷した。資源を巡る戦争も起きた。
平和になったのはこの二十年だ。
今は無い某国の資源開発チームが開発した太陽光発電の次のステップ、超太陽光発電によりエネルギーの確保は出来た。
これも戦争の一因だったのかもしれない。
エネルギーパックからの莫大な電力を頼りにしたプラズマ銃や砲が主流となり、無駄弾があまり無駄にならずに戦争が出来るようになった。
これは馬鹿にならないエネルギーが必要であったがその分は超太陽光発電で十分すぎるほどに補える。
私たちに足らないのは物理的な資源だけとなった。
これはエネルギー危機なんてのが笑い話に吹き飛ぶほどに人々の心を蝕んだ。
目に見える物が足りないのだ。こんなに分かりやすいことはない。
隣の家では新型の電子機器があるのに自分の家にはない。
そんな民間人のような馬鹿げた理由で私たちは闘いあった。
それが終わったのが二十七年前、これはただ単に人ですら資源であるといった価値観が浸透してきたのも原因だ。
人間の尊厳は踏みにじられ、ただ糞尿を作る機械として人間が生きている。
死んだら土に還して田畑を耕す肥料にする。
それまで戦争を一種の経済的行為としてきた人間は戦争にその意味が薄くなると呆気なく手と手を取り合って人間を管理し始めた。
反対する人々の組織もこの七年で息を潜める程にまで衰えた。
私だってその一因だ。
人間を人間として扱わないのが間違っていると思いながらも人間を資源として扱う新しい国のやり方に反発出来ずにいる。
分かっているのだ。
私の反発など無為に帰すという事が。
分かっているのだ。
人間らしさなど妄想でしかない事が。
私たちが研究所に着くと一人の若い研究員が出迎えてくれた。まだ新人であるのだろう。
「皆様、ご到着ですね。私は研究員のチャーチルです。これから皆様へここでの研究の簡易な説明とこの地での仕事について説明したいと思います。では皆様、こちらへ」
少しふざけた調子である。
ひょうきんな若者がにこやかに中へと案内する。とても機嫌がいいのか。それとも性質か。頭がいいのか悪いのか分からない若者である。
一つ、二つと幾つもの研究所のゲートを通る。
かなり重厚なゲートだ。チェックも厳重なようだ。これまで何度も何かのセンサーの上を歩かされてきた。手荷物などの規定はないようだが、これなら規定などいらないな。




