機械と私は鬼のいない世界へと向かう。31 狂った世界
「そんな……こんなことが……」
私はここに来るべきでなかった。
合うべきでない物に出会ってしまった。
私のテレパスで最後に分かれたチャーチルの通信があったのは十分前ぐらいか。
肉の倉庫を。
人の臓器の倉庫を見つけたと最後に伝えてきた。
逃げろと。
ここは人間の棲むところではないと。
ゲートで待機していた最後のこの世界を共に生きる私もあちら側に逃れたのだろう。
テレパスが全く通じなくなった。
逃げろと伝えられた時には私たちは既に囲まれていた。
複数の私に。
その私たちに案内されて今、おそらくこの施設の中枢に私はいる。
着いて来ていた他の者は別室に通されてしまった。
「まさか、私もこんな事は予想していなかった。まさか、私が訪ねてくるなんて」
目の前の機械、その中央の画面には大きな私の顔が移されている。
「どうしてテレパスが通じないんだ」
「そうか、まだ分かっていないのか。私は人間の姿を捨てたのだよ。あの複数の私は機械だ。そして私も。機械に自分の頭脳を、記憶を移植したのだ。永遠に生きるために」
「なぜ?」
「私なら分かるだろう。私の発明したゲートには欠点があった。過去へ戻る事が出来ても他の世界に繋げることが出来なかったのだ。しかも全ての存在を。生きる物を見境なく同時に過去へと送ったのだ」
「何を……私たちは平行世界へのゲートを開発したのですよ」
「そうなのか?君はそんな若さで私が数百年費やして作ったゲートを」
「私たちは、ただランダムに繋げる物しか作れませんでした。同じ条件の場所へのゲートを開く事が出来るだけでした。あなたの場所を選ばずゲートを繋げる装置の方が――」
「私たち?そうか私が複数いるのかそちらには」
「――他の私たちに協力を仰がなかったのですか?」
「私は過去へ戻れただけだったのだ。過去の自分は全て始末した」
「それがこの技術力の答えだと?」
「私は何度も行き来した。過去へと。その度にゲートの完成度は高まった。当然だろう。しかし、その度に現在からの人間と過去の人間とでゲートを奪い合う争いが起こり、世界は崩壊した」
「我々の世界では各国は手を取り合っています」
「それはただの幻想だ。同じ人間が二人同時に存在する世界では、人間のパンクした世界ではな。私は何度も過去へと全ての生命を伴い戻り、遂にやっとの思いで完成させた。自分を機械の体に写したのだ。それからこの悪夢のサイクルを抜け出すためにゲートで平行世界への扉を開ける実験に明け暮れた。」
「それが今の状態だと?」
「ああ、あちらの世界で人間が生きるための資源と人間のパーツ、そして人間が永遠に生きるための機械の体を作っている。しかも機械には人間の感情でエラーが出ないように人間性を学ばせている。私たちは悪夢から抜け出したのだ」
「貴方は……」
「君も私と共に来い。人間の未来へ。人々が永遠に幸福である世界へと進むのだ」




