機械と私は鬼のいない世界へと向かう。25 静寂と伝達
静寂だ。
ゲートの向こうは今、完全な静寂に包まれていた。
私たち居残り組はゲートの向こうで機械人形たちがあわただしく去っていくのをただ見るだけであった。それからしばらくしても何も起きない。
「機械たちはなぜ帰ったんだ?」
誰も答える事は出来ない。
「今、探索組が三手に分かれたようです。」
「チャーチル博士、我々はこのままでいいのか?何か出来る事は?」
「博士たちを危険な目に合わせる訳にはいきません」
「だが、私たちはあの向こう側がどうなっているのか調べるためにここにいるのだろう?」
「ですが――」
「今なら大丈夫そうだ。あっちに行ってみよう。研究所の博士たちにも何か伝えなければ」
「戻る事は出来ないのですよ。言葉も届かない。ただ向こう側が見えるだけです」
「なら文字だ!何かに文字を書いてゲートから伝えよう。今のこの状況を伝えるにはそれしかない!」
「そうですね。元の世界の私たちにテレパスで情報が伝わらないのであれば、それしかないですね」
「そうでしょうなら何か文字を表示する物は――」
「ないですよ」
「なら、戻るしかないな。機械人形の世界の中に」
私は言ってしまった。危険を顧みずにそんな行動をするしか通信の手段は無い。しかし、誰があの機械たちに襲われる場所に戻るのだ。
「――そうですね。戻りましょう。何か今の現状を伝える方法を、他には思いつきませんし」
「こんな時に原始的な手段が一番必要とされるとは」
「私が一人ついて行きましょう。こちらの世界にはチャーチルが三人もいれば十分でしょう。元の世界に状況を伝えるにしても私でなければ、あちらの私たちが信用するはずもありませんし」
「ではデビット様、どうしますか?何人ほどで入りますか?」
不味い。私が行く事はもう決まっているようだ。
「いや、私はここに残って――」
「デビット様と博士たちを含めて、後十人ほど付いて来てください。この場にはあまり人数を置いておいても仕方がありません。それでいいですね?デビット様?」
どうにも引っ込みがつかなくなってしまった。
「ああ、分かった。あちらで何か文字を表示する方法を見つけたら研究所のチャーチル博士たちに伝えて、私たちはまたここに戻ってこよう」
言ってしまった。私は逃げ出したい気持ちになった。機械たちと戦った時の元の四分の一の人数だ。これでは襲われたらどうにも耐えられないだろう。
「ええ。では人数を分けましょう。皆様、ご武運を」




