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機械と私は鬼のいない世界へと向かう。23 親

 女が走っていくのを見た。その隣には監視者がいる。

 

 あの時の男女だ。


 だが、あの時のように監視者から人らしさをあまり感じない。

 なぜなのだろうか?

 明らかに動きは前より自然であるのに。


「エミリー、何が気になる?」


 私はこれを運命だと思った。二度もこんな珍しい人間と監視者に合う事などあるものではない。


「エミリー、何処へ行く?」


 私は気になって仕方がない。なぜあのように人間らしさを持っていたのか。

 なぜ今は人間らしさを失ってしまったのか。その答えが知りたい。

 私とヘレシーのこれからのためにも聞かなければならないと思いたった。


「エミリー、あそこは駄目だ。お前の入る事が許されていない場所だ」


 私の行く先を見てヘレシーが私を諭す。

 ノアの塔に女たちは向かっているのだとその時気がついた。私の設計図がある場所。

 私が人間と言える物であるかどうかの答えのある場所。

 そこに向かい女が走っている。


 これはやはり運命だ。


 この女はあの塔で何かをしようとしている。それが何なのかも知りたい。

 塔の中で私の設計図も見たい。

 こんな贅沢な事は無い。

 一度に知りたい事が三つも知ることができるかもしれないのだ。私は女を追う速度を速めた。


「エミリー!」


 ヘレシーが私の手を引っ張る。


「痛い。痛いよ。ヘレシー離して」


 ヘレシーがはっと手を離す。私は急に手を離されて転びそうになった。ヘレシーがすかさず私の体を支える。


「あの人たち何か変よ。ヘレシーは何も感じないの?」


「塔に向かっているな。それを監視者が止めようとしては……いないのか。だが、それだけだ。エミリーが塔に向かう理由にはならない」


「そんなことないわ。今、あの塔は警備が手薄なんでしょう?私は町の警備が向かっているのを見ているわ。なら中で何かする気でしょう?ヘレシーはいいの?中で人間に暴れられても」


「私にそのような命令は無い」


「ヘレシーの親なんでしょう?自分の感情で動くならどうするの?」


「だが――」


「人間なら親を助けるわ。ヘレシーは人間の様になる事が命令何でしょう?なら人間の様に親を心配して助けなきゃ」


「――うむ」


 ヘレシーは考え込んでしまった。

 まだ意思が。動物の様に同族を守るように動く意思が芽生えていないのだろう。

 私はヘレシーの手を引くとノアの塔へと向かう。


「私たちであの人たちを止めましょう。そのために中に入るのよ。それだけ。それだけならいいでしょう?」


 ヘレシーは悩んでいる。

 だから私に引き摺られるように塔の方へと近づいて行ってしまっている。

 私はその事を利用して塔への道を進む。


 あの女に聞きたい事がある。

 あの中で調べたい事がある。

 私の行動原理はただ私のために動く。

 それが人間として大切だと知っている。


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