機械と私は鬼のいない世界へと向かう。16
「それで?攻撃を受けた時はどうする?諦めるのか?」
「その場合は……ええ。ええ。他のパラレルワールドへと繋げ直すそうです。それで――」
テレパスというやつか。こいつも他のチャーチルと変わらないな。
「――どちらにしましても、こちらの指示に従うようにと」
中央の爺さんがこちらを向いていた。
やはりあの爺さんがこの集団の頭か。
こちらを向いて爺さんが笑いかけてくる。良い気分ではない。
ここにいないのにこちらの会話は筒抜けであったのだ。気に入らない。
俺は銃を弄りながらこの場を抜け出す算段を立てる。
銃のモニタの項目をころころ変える。
実弾――鉄鋼弾にスラッグ弾、散弾もあるのか。
まず中央の爺さんをスラッグ弾でふっ飛ばし全体の頭を潰す、その後に鉄鋼弾か。
散弾はあの強化スーツには効かないだろう。
プラズマ弾――これなら確実に一人ずつ倒せるが、あくまで一人ずつだ。
貫通するほど威力を高めたら連射が利かない。
グレネード――榴弾、フレシェット、フラッシュにチャフか。
発煙に焼夷弾、照明弾もある。
ごみためみたいな銃だな。
何でも詰め込めばいい物でもないだろう。
閃光弾にチャフ、煙幕はテレパスのないこちらが不利になるから使えないな。
他もこの場でチャーチル共を蹴散らすには使えそうもない。
他の者が俺についてくる保証もないしな。ここで殺し合うのは流石に無茶か。
「ゲートが繋がります!皆様!離れて!」
一人のチャーチルの叫び声に俺たちまともな人間たちの間に緊張が走る。
輪状の機械の中央から徐々に何かが姿を現す。
けたたましい耳鳴りの様な音と共に、何か空間に裂け目が広がるかのようだ。
しばらくするとそこからあちら側を除く程度の穴が見えた。穴の向こうには何もいないようだ。
その先には俺の後ろにある研究所の扉と同じような扉が見える。どうやらどこかに無事に繋がったようだ
。
「異常は……ないようですね。皆様!ゲートはさらに広げますので注意を!まだこちら側を窺っているだけかもしれません!」
結果的にあちら側から何かが攻めてくる事などなかった。空間の裂け目から向こうは静寂を保ちながら、俺たちが入ってくるのを出迎えているようだ。
「皆様、お待たせしました。ここから先が新世界。未知のパラレルワールドです。任務は先に説明した通りです。どうぞ、お気を付けて」
急かされるようにして戦闘の人間たちが中に入らされる。その後にチャーチルと思しきフル装備の者が二名入っていく。どんどんと中へと通されていく。
「このゲートは何かがない限り開けておきます。皆様にお付きの我々が任務遂行のサポートを致しますので」
先に当たら側へ行ったチャーチルが叫んでいる。不用心だ。まだ様子を窺われているかもしれないと言ったのはお前らであろうに。
「カルロス様、どうぞ行ってください。私たちで最後です」
双子の片割れのチャーチル――俺はこいつをツインズと呼称する事にする――が俺の後ろで博士や最後尾の兵隊たちを前へと進ませる。
もう中に入るしか、中でこの状況をどうにかするしかないようだ。
俺は覚悟を決め手に力を入れる。
何時やるか、何時チャンスが来るか、見逃さないようにしなければならない。俺は生き残るのだ。こんなイカれた科学者集団に俺を殺させはしない。




