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機械と私は鬼のいない世界へと向かう。14

 万が一、奪われた時の危険を機械は分かっているのだ。

 武器などを扱った事がない私たちの中には戦える者など一握りしかいない。

 それもシドの言うには本能的に行える極めて原始的な鈍器で殴る程度のことしか経験がない者ばかりだ。


 私だって、このナイフの扱いなど知らずに初めの内は色々手こずった。

 これが物を切る物だとすら教えられていないのだ当然である。


 シドは銃などと呼ばれる物を作ろうともしていたが、彼の知りえる知識でも到底作る事など出来ないのではないだろうか。

 基本的な機械の仕組みや設計図などはデータベースに載っていた事を私も知っているが、殊更闘いの項目になると歴史的な事実や抽象的な物ばかりで私たちに戦う知恵を付けさせる隙などなかった。


 人間の技術はかなり衰退しているのだ。

 過去にいくら繁栄していたとしても今は違う。

 機械はそれを知っていても私たちには知る術がない。


 それを考えてもシドは天才である。人間が断片的にしか知り得ぬ物を一人で作り上げてしまう。

 彼がいなければ私たちはまだ機械に飼育される家畜のままで、適齢期を過ぎているダニーなどは既にこの世に生きていなかったであろう。


「ミゲル、あれはないぞ。一人で監視塔に入るなんて今度言ってみろ!監視者に引き摺らせてでも連れ帰るぞ」


 ダニーには心配をかけてしまったようだ。監視者の遠隔コントロールポッドから顔だけ飛びださせて私に向かって叫びかける。


「一人じゃいかないさ。次はもっとましな機械の相棒を連れて行くよ」


「俺の操作じゃ不満だってのか?」


「違うさ。外でも言っただろう?あまりにもこの屑鉄が頼りないからね。シドは改良の準備かい?」


「爺さんはまた奥に引き籠っているよ。新しいアイディアでも浮かんだんじゃないかな」


 シドは時折、自室で何やら作業をする。

 その時々によって機材などを入れたり出したり、私たちには中での作業を見せてはくれない。

 シドも心配症が過ぎる。技術を伝授されたって誰もシド以上の技術者にはなれないだろうと思うが、彼は作業中の工程は誰にも明かさなかった。


「それじゃあ、シドが来るまで戦闘訓練の相手をしてくれよ。ほら!はやくポッドに戻って!」


「監視者相手に訓練したって仕様がないだろ」


「そんなことはないさ。もしもってことがある」


「分かった。分かったよ。だが手加減しろよ。このポンコツが本当に鉄屑になったらシドにどやされるのは俺なんだからな」


 ダニーがコントロールポッドに戻ると私の隣の監視者の操作を再び開始する。

 いくら操縦がまだ不完全だと言っても機械だ。

 人間一人制圧するのには力があまりある。そこを人間である私が何とかしようというのだから手加減など出来ようもない。


 無茶を言う。


 しかし、私だって負けてはいない。

 人間としての私の体のポテンシャルは凄まじい物に仕上がっていると、前に私の寿命を知るためにシドが遺伝子を調べた時に分かっている。

 だから、私は外で監視者狩りに同行する人間として選ばれたのだ。

 私は人間の枠を越えているというシドの言葉に私は全信頼を預けるしかない。

 私にはシドの様に知識がない。

 ダニーの様に大人としてみんなをまとめる事も出来ない。だが、私にはみんなを守るための力が備わっているのだ。それだけは屑鉄たちに感謝しなければならない。


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