機械と私は鬼のいない世界へと向かう。13
辺りを見回すが他に機械はいない。
人間の監視は監視者に一存しているのだ。
それを振り切られる事に対し微塵も策を練っていない。
排気口の扉を開け中に入る。さらに中にある簡素な鉄の扉を開けると地下下水道に繋がる通路が掘ってある。
私たちが幾つも掘った通路の内の一つだ。
そこを通って中に入ればもう誰にも合う事は無い。
中には私たちと下水道監視の機械たちだけ。その機械たちは下水の流れや詰まりを監視することだけが役目であり、我々のことなど気にもしない。
下水の流れを塞き止めでもしない限り調査用の機械が入ってくる事などないだろう。
その調査にさえ気を付ければ私たちの庭である。
下水道を抜けた先には機械たちからも見捨てられた土地がある。
そこを私たちのフロンティアとしている。
そこでは過去の人間による化学汚染が未だに残っており、私たち以外に住む者はいない。
全く人間が住めないこともないのであるが、機械たちはそのような場所で人間を飼育する事を望んではいないようだ。
そのお陰で私たちが機械たちに見つからずに生活できるのだが、やはり健康に悪いというのは少し気になる。
シドなどは気にするほどでもないと鼻で笑うが、やはり恵まれた土地で過ごせるのであればその方が良いだろう。
何かの工場跡地に入るとそこが我が家である。
ダニーやシド、機械から逃げてきた仲間たちがそこで生活している。機械も適当な物だ。
監視する何割かは逃げ出しても誤差程度にしか捉えていないであろう。
食糧だって少しであれば盗んでこられる。そして、盗んだ家畜をここで飼育する。作物だって育てる。
私たちは立派に機械に頼らずに暮らしているのだ。
機械の監視などはいらない。
機械がなぜ私たちを飼育するようになったのかは不明だが、何れにしろ私たちに監視などいらないのである。
「ミゲル!どうだった!」
フロンティアの仲間に迎えられる。
最近の主な組織の行動は屑鉄集めである。
下水道の機械や互いにリンクした環境調査用ドローンなどを襲うのはマザーコンピュータに動物撃退用ロボを派遣されるので手を付けられないが監視者だけは別である。
シドが初めに入手した物から型は新しくなっているが作りは大体同じだ。
首の後ろにある関節の間の人工神経接続部をナイフで切り、動けなくなった所で回収する。
シドが初めて自分の監視者を手に入れた時はかなり苦労したようだが今は違う。こちらにも監視者がいる。
監視者同士の不測の事態では感情で対処しなければならない。
これが致命的に機械に不利に働く。
こちらは遠隔操作で監視者を操り相手の監視者の自由を奪う。
少しでいいのだ。少しでもこちらの監視者が意思の様な行動を、規範に捕らわれない行動を相手の監視者に対してすれば意思を持たない屑鉄でしかない監視者はフリーズする。
そこで監視者と共に行動している私が頭と胴の神経接続を切るのだ。
なぜこんなに欠陥のあるように監視者を作っているのか人間の分析だけであればマザーと接続していてもいいだろうと不思議だが、この際そんなことはどうでもいい。
ただこちらとしては楽が出来るので良い事である。
フロンティアに持ち帰った後はシドが解体や改修をしてこちらで扱える様に作り変えるのだ。
シドは機械が人間の様になろうとしていることに恐怖を抱いているが、私はあまりに実現不可能な話だとしか思えないので、シドがそこまで執着する理由が分からない。
シドは他にも過去の資料から武器として使える物を開発などしているが、そんな物がどこまで役に立つのかは使ってみなければ分からない。機械たちの社会では私たち人間も扱える様な武器など存在しない。




