機械と私は鬼のいない世界へと向かう。12 フロンティア
監視者と少女が去っていく。
どうやらばれてはいないようだ。
スタンドアローンである監視者の弱点はお互いに起こった変化を瞬時に見破る事が出来ない事だ。
お互いに情報を共有しない事が人間のような多様性を生み出すとでも考えているのかもしれないが幾ら機械が猿真似をしても生物にはなれない。
そうだ、機械は機械でしかないのだ。
過去の様に人間の支配下にあってこそその真価を発揮するのだ。
今の状況はやはりおかしい。機械が人間を支配するなどあってはならないことなのだ。
「聞こえるか、ダニー。聞こえたら何か返事をしろ」
隣の監視者に語りかける。
監視者はぎこきなく動きながらもこちらに視線を合わせてウィンクをした。
大丈夫だ。
この監視者の支配権は完全にこちらが握っている。
これで監視者と一緒に行動が出来、何にもこちらの思惑が察知されることは無い。
たとえ情報を共有した他の機械に見つかったとしても監視者に与えられた権限内の変化であるとしか認識されないだろう。
まさか、遠隔操作で人間に操られているなどとは思いもしないだろう。
この機械たちは優れているが所詮機械だ。抜けている。
人間に反抗されることなどその思考回路の片隅にも思っていない。
いや、機械だからこそその迅速な対処の邪魔になる危機感の察知などという生物じみた物が極限にまで排除されているのだ。
機械は独自に考えて行動するなどもっての他だ。
この機械たちは矛盾している。
その独自に考える機能を監視者に持たせながら主要な機械たちは全てが繋がっているのだ。
やはり機械は機械だ。
自己矛盾に苦しむ事もなくただ任務を果たすことしかできない無機物である。私たちが付け入るとしたらその隙である。
「このまま監視塔内部に入ってみるか?」
ノアの塔などと私たちは呼ばない。
あれは人間をただ監視するための塔である。
人間の解体工場などとは口が裂けても言わない。
人間を他の低知能な動物と同じように扱う呼び名は私が許せない。冗談でも言った奴は張っ倒す。
「やめ……ろ」
やっと返事が来た。
私もこんな相棒と一緒に中に入るのはやはり心細い。もう少し改良してから内部に入るのが最良か。
「ダニー。分かった。フロンティアに戻る。この屑鉄をもう少しましにしろとシドに言っておけ」
私の歩く速度より一回りこの監視者の移動は遅い。
まだ命令系の回路の解析が済んでいないので今はここまでが限界である。
シドはかなり機械に関する知識が豊富だ。
地上で監視者と生活してた時に大量のデータを頭に詰め込んだのだそうだ。
それからなんとか監視者を振り切り、終には地下深くへと逃げのびたのだとシドは言う。
今では適齢期より十年は長くは生きているらしい。
人間はやはりそんなに直ぐには機械の様に駄目にはならないのだ。
それを機械たちは簡単に適齢期だと処分し、人間を死へと誘う。
幾ら遺伝子が操作されているからといって生物は決まった時間に決まって駄目になる訳ではないのだ。
機械とは違う。
同じように適齢期を過ぎても生きている仲間はいる。
やはり機械は抜けているのだ。
入れられた情報通りの事しかできない。人間の寿命を弄る事も満足に出来ない屑鉄である。




