第4章 3
白虎は猛吹雪の中から劉・小狼に
「さあ。ここを通りたくば、わしの試練に
合格することだ!」
というと劉・小狼に再び、幻影を見せた。
白虎が見せた一つ目の幻影は生死を彷徨っている
水蓮の姿だった。
もう一つは青龍濠が正体不明の敵に襲われて、
青龍濠の民が苦しんでいる風景だった。
白虎は劉・小狼に幻影を見せた後で
「さあ。わしからの試練じゃ……好きな方を選べ!」
劉・小狼にそう叫んだ。
『どちらかを選べと言っても…… どちらかを選べば、
どちらかを失う……どうしたら、良いんだ?』
劉・小狼はどちらかを選ぶことはできなかった。
劉・小狼は直感的にどちらかを選べば、
どちらかを<確実に失うと……
「どうした?どちらも選ばなければ、
どちらとも失うことになるぞ! どうする?……」
白虎はそう言うと大きな雪の塊で攻撃を仕掛けてきた。
だが、それでも劉・小狼はどちらかを選ぶことができずに
白虎の攻撃を交わすのが精一杯だった。
そんな劉・小狼のピンチに朱雀と青龍から貰った
宝玉が輝き始め、劉・小狼を光の中へと包み込んだ。
『どうしたら、良いんだ?……』
迷いに迷った劉・小狼は
「ごめん。水蓮……」
水蓮に謝ると白虎が見せた郭喩らが苦しんでいる
幻影の方を選んだ。
「愛する者より苦しんでいる者を選んだか……
合格じゃ! さあ、先に進むが良い!」
白虎は嬉しそうに微笑むと劉・小狼に見せていた幻影を
パッと消し、劉・小狼に自分の力(吹雪)が宿る
宝玉を授けた。
「でも…… このままじゃ…… 郭喩らが……」
劉・小狼が先に進むのを躊躇っていると
何処かへ消え去っていた朱雀と青龍が白虎の元に現れた。
「彼らのことはわしらに任せて、お主は先に進むのだ!……
もう時間がないぞ! さあ、行け!」
朱雀は劉・小狼にそう言うと青龍・白虎と共に
また、その姿を何処かへと消し去った。
「すみません。四仙獣……」
劉・小狼は朱雀ら、四仙獣に感謝すると最後の四仙獣が護る
地へと先を急いだ。
白虎の所から最後の四仙獣が護る所に移動した
劉・小狼だったが幾ら、待っても最後の四仙獣・玄武の所に
辿り着かなかった。
劉・小狼が最後の四仙獣・玄武を探すのに手間取っている間に
郭喩らが護る、水霞曉に蝉曉の送り込んだ危険が迫りつつあった。
それを郭喩らはまだ誰も気付いていなかった。
ただ、一人を除いて……
「貴様ら、何者だ!」
劉・小狼の実の兄・劉閣【りゅうかく】は水霞曉に
迫ろうとしている者らの前に剣を構え、立ち塞がった。
「ううぅ……」
劉閣の前に立ち塞がった者らは低い唸り声をあげ、
劉閣に構わず、水霞曉に前進をしようとした。
「貴様ら、ここから先は通さぬ!」
劉閣は低い唸り声を上げ、向かってくる者らに
襲い掛かろうとしたが劉閣はその者らを打ち倒すことは
出来なかった。
低い唸り声を上げ、水霞曉に向かっていたのは
豪羅の民だったのだから……
だが、その者達はすでに蝉曉から魂を抜かれた屍のように
ただ、水霞曉を黙々と目指していた。
『こ、これは倒せぬ!……』
劉閣は剣を構えたまま、屍のような豪羅の民を
傷付けないように後退りするしかなかった。
「手も足も出まい!…… これがわしの最強の兵だ!
倒せるものなら倒してみよ!」
蝉曉はそう言うと屍のような豪羅の民の間から
劉閣の前に現れた。




