第2章 5
漆黒の鎧の男と覆面の男は睨み合い、対峙した。
二人の男らは何も言葉を交わさなかったが
もの凄い威圧感だけが周りにいる劉・小狼らにも感じ取れた。
だが、漆黒の鎧の男と覆面の男はまるで正反対のようだった。
それはまるで光と闇のようだった。
そんな二人の男らは決着をつけるべく、激しく激突した。
その威力は周囲を吹き飛ばすほどだった。
二人が激しくぶつかり合う度に水洸庄の都市は音を立てて
崩れ去っていった。
『このままじゃ、危ない!:
と思った劉・小狼は仲間と共に水洸庄の都市を
離れることにした。
劉・小狼は水洸庄の入り口まで来た時に
「あっ!…… す、水蓮。」
水蓮のことを思い出した。
劉・小狼は水蓮を助け出すために仲間が止めるのも
聞かずに水洸庄の都市の中へと舞い戻った。
すでに水蓮のいる屋敷は漆黒の鎧の男と覆面の男の戦いによって、
崩壊の危機が迫っていた。
劉・小狼は水蓮と水蓮の父親を見付けると
「良かった!」
水蓮らと共に屋敷から離れようとした。
だが、その時……
翼の生えたグレムリンの生き残りが劉・小狼を殺そうと
襲い掛かってきた。
咄嗟に危機を察知した水蓮の父親は劉・小狼のことを
翼の生えたグレムリンから助けたがそれと引き換えに
水蓮の父親は翼の生えたグレムリンの攻撃を
まともに受けてしまった。
「お父様!……」
死にそうな父親を見て、うろたえる水蓮に水蓮の父親は
「大丈夫から…… 行きなさい。水蓮……
彼【劉・小狼】と共に…… 私の代わりに彼の助けに
なるのですよ!」
優しく語りかけた。
「で、でも……」
水蓮は今にも泣き出しそうだった。
「行くのだ!水蓮…… 君を必要としている仲間の元へ……
小狼さん。お願いです。娘を……」
水蓮の父は劉・小狼に自分の娘の水蓮を託すと
息絶えた。
「お、お父様……」
父親に縋り付いて、泣き崩れている水蓮に
「さあ、行こう……」
劉・小狼は水蓮に優しく声をかけた。
だが、水蓮は死んだ父親の元から離れようとしなかった。
劉・小狼らがもたついているのを翼の生えたグレムリンは
水蓮に襲い掛かろうとした。
「あ、危ない!」
劉・小狼は咄嗟に水蓮に覆い被さり、
翼の生えたグレムリンから水蓮を護ったがその結果、
劉・小狼は生命の危機を脅かすほどの大きな怪我を
負ってしまった。
劉・小狼は水蓮に覆い被さりながらも懸命に
「だ、大丈夫だった?……」
優しく微笑んだ。
「いやぁ!……」
そんな劉・小狼を見た水蓮は激しく取り乱した。
そんな劉・小狼に翼の生えたグレムリンは
トドメを刺そうと劉・小狼らに向かって、
再び襲い掛かった。
「大丈夫だから。 私が護るから……」
劉・小狼は水蓮にそう言うと身を翻し、水蓮を護るべく、
手を広げ、水蓮の前に立ち塞がった。
翼の生えたグレムリンがまさに劉・小狼に
襲い掛かろうとしたその時……
翼の生えたグレムリンは断末魔を上げ、息絶えた。
翼の生えたグレムリンの背中には一本の矢が
突き刺さっていた。
寸前のところで劉・小狼らを救ったのは趙燕だった。




