第2章 2
武器を受け取った劉・小狼は行く場所がなかった。
凍炎の砦は先手を打った杜闑が送り込んだ者らによって、
乗っ取られたために劉・小狼らは凍炎の砦から
出て行くしかなかった。
行く所がなかった劉・小狼は一先ず、翔樺邨の街の
護りにつくことにしたが街の警備などは関遼などが
ほとんど、行うから劉・小狼のすることはなかった。
毎日のように当てもなく、彷徨ううちに劉・小狼は
凍り付いた”魔の森”の前にいた。
その”魔の森”の前で大きな溜息と共に劉・小狼が
暗い顔をしていると突然、腰に携えていた光の結晶で
作られた剣が光り始めた。
その直後、劉・小狼の前に光り輝く、孔游と柳白が現れ、
「何を暗い顔をしておるのだ?」
暗い顔をしている劉・小狼に優しく、話しかけてきた。
『こ、これは一体・・・・』
劉・小狼が目の前に起こっていることを把握できず、
混乱をしていると
「何をくよくよしておるのだ!……
これで終わった訳じゃないのだぞ! 必ず、杜闑は
再び、お主らの命を狙ってくる!」
「そうだ! 立ち止まっている暇はないぞ!……
新たなる杜闑との戦いのためにこの世界に散らばっている
お前を助け、支えてくる者を一刻も早く、探し出し、
杜闑との戦いに備えるのだ! これは私らからの
最後の餞別だ!」
柳白はそう言うと劉・小狼の片手に白い隼が描かれた
小楯を携えさせた。
「こ、これは……」
劉・小狼がその小楯を一瞬見て、再び顔を上げると
そこにはすでに光り輝く、孔游と柳白の姿はなかった。
新たな力を得た劉・小狼は関遼らと共に杜闑を倒すための
仲間を探す旅に出ることにした。
旅立ちの日
水蓮達も翔華邨の街から去る日だった。
劉・小狼は何故か、水蓮と別れるのが辛かったが
「これを預かっておいてくれ!
きっと、君の元に取りに来るから……」
水蓮に母・桜花の形見の紫粒石を渡した。
それから劉・小狼は水蓮達と別れると関遼らと共に当てのない
旅に出発した。
杜闑は遠見の鏡でそんな劉・小狼の様子を見ながら、
怒りを露にしているとそんな杜闑の部屋に黒い霧が表れたかと思うと
その黒い霧が渦巻き始め、黒い霧の向こうから
「おやおや。我らの仲間を失っておいて、まだ光の者らを
野放しにしておくおつもりですか?……杜闑殿。」
怪しげな男らの声が聴こえてきた。
その怪しげな男らの声に苛立った杜闑は
「わ、わかっておるわ! ここは我が任された地だ!
黙っておれ!」
と声を荒げた。
「そうですか!…… ですが、我らの頭【深き闇】は
酷く、お怒りですよ! 頭【深き闇】は貴方だけには
任せておれぬと言い、”暗き牙”を使うように
言っておりました……」
杜闑は怪しげな男らから”暗き牙”のことを聴いた途端、
顔色を青ざめさせた。
杜闑が”暗き牙”のことに怯えている頃……
劉・小狼らは知らずに燦漸群の近くで野宿をしていた。
そんな劉・小狼らを闇夜の中から狙う鋭い眼差しがあった。
その劉・小狼らを狙うものらは闇夜の中を音を立てずに
ヒタヒタと忍び寄っていた。
劉・小狼らが周囲の異変に気が付いた時には劉・小狼らの
周りは餓えた野犬の群れに取り囲まれていた。
劉・小狼らは慌てて、餓えて襲い掛かる野犬を倒しながら、
餓えた野犬の群れから逃げ出した。
しかし、餓えた野犬の群れは必要以上に劉・小狼らを
追い駆けてきた。
ついに劉・小狼らはかつて、劉・小狼の父が護っていた
居城・燦漸群にやってきた。
そして、餓えた野犬の群れがまさに劉・小狼らに
襲い掛かろうとしたその時……
ワオォー……
狼の遠吠えと共に劉・小狼らの前に銀色した一匹の狼が現れた。




